第6話 新天地、ダンディライオン
【ビクトリア】には、一般的に言われるボス敵というものが存在する。
一つ、【FILED BOSS】。
さまざまなフィールドを常に徘徊しているボスのことを言う。
二つ、【STORY BOSS】。
メインストーリーを進める上で敵対するボスのことを言う。
三つ、【DUNGEON BOSS】。
ランダム生成される【ダンジョン】の奥に生息するボスのことを言う。
最後に、【WORLD BOSS】。
【ビクトリア】の世界観の一端を担う、超巨大なボスのことを言う。
1. 最果て-情報出力プラント-データベース部
───多分だけど…大変なことになっちまった…。
非常用電源と思わしき電灯がこの部屋を照らす。
───ワールドボスってなんだ。
俺はメニューを開いてヘルプの項目からワールドボスの情報を探した。
───なるほど、おっきなボスみたいだな?あんまりわからんけど。
メニューを閉じて、周囲を見渡す。
この部屋から出れる扉は、一つしかなかった。
2.最果て-情報出力プラント-職員移動用回廊
昔見たSF映画のように、合金か何かでできた無機質な扉が自動で開閉する。
天井からこちらを照らす薄い電灯が、唯一の頼りだ。
カツン、カツン。
反響する足跡。
エコーは長く、長く響いた。
3.最果て-情報出力プラント-スリープルーム
回廊を抜け、扉に招かれて部屋に入る。
───これは…。
部屋というには、少し広すぎるのかもしれない。
縦も横も高さも、1kmはあるのかと思うくらいだ。
そして、またしても映画のような景色を見ることになる。
───冷凍睡眠装置…か?
視界を埋め尽くす程の量の、大きなカプセルが、ずらりと並んでいた。
どれにも人が1人ずつ入っている。
───あれは…。
この空間の中央に、何か操作できる端末がついた巨大な柱がある。
俺は、柱に向けて足を進めた。
《 条件を満たしたので、イベントを開始します。 》
…イベント…?
4.最果て-情報出力プラント-スリープルーム-中央
[警告、あなたは正規ユーザーではありません。あなたには操作権限がありません。]
柱に近づけば、柱はそう警告する。
[繰り返し警告します。あなたは正規ユーザーではありません。あなたには操作権限がありません。以上です。]
…何か、気になった。
俺は柱に向けて、更に近づく。
警告はそれきり鳴り止んだ。
…柱に取り付けられていた操作端末を手に取る。
[正規ユーザーではありませんので、機能が制限されています。]
タブレット端末、と言えばわかるだろうか。
大きな液晶画面の中に、機能らしきものが表示されていた。
───まんまスマホじゃねーか。
マップ、職員呼び出し…この二つの機能しかないのか。
マップを見てみることにする。
…どうやら、この施設の名はダンディライオンというらしい。
今、俺がいるのはダンディライオンの最下層───根の部分だという。
さて、どうしたものかな…。