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その2

 「・・・」


 わたしはもう何度目かも分からない魔獣による顔面アタックを無の境地で受け入れると、顔から引っ剥がして地面に叩き付けた。  

 

 そして、今度は後頭部に衝撃を感じたので手で確認したらまたもや同じ魔獣だったので、引っ剥がすと地面に叩き付けた。


 「・・・こいつらマジでめっちゃ臭いよね〜」


 わたしはこの魔獣が張り付いて対象を麻痺させる体液を出すのだと白龍からは聞いていたけど、こんなに激臭なのは聞いてなかった。


 「リーナ!ボケっとしとらんとサクサク討伐せんかいな!いつまで経っても終わらんぞ!?ちゅーか、お前めっちゃ汚ななっとるがな!?人型やとサイズ的に小汚さ倍増しとるから、ちんちくりんのタヌキになっといた方がマシなんちゃうか!?」


 「・・・」


 わたしは次々と襲って来る体長三十センチほどのGっぽい魔獣の大型版を、風で斬ると魔石に傷が付き価値が下がると副隊長に言われて吹っ飛ばす事にしたらしい白龍に向かって、また顔面アタックをして来た魔獣を引っ剥がして投げつけた。


 「ぬおっ!?何すんねんっ!お前が投げたら何でも武器になるやろがっ!自覚せんかいっ!」


 わたしは寸前で躱した白龍に心の中で舌打ちしながら辺りを見渡した。


 「・・・終わる気がしないよね〜」


 今現在わたし達がいるのはアルドーラ大帝国の帝都から一番近い大連峰へと続く深い森に入って割りと直ぐの場所で、上級魔獣らしいいつもの不快なGっぽいやつの大型版と大乱闘状態となっているのだ。


 わたしとしては魔法でサクッと全討伐して欲しかったのだけど、そうするとこのメンバーの魔法では魔石が残らないか残っても傷付き価値が大幅に下がるので、副隊長からは魔石の価値の保持の為に物理攻撃での全討伐を要請された。


 そして、この魔獣の魔石はそれほど高額でもないらしいけどわたし達一行はほぼほぼ無一文なので、お金の為にアホみたいに湧いて出て来る魔獣をせっせと討伐しているのだ。


 ちなみに隊長達も剣で戦うと魔石に傷がつくから、いつものハエ叩きに似た武器で死んだ魚の目をしながら戦っていた。


 そして、何故ほぼほぼ無一文なのかと言うと、わたしとハムちゃん達の貯金は今回の旅に出るにあたり殆どが食材の購入資金に消えていたし、白龍達聖獣ははなからお金なんて持って無い。


 そして、隊長はわたしの釣竿を弁償して無一文らしいし、副隊長には絶対貯金はあるはずだけど笑顔で無いと言い切られ、ニック達に至っては宵越しの銭は持たない主義なのだそうだ。


 こうして、わたしは世界を旅する商人となる為の資金調達も兼ねて、深い森の中で延々と終わりの見えない魔獣討伐を頑張るしかないのだ。

 

 「・・・・・・・・・・・・やっと終わったね〜」


 わたしは確かお昼前に始まったはずなのにすっかり真っ暗になった深い森の中で、最後の魔石を嬉々として拾った副隊長を見ながらその場にへたり込んだ。


 (((((((・・・リーナ様。あたし達お腹が減り過ぎて、もう動けません・・・)))))))


 わたしは側で同じくへたり込んでるハムちゃん達に頷いて同意すると、取り敢えず今日の野営をする事にした。


 「ねぇ、白龍達で野営を設置出来るような場所を作ってくれないかな?」


 「しゃあないな〜」


 「任せるでござる!」


 「いいよ!」


 「もう夜中近くだし早く寝ないと、お肌に悪いものね〜」


 そう言うと、まあまあ元気そうな四匹の聖獣の白龍は辺り一面の木を雑に吹っ飛ばし、白虎が大量の水を撒き白亀が均して、白雀が火で乾かすと完璧に美しく整備された大きな空き地が出来たので、わたしは今では男神様の趣味でフルリフォームされた設備が異世界仕様の五つ星ホテルと化した野営セットを設置した。


 そして、疲労困憊のわたし達は、それぞれの部屋へと入ったのだ。


 わたしは部屋に入ると直ぐにタヌキ姿に戻り、頭陀袋を下ろす事なく魔獣の体液で汚れたワンピースを着たままお風呂に直行して、湯船に泡風呂を作ると入って全てを綺麗に洗った。


 「・・・あ〜、さっぱりした〜」


 グオォォォォォキュルルルルルルルッ!


 わたしはフローラルの香りを纏うモフモフタヌキに戻るとお腹が空いてる事を思い出し携帯食料を齧ろうかと思ったけど、もう少しちゃんとしたものが食べたくなったのでキッチンへと向かった。


 そして、簡単に済まそうと思い、今ではロゼルナイト辺境伯領の特産品となっているスルメを刻み、山葵をすり下ろし、ストックしてある白ご飯に乗せて、お茶漬けにした。


 「・・・うんま〜」


 わたしがキッチンの椅子に座りながら五臓六腑に染み渡るイカの旨味と山葵の爽やかな辛味に、思わず声が出たのはしょうがないと思う。


 (((((((・・・リーナ様・・・)))))))


 そして、暫くするとキッチンへ神使の本能的にやって来たらしいハムちゃん達とお腹いっぱいお茶漬けを食べてからベッドに入ったのだ。


 グオォォォォォキュルルルルルルルッ!


 「・・・お腹空いた」


 わたしはいつもより少し遅い時間に目が覚め、朝の身支度を整えてからキッチンへ向かった。


 グオォォォォォキュルルルルルルルッ!


 わたしは夜食のお茶漬けはめちゃくちゃ美味しかったけど、やっぱりお肉を食べてないせいでこんなにお腹が空くのだろうと考え、朝ご飯はガッツリお肉料理にする事にした。


 こうして、朝からたまねぎたっぷりの闇堕ちしたタヌキの聖獣の肉丼と、闇堕ちしたウサギの聖獣のお肉で作った千切りキャベツたっぷりのデミカツ丼をお腹いっぱい食べたわたし達は、野営を撤収してさらに深い森に分け入ったのだ。

 

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