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ヒーローの正体



「楓、次理科室に移動だって」

「あ、うん、分かった」

「最近元気ないね。

何かあった?」

「…何もないよ。

ちょっと文化祭の疲れが残っちゃって」



明らかな嘘に友人たちはそれ以上何も聞かず、「そっかー」と笑った。

理科室内にはまだ前の授業を受けていた生徒が数人残っていたので、邪魔にならない端の席に着く。



「あれ、水森さん?」

「草田君!!

ここで授業だったの?」

「うん。

水森さんのところは次?

小テストあるかもしれないから気を付けてね」

「え、小テスト?」

「さっきの授業で抜き打ちであったんだ。

割と簡単だったけど教科書くらいは読んでおいた方が良いかもね」

「ありがとう草田君!!

出来るとこまでやってみるよ!!」

「頑張ってね」



思わぬ情報を貰い、笑顔で真に手を振る。

机の下のスペースにしまっておいた教科書を取り出そうとして、ふと何かが手に当たった。



「ノート?

誰か忘れてったのかな」

「楓、名前とか書いてないの?」



ノートを開きながらどこかで見た文字だと首を傾げる。

つい最近見たような、



『僕も昶も水森さんの味方だから』



「あ!!」



文化祭の日、真に悩みを打ち明けた時に真が去り際に残したメモ。

そこに書かれたものと同じ筆跡だった。



「これ草田君のだ…」

「アンタついに文字だけで草田のか分かるようになったよね…」

「はっきり言って黒に近いグレーよそれ」

「ストーカーじゃないから!!」



とんでもない誤解だ!!



「――――水森さんどうしたの?

小テストの結果、悪かったとか?」



授業が終わってすぐに隣の教室に向かい、真を呼び出した楓は違う違うと首を振った。



「これ、草田君のじゃない?

私が使ってた机の中に残ってたんだけど」

「ん?

ああ、それは僕のじゃなくて昶のだよ」



告げられた言葉に、固まった。



『僕はその人たちの事も、今水森さんが何を考えているのかも分からない』



『だけど、その告白してきた子は今の水森さんみたいな悲しい顔をさせるために想いを伝えた訳じゃないと思うよ』



『僕も昶も水森さんの味方だから』



とても勇気を貰えた。

自分には、心強い味方がいるのだと。

だからこそ、また真の事が好きになった。

優しい彼の事を、もっと知りたいと思った。



「これが、火狩の…?」

「そうだけど、どうかした?」



このノートの持ち主が、あのメモを書いたのが昶なら、辻褄は合う。



「草田君、文化祭の時にネコの着ぐるみ着てた?」

「ネコ?

僕は確かウサギだったよ。

ネコは昶じゃないかな。

見回りだけじゃつまらないから序でに宣伝するって」



「ただの犬猿に戻ろうや」



昶は、知ってしまったのだ。

楓が何に悩んでいるのかを。

楓が、どれほど苦しんでいるのかを。

そして気付いてしまった。

自分の告白が原因だという事に。



「…そんな…」

「…水森さん?何が…」

「ごめん草田君…!!」

「水森さん!!」



ずっと、ずっと好きだった。

何度も救われた。

真の事が好きだった、はずなのに。



「ッ…!!」



一瞬で自分の心が分からなくなった。




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