表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/14

初仕事

翌朝、島村に言われた時間よりもかなり早めに出社したが、二人とも既に会社に来ており、コーヒーを飲んでいた。



「おはようございます。今日からよろしくお願いします。」


俺は深々と頭を下げながら挨拶をした。



「こちらこそ」


「よろしく頼むよ」


二人は笑顔で返事した。


そして、女性から、


「私は受付を担当してる近藤です。よろしくお願いします。」


と言われ、この時初めてまだ彼女の名前を聞いていなかったことに気付いた。



「早速だけど仕事だ」


島村がそう言うと、近藤が俺に書類を手渡した。


「その書類に書いてあるものを今日中に調達してくれ。詳しい話は近藤君に聞くといい」


島村はそう言うと、奥の部屋に入っていった。



書類には



有名餃子店の餃子五人前


先月発売された人気テレビゲームの本体一台



今日封切りされた映画のパンフレット一冊



・・・となっていた。



他にもいくつか書かれていたが、似たようなものだった。



俺は訳が分からず、近藤に尋ねた。


「あの、なんでこんなものを調達しなければならないんですか」


年下とはいえ、一応先輩であることから敬語で話す。


近藤は笑顔で


「客先からの注文です。何故必要かは分かりません。調達でき次第私が先方に送ります。必要な経費はこれを使って下さい。」


そう言いながら、現金の入った封筒を俺に差し出した。



俺はまだ納得出来なかったものの、仕事だからと割りきり、書類を見ながら順番に書かれた品物を集めることにした。



テレビゲームだけは、なかなか手に入れるのに苦労したが、その他は簡単に調達できた。


テレビゲームを会社に持ち帰ったのは、夕方だった。



「お疲れ。」


島村から声をかけられ、俺は近藤が出してくれたコーヒーを飲みながら、島村に質問した。


「一体どんな人が注文してるんですか?出前や通信販売で買う方が早いように思いますが。」


島村はやはり笑顔のまま


「そのうち教えるよ。いきなり言うと混乱すると思うから。」


そう言うと帰る準備を始めた。


「先に帰ってていいよ」


島村にそう言われて、俺は先に会社を出た。



とりあえず一日目の仕事が終わった。


しかし、家に帰った後も気になって、ずっと考えていた。


 はっきり言ってこの会社は普通じゃない。


 一体どんな客が何の為にあんなものを注文するのか。


 あんなものを調達するだけの仕事で、なんで月七十万という給料が払えるのか。


考えれば考えるほど分からないことだらけで、余計に混乱した。


しかし、島村がそのうち教えると言っていたその言葉を信じて、明日からも調達に走り回るしかないと思い、早めに寝ることにした。










その頃、近藤はテレビモニターに映し出された島村と会話をしていた。



「明日話そうかと思うんだが、どうだろう?」


「いずれ話さないといけないのですから仕方ないですね。でも理解出来るでしょうか。もう少し待ってからのほうがよくないですか?」


「彼と話して思ったけど、彼は頭の回転は早いよ。最初は混乱すると思うけど、すぐに理解出来ると思うよ。」


「分かりました。では明日」


画面から島村の映像が消え、近藤はテーブルのボタンを押した。


テレビモニターが天井へ収納された。


「でも、私のことはまだ言えない。」


近藤は独り言のように呟いた。


近藤は、立ち上がると、壁にかけられた立体写真に語りかけた。


「必ず成功させるから」








俺は夢を見ていた。

何故か分からないが、島村と近藤の三人で、見たこともない街を歩いていた。

街の中を走る車にはタイヤがなく、宙に浮かんで走っている。


そして、ハンドルもなかった。


三人で歩いた先にある建物に入り、エレベーターに乗った。


エレベーターの中に、階数のボタンはなく、代わりに数字のキーがあり、近藤が数字を入力すると、エレベーターのドアが一旦閉まり、すぐに開いた。


三人がエレベーターを出ると、ドア以外は窓もない小さな部屋だった。


そのドアを島村が開くと、何故か未来商事の事務所だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ