その4
「・・・あなた達が助けてくれたんですよね?本当にありがとうございました!」
わたし達が魔獣に襲われていた女性達の元に到着すると、そこには今にも倒れそうなぐらいめちゃくちゃ青白い顔をした五人の女性達がいて、わたしの見る限りでは彼女達には魔力が無いようだった。
「うん、魔獣は討伐したからもう大丈夫だよ。ねぇ、魔力が無いのにこんな所に来たら危ない所か死んじゃうよ?」
「は?そいつら魔族だろ?魔力無いとかあり得ないんじゃね?」
「だよな〜。どう見てもその透けるような青白さは魔族だもんな〜。って言うか、同じ匂いもするし〜」
そんなアークとカイルの言葉に彼女達はめちゃくちゃしょんぼり顔となった。
「・・・あたし達だって半年も掛けてこんな所に来たくて来たんじゃないわ」
「・・・あたし達は魔族だけど魔力が無い劣等種の役立たずなのよ」
「・・・だから、魔力無しでも出来る植物の採集をするしか生きて行くすべがないの」
「・・・だけど、普通の植物ばかりじゃ生活も大変なんだよね」
「・・・だから、今回はこれまで貯めたお金で買った隠密の魔法具を使って超高額の魔植物を採集しようと思ったんだけど、魔法具を使ってたら採集出来ないから外したら魔獣に襲われたから・・・大人しく帰ります」
わたしはどこの国でも役立たずと呼ばれる存在はいるんだな〜と思いながら、魔力の無い彼女達が手伝ってくれたら全採集も早く終わるよな〜とも考えたのだ。
「ねぇ、それじゃあ、わたし達の採集のお手伝いしてくれない?魔獣が襲って来たらこの人達が討伐するから安全だし、勿論、ちゃんと報酬も渡すよ?ね?副隊長?」
「・・・・・・・・・・・・まあ、働きに応じた報酬は渡そう」
副隊長は少し眉間にシワを寄せてからそう言って頷いた。
「えっ!?いいんですか!?ありがとうございます!それなら報酬は現物支給でお願い出来ないでしょうか!?」
「現物支給だとかなり少ない量しか渡せないな。魔植物は超高額買い取り素材だからな」
「はいっ!大丈夫です!少しでも混ぜて織ればめっちゃ良い生地になるんで!」
「良い生地?」
わたしが疑問に思って彼女達に聞いた所、彼女達は普段は綿や麻等の天然植物を自分達で採集し生地を織り、その生地から洋服やカバン等を作っているのだそうだ。
「一応五人で田舎の小さな町でお店を経営してるんですけど、去年近くに工場で大量生産された安い洋服を売るお店が出来たんです。だから、あたし達の洋服との差別化を図る為にも魔植物が必要なんです!」
彼女達が言うには、田舎の小さな町だけど裕福な貴族や平民の避暑地として人気らしく、今迄は普通の植物で作ったものだけでも何とか生活出来たらしいけど、近くに出来た激安洋服屋も同じ様な品質で、どうやらデザインも彼女達を後追いで模倣している感じらしく、値段的には全く太刀打ち出来ない状況に思い切って魔植物の採集をする旅に出たのだそうだ。
「なるほどね〜。それで、これを使ったらめっちゃ良い生地ができるの?」
わたしは近くのビロードの様な見た目の大きな葉っぱを一枚ブチッと千切ると、その感触が正しくビロードで尚且つめちゃくちゃ爽やかな良い香りがしたのだ。
「はい!その天鵞絨草はユニセックスな香りのする香草でもあるんです!そして、それを使った商品は工場生産でもめっちゃ高額商品なんですけど絶対に売れてるから、現物支給でお願いします!」
こうして、何故かホクホク顔の副隊長の仕切りによる天鵞絨草の全採集は本日の日暮れに開始される事となったのだ。
ブチッ!
「・・・」
わたしはまた一つまあまあ太さのある天鵞絨草を根本辺りから毟り取ると頭陀袋の中に入れた。
本当なら隊長達の持つ予備の剣を使いたいとこなのだけど、隊長達の剣は魔法剣と言う魔力を帯びた剣なので天鵞絨草に触れる事が出来ないから絶対使えないし、それなら包丁はと思ったら魔族の彼女達によると、そもそも生えてる段階で金属が触れると香りが全部飛ぶと言う謎の現象のせいでの手摘みオンリーだから超高額素材でもあるらしいのだ。
「・・・ごめんなさい、リーナさん、あたし達本当に役立たずで・・・」
わたしはしょんぼり顔で側で頭陀袋を持って皆んなで付いてくれてる魔族の彼女達の、その青白い顔と華奢な手足にしょうがないよな〜と心の中で苦笑しながら小さく首を横に振った。
何故、彼女達が天鵞絨草を毟らず頭陀袋を持つ係なのかと言うと、そもそも魔族と言うのは魔力がアホみたいにあるけど体力がほぼほぼない種族なので、彼女達も勿論全く体力が無いのだ。
だから、天鵞絨草を毟ろうとしたけど全く毟れなかったので、一応見えるので何かお手伝いしたいと頭陀袋を持つ係になってくれたのだ。
「お〜い、リーナ!まだ終わらへんのか〜?俺様小腹減ったんやけどな〜!」
わたしが頭陀袋からシリアルバーを取り出して、テーブルセットで寛いでいる白龍に向かってぶん投げたのはしょうがないと思う。
「うおっ!?おいこら、リーナ!お前が投げたら武器になるって何度言うたら分かるね、んがっ!?」
わたしは続けて素早く投げた二個目が白龍の口の中に入り後ろにひっくり返って転けたのを見届けると、また天鵞絨草を毟り始めた。
こうして、天鵞絨草の群生地の窪地を結局わたし一人で全採集する事となったのだ。




