チャプター11「それぞれの夜」
日は沈み街が暗闇に包まれた頃、裕也たちは帰路についていた。事務所、帰路、そして…
彼、彼女たちはそれぞれの夜を過ごしていた。
ーー夜桜事務所地下1F:訓練場ーー。
「…何の用だ。」
一人黙々と訓練場で剣を振る赤坂の元へ福原が現れる。
「何の用って歓迎会に来ないと夜ご飯無いよって言ってたのに来なかったから、わざわざ持ってきてあげたのよ。ほら。」
そう言って福原はベンチに座り。横にご飯を置いていく。
「それならいらないって言っただろうが。」
「そんなの知らないわよ。」
「ちっ、聞こえてたくせに。」
わざとらしく手を広げ首を振り、わからないと表現する福原へ赤坂は舌打ちを返しながらも、ベンチへと腰掛ける。
「けど、持ってきたご飯は食べるのね。」
「うるせえ、残すのは申し訳ないってだけだ…」
そう言って赤坂は手を合わせご飯を食べ始める。
「いただきます。」
「どうぞ。」
ご飯を食べ始めた赤坂の様子を見て福原は話し始める。
「どうするの?」
「ムグムグ…っ、どうするのって何がだ。」
「大和くんの指導係について。」
「…」
返事の合間合間に食べていた赤坂の体が一瞬硬直する。
「知るかよ、夜桜さんたちがが勝手に言ってるだけで俺はやる気ねぇよ。」
「でも、いいの?戻されてしまうかも…」
「いいんだよ、俺たちはあくまで手助けに来てるんだ。子守の為に来てるんじゃない。戻されるっていうなら喜んで戻るさ。」
「赤坂くん…」
赤坂の答えを聞いて福原は悲しそうな顔をする。
「それより、福原も俺が担当になるの知ってたのか?」
赤坂は食べていた手を止め、福原を睨みつけながら質問する。
「知らない知らない知らなかったわよ、見回りのことも知らなかったんだから。」
「そうか…やっぱりあの3人で決めたのか。ちっ、余計なことしやがって。」
(私が莉穂に言った部分もあるけど黙ってよっと。怖いし。)
怒りを露わにする赤坂から福原は気まずそうに目線をそらす。
その後赤坂は黙々と食べていき、
「ごちそうさま。」
と手を合わせる。
「うん、じゃ皿とか直してくるね。」
そうして福原は食べ終わった皿を片付け始める。
「…俺も手伝うよ。」
「あっ、ありがとう。」
「おう。あんな美味しいものもらったんだ片付けぐらいは手伝わないとな…」
「そっか。ありがとう。」
そうして片付け終わった2人は洗うためにキッチンへと向かうのであった。
ーー富田森市:帰り道ーー
「すごい一日だったな。」
「あぁ、本当にいろいろあったな。」
裕也と多田はそう言いながら今日知ったことをいろいろ思い出していた。
「とうとう明日からだな…」
「…あぁ、一人でも多くの人を助けられるように頑張ろうな。」
「そうだな。こんな誰も幸せにならないこと絶対に止めないと。」
裕也の言葉を聞いて多田も頷く。
(それに…月上も苦しそうに思えた…あいつももしかしたら心の何処かで…)
そうして裕也は月上対峙した時の事を思い出す。一瞬悲しそうな表情をしていたことも…
「そういや」
「ん?」
月上のことを思い出していると、多田が話し始める。
「裕也は面識あるって話てたけど俺はそのアリ…ア?って子のこと知らないからさ。どんな子か教えてほしいんだけどいいか?。」
「あぁ、いいよ。っても僕も知っていることは少ないけどね。」
そうして、裕也は2ヶ月前那由多さんのお見舞いの後、アリアと初めて出会った時の事、河内短野市でのゲート災害で対峙した事を話した。
「そうだったのか。」
「あぁ、実際時間で言えば数十分しか一緒にいなかった。だけど…」
そして裕也は初めてアリアと会った時を思い浮かべる。
「どうしても、僕にはこんな事件を望んで起こしてるとは思えないんだ…裏でどう思ってたかは知らないけど。」
そして2人の間に数秒の沈黙が広がる。
「なら…」
「さっさとアリアを止めて本心を聞き出さないとな。」
「…あぁ、そうだな。」
そう言って裕也と多田は笑顔を向けあった後、歩き続ける。
「あっ、そういえば。」
「ん?」
「いつの間にかしれっと僕の呼び方大和から裕也に変えたよな。」
「ん?あぁ、なんかさ弟の前で大和って呼ぶのも間際らしくて変えたんだけどいつの間にかしっくり来たみたいで。」
「はは、なるほどね。」
多田の返事を聞いて裕也が納得すると再び沈黙が広がる。
「え?それだけか?」
微妙な反応をしながら多田はそう話す。
「ん?あぁ、そうだけど?」
「ん…そっか…」
裕也の返事を聞き多田は少し残念そうな顔をする。
「まぁ…これからもよろしくな春樹。」
「っ!あぁ!!」
そうして多田は嬉しそうに裕也に肩を回して夜の道を進む。
ーー富田森市大和家ーー
夜も更けみんなが寝静まった後、大和仁美は家の屋根の上で月を眺めていた。
「よっ、仁美。」
「ユウト…遅かったわね。」
そんな仁美の元へ夜桜ユウトが現れる。
「はは、まぁ少し探しものをしててね。」
「そっか、大変ね。」
そんな会話をしながらユウトは隣に座る。
「今日裕也が正式に一員なったぞ。」
「そう…」
仁美の悲しそうな表情を見て、ユウトが話を続ける。
「本当に良かったのか?」
「えぇ、あの子が選んだ道だからね。私達の思いで止めれないわ。」
「そっか…」
そして2人は満月を見上げる。
「それにしても、こうしてまた仁美と話すことになるとは思わなかったよ。」
「私もよ、あの別れの時、もう一生関わることはないと思ってたから。」
「そうだな。」
そうしてユウトは沈んだ顔で裕也と翔太の手を引き、友香を背負いながら離れていく仁美を思い出す。
「あのさ…」
「帰らないわよ。」
「…そうか。」
「ごめんなさいね。」
「…いいさ。そう言うだろうと思っていた…」
そう笑みを浮かべながら言った後、ユウトは歯を噛みしめる。
「ユウト…改めてあの子をよろしくね。」
「あぁ…わかっているよ。」
そう話した後、ユウトと仁美は一言も話さず、再び満月を見上げ、静かな時間を過ごす。
いろんなの夜を過ごす人々。彼、彼女たちはそれぞれの思いを胸に秘め次の朝を迎えていく。
ここまで見ていただきありがとうございます。良ければ次回も見て行ってください!




