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私のまわりの人たちがミステリーに向いてなさすぎてダメだった  作者: 山野エル
異世界帰還後篇

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犯人になりたくなくてプロバビリティの殺人を仕掛けてる奴がただのいい人になってた

 私ピタゴラスイッチ好きで子供の頃はよく観てたんですよ。大人になってからピタゴラスイッチ的に人を死に至らしめるのをプロバビリティの殺人だって知りました。パッとやっちゃう方が手っ取り早くないですか?


 バレたくないのは分かりますけど、そう思うあまりめちゃくちゃ無駄なことしてることあるんで、気をつけた方がいいですよ……。



〜 〜 〜



 異世界から帰って来て、こっちの生活が色々整ってきたんで久々に飲み屋に行ったんですよ。飲み屋の雰囲気好きなんです。聞くつもりのない近くの人の会話とか聞いてると世界は狭いし広いなと感じるわけです。


 一人で立ち飲み屋に入って厚揚げをつついてると急に声をかけられました。


「お姉さんは殺したい人いますか?」


 なんか私ってそういう系の人に目つけられやすいんですかね? またかよとか思って振り返ると幸薄そうな女の人が立ってるんです。幽霊かと思って顔のところに手を伸ばしたら、思いっきり鼻の穴に指突っ込んでました。


「あ、ごめんなさい。ぶつかると思ってなくて……」


 そしたら女の人がフッといま私が指を突っ込んだ鼻で笑います。


「いいんです、慣れっこだから。うちの人もね、そうやってわたしを蔑ろにしてきたんです」


 話聞いてほしそうな導入です。まためんどくさい奴に声かけられたわけです。日本酒が急に苦くなりましたよ。


「大丈夫ですよ」


 ってテキトーに返したら、幸薄女が自分のグラスを私のテーブルに持ってくるんです。居座る気だよこの女。私まだ一杯目なんですけど。


「お姉さんは殺したい人いますか?」


 また聞いてきました。質問の意図を聞くために質問したら「質問に質問で返さないでください」とかいうタイプの人だよきっと。


「基本どうでもいいと思ってるんで別にいないですね」


「お姉さんは幸せですね。悩みもなさそう」


 私が能天気みたいに言ってきましたこの女。いやまあそれはそうなんですけど。苦笑いで誤魔化してると幸薄女が意味深に微笑んで私を覗き込んできます。


「わたしはどうだと思います? 殺したい人がいると思います?」


「いなきゃこんなこと聞いてこないと思いますけどね」


 いや私だって普段はわりと優しめで人と接しますけど、さっさと切り上げて別の店に行きたかったんでクールめにいかしてもらいましたよ。そしたら幸薄女がため息つくんです。


「殺したいのに殺せないって苦しいものですよ」


「ああ、そうですか。じゃあ諦めたらいいと思いますけどね」


「でもその目的がわたしを生かしてくれてるんだと感じるんです」


「めんどく──……大変そうですね」


「わたしが殺したいのは誰だと思いますか?」


 いちいちクイズ形式にしてくるめんどくさいタイプです。


「さっき『うちの人』って言ってたから旦那さんじゃないですか」


「正解! あいつと同じ空間にいることが耐えられない……!」


 いきなりドスの利いた声でグラスを飲み干すんですこの女。でも正解かどうかは判定してくれるんだ。


「あいつは自分のことしか考えてないんです。歯磨き粉もトイレットペーパーもハンドソープも自分が使い終えてるのに新しいやつに替えないんです。それに家事をやらないし、ごめんもありがとうも言わないんです。いつもブスッとして何も喋らないし」


「家族に直してほしいことあるあるみたいですね」


「でもね、あいつを殺して捕まるのは癪なんです。そんな時、ピタゴラスイッチを見て思いついたんです。あいつが死ぬように仕掛けを施せばいいんだって……」


「ピタゴラスイッチが放送禁止になるからやめて。私あの番組好きなんですよ」


「台風の日に倒れた木が天井を突き破ってきたっていうニュースを見て、あいつの部屋のそばの庭の一角に木を植えました。……丈夫な木が育ちました」


「ただ庭を充実させただけじゃん。っていうか何年かかってるんだよ」


 イラついてツッコミ入れてたら幸薄女が訴えかけるように身を乗り出してくるんです。酒くさ……。


「そうなんですよ。他にも棘のある花とか毒のある花とかを植えたりしてたんです。そうしたらあいつガーデニングに凝り始めて夫婦の会話が増えたんです」


「なにこれ、のろけ?」


「埒が明かないから戦略を変えたんです」


「諦めろよ」


「そんなわけにはいきません。料理を勉強して適切な塩分や油をちょっとだけ増やして長期で高血圧にするプランを始めたんです。あまり急に味を濃くすると疑われる可能性ありますからね」


「慎重すぎるでしょ。っていうか勉強して料理上手になってんじゃん」


「そうなんです。しかもあろうことかあいつの好みの味に変わったみたいで『おいしかったよ』とか言ってくるんです」


「夫婦関係良くなってんじゃん」


「その後もベッドの足の方をちょっとだけ高くしといたんです。寝てる時に脳に血液行けば脳の血管にダメージいきそうじゃないですか。ある日、あいつにそれが見つかったんです。でも、迷走神経反射で困ってたらしくて、脳に血が行きやすくなって症状出なくなったって言われました。ありがとうって抱きしめられました」


「なにずっと良いことしてんだよ。そいつが死ぬ方向に持っていけよ」


 って言ってたら幸薄女が、


「それからは夜の営みも……まあ……」


 とか言って顔赤らめてんです。私は何をずっと聞かされてんの?


「聞きたかないんだよ、そんなこと。っていうかさすがにもう殺意ないでしょ」


「でも、これまで殺人ポイント貯まってるわけですから無駄にしたくないわけです」


「ポイントカードみたいに言うなよ」


 って呆れてたら幸薄女が言うんですよ。


「お姉さん、うちに来ませんか?」


 私のこと殺す気じゃんこいつ。


「行くかバカ! 他探せ! 久々の一人飲みなんだよこっちは!」


 って怒鳴ったら退散して行きました。あの女、今日もどこかで家に連れてく奴探してると思うんですけど、みなさんの中で遭遇した人がいたらすいません。

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