表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私のまわりの人たちがミステリーに向いてなさすぎてダメだった  作者: 山野エル
異世界帰還後篇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

103/105

まだ何も起こってないのに探偵が妄想の事件の推理し始めた

 探偵のみなさんは今日も事件に遭遇して頭悩ませてたりするんですかね。お疲れ様です。


 事件が起こってからしか探偵は活躍できないとかジレンマ抱えてると思うんですけど、事件が起こってないのに色々やられても困るんでおとなしくしていてほしいもんです……。



〜 〜 〜



 やっと実家に帰って郵便物受け取りついでに家族水入らずの時間を過ごせたんです。


 で、帰りはちょっとゆっくりしようと思って、前々から乗りたいと思ってた寝台列車にしたんですよ。いや、なんか嫌な予感したんですよね。


 食堂車のカウンターのところでなんか揉めてる人がいるんです。


「定食に茶碗蒸しついてると思うじゃないですか。僕は茶碗蒸し食べたかったんですよ、プルプルしてるから」


 店員さんがめちゃくちゃ困った顔してます。


「茶碗蒸しは別メニューとなっておりまして、定食にはついておりませんので……」


「茶碗蒸しの口になってたのにどうしてくれるんですか? 定食に茶碗蒸しついてないってちゃんと書いておいてくれないと」


「こちらに明記されております……」


「……こんなちっちゃく書かれてても見えないんですよ」


 茶碗蒸しくらい別で頼めよ、っていうか、プルプルしてるから食べたいってどんな理由だよとか思ってたら、揉めてた男がこっちに気づいてやれやれみたいな顔するんです。


「誰も彼も茶碗蒸しを軽視してるんです」


 重視してるなら別で頼めよとは言いませんでした。店員さんが奥に引っ込んで何か対応を考えてるみたいです。


「そんなに茶碗蒸し好きなんですか」


「ええ、三度の飯よりも」


 茶碗蒸しも飯だろとか思って軽食のサンドウィッチでも頼もうとしてると、男がまた話しかけてくるんです。すぐそばのドアを指さしてるんですよ。


「あのドアの向こうはトイレなんですよ」


「ああ、そうですか」


「いま僕たちはこのカウンターで店員と揉めてるじゃないですか。つまり、あのドアの向こうに行くには僕たちのそばを通らないといけないわけです」


「揉めてたのはあなただけですよね」


「もしトイレの中で死体が発見されれば、それは衆人環視の密室殺人ということになります」


「それはよかったですね」


 そしたら男が私を睨みつけてくるんです。なにこいつ。黙って茶碗蒸し注文してろよ。っていうか店員さん早く戻ってきて。


「よくありませんよ。僕もあなたも犯人のトリックのダシに使われたということなんですから。……許せない」


 まだ何も起こってないんですよ。それなのにこのバカはいもしない殺人犯に憤ってんです。言ってみれば義憤じゃなくて虚憤(きょふん)……ゾウのウンチみたい。


 早く注文済ませたくてカウンターのベル鳴らしてるのに誰も来てくれないんです。なにこれ悪夢?


「容疑者はこの食堂車内にいるんです」


 そう言って車両の中を眺めてるんです。正義ですみたいな顔してるのがマジで信じられなすぎてもうサンドウィッチ要らなくなってきました。部屋に帰ろうとしたら、こいつが私の手を掴んでくるんです。危うくボコボコにするところでした。


「分かりました。僕たちで犯人を探しましょう」


「まだ何も言ってないんですけど」


「申し遅れました、僕は探偵の江野持(えのもち)です。この不可能殺人を解決するため、あなたを助手に認定します」


「話聞けよ」



※ ※ ※



「僕が記憶している限り、あのドアの向こうに行った人はいません。でも、被害者がしていた腕時計が壊れていました。その時刻、僕はここにいたんです」


「腕時計の話どこから出てきたんだよ」


 勝手に推理進めてるんですよ、江野持探偵。っていうか、ホントに探偵なのか怪しいもんですけど。


「あなたの言う通り、それはあり得ない。なぜなら僕がその時間に誰もトイレに行っていないのを確認しているのですからね」


「だから何も言ってないんだって。というかそれなら、あんたが犯人でしょ」


 皮肉を放ったつもりだったんですけど、江野持は含み笑いで拍手してるんです。マジでなんなのこいつ。


「僕すらも疑うというその姿勢、見上げたものです。さすが僕の助手ですね」


 なんか助手としてテストに合格したみたいな雰囲気出されてイラッとしました。


「いますぐその汚名を晴らしたいです」


「犯人は腕時計を故意に壊して犯行時刻を誤魔化そうとしたんです」


「うわー、お粗末なトリックですね」


 もちろん、江野持の発想力をいじったんですけど、全然聞いてないんです。


「いや、これは巧妙な犯罪ですよ。犯人は僕たちを利用して完全犯罪を成し遂げようとしているんですからね」


「いい加減セットにされるの腹立つんでやめてもらえます?」


 とか嫌味言ってたら江野持がハッとした顔して、そばのテーブルから紙ナプキン取って来てペンで猛烈な速さで何か書き込んでるんです。最近ガリレオのドラマでも観たのかよ?


「なるほど……そういうことだったのか……」


 なんか解決したみたいです。こっちはモヤモヤが晴れなくてキレそうです。


「よかったですね。じゃあ、私はこれで……」


「犯人は彼だ!」


 いきなり食堂車で新聞読んでたおじさんに人差し指を突きつけるんです。おじさん、びっくりして固まっちゃってますよ。私、思わず江野持の胸倉掴んじゃいました。


「知り合いだと思われたくないからバカなことやめろ」


 でもおじさんの方見て話し始めるんです、江野持。メンタル強すぎ。


「あなたはこの食堂車で唯一僕よりも早くここに来ていた……。あらかじめ死体を運んで衆人環視の密室が出来上がるのを待っていたんでしょう」


 おじさんはポカンとしてたんですけど、巻き込まれたくないのか新聞を畳んで出て行こうとします。


「茶碗蒸し食えなかったからって頭おかしくなったのか!」


 そんな捨て台詞を吐いておじさんはトイレへのドアを開けて行っちゃいました。さすがの江野持も頭抱えてます。バカなことをしたと思っ──


「まさか、犯人は別にいる……?」


 バカなままでした。もうサンドウィッチいいから江野持振り切って逃げようと思ってたら、トイレの方から悲鳴が聞こえて来ました。おじさんが血相変えて戻って来ます。


「ととと、トイレで人が死んでる……!」


 江野持を見ると、めちゃくちゃ慌てふためいてるんです。顔面蒼白なんです。


「だだだだだだ、誰か〜、警察呼んで〜……!」


 裏声で助け求めてるんです。お前が解決しろよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ