少女の決断
頭の中がグルグルと渦巻く。
授業の始まりを知らせるチャイムがなっても気分は晴れず、楓は屋上で1人、膝を抱えていた。
「――――やっぱりここやったか」
不意に隣から声がして、楓がビクッと顔を上げる。
呆れたような、けれどどこか心配しているような顔の昶が、隣に立っていた。
「な、んで…」
「1年の頃、真が告白された時もここで1人で泣いとったやろお前」
真からお前の様子がおかしいって聞いて、真っ先にここやと思ったから。
「……すまんかった」
目を伏せ、昶が続ける。
「騙すつもりも、傷付けるつもりもなかった。
ただ、俺やって言う前にお前が唯一素直になれるのは真なんやって気付いたら、もう違うとは言われへんかった」
それは、あの日の話。
「適当にその場限りで言った訳やない。
あの時言った事は全部俺の本心や。
それだけは、信じてくれ」
そんな事、分かっている。
分かっているからこそ、割り切れない。
「…何でそこまで、」
「…水森の事が好きやから」
伏せられていた目が、楓を見つめた。
「なかった事にしてくれって言ったくせに、またこんな事言ってすまん。
けど、だからこそお前が傷付いたり、泣いたりすんのを見たくない。
…好きや、水森」
「……ちょっとだけ、考えさせて」
そう言うだけで、精一杯だった。
「…おう、お前の気が済むまでそうしてくれ。
どんな結果になっても、それがお前の出した答えなら俺はちゃんと受け止めるから」
例えいつもの2人に戻りたいという願いであっても。
その日の夜、自室で1人楓は昶のいう「答え」を考え込んでいた。
誰にでも優しくずっと好きだった真。
いつも言い争ってばかりだが居心地は悪くなかった昶。
目を閉じて思い浮かぶのは、
「…………」
小さな暗闇の中で、楓は大きな決断をした。




