連続殺人鬼が名乗ってきたけど名前がラジオネームすぎて耐えられなかった
自分でつけた名前を使ってる殺人鬼の方もたくさんいると思うんですけど、センス丸出しになるんでやめた方がいいですよ。ああ、この人まだ中二病が抜けてないんだこの歳でとかそれかっこいいって思ってるんだとかめちゃくちゃいじられてますからね。
ただまあ、カッコいいと思ってつけてるならまだマシなんですけど、この前の殺人鬼はなんかそこがズレまくっててこっちが恥ずかしくなりましたよ……。
〜 〜 〜
異世界に行ってた間に家とか会社とか放置してたんで色々とやらなきゃいけないことがあったんですよ。休止してたガス再開させたり、転送不要の郵便が実家に届くように住所変更してたやつを戻したりとかめちゃくちゃ面倒なんです。だから異世界とか行かない方がいいですマジで。
実家に郵便物取りに行こうとか思ってたら、急に警察が来たんです。
「鈴木さん、今までどこにいたんですか! 探しましたよ!」
とか言ってなんかちょっとキレ気味なんですこの刑事。イラっとしたんですけど、私も大人なんで、穏やかに聞きました。
「何かあったんですか?」
「何かあったんですかじゃないですよ! いま世間をザワつかせてる連続殺人鬼から警察に連絡が来たんです! 挑戦状ですよ、これは!」
殺人鬼だったらザワつかせてるってレベルじゃないだろとか思いましたけど黙っときました。
「なんで私のところに刑事さんが?」
「数々の難事件を解決に導いた鈴木さんに丸投げしようとしてたんですよ!」
「自分で解決しろや」
※ ※ ※
郵便物取りに行きたかったんですけど、なんか言いくるめられて警察署に連れて行かれました。
会議室にはパソコンがあって、そのまわりに刑事たちが群がってます。外出て解決の糸口探せやと思いましたけど我慢しました。
「そろそろ犯人から連絡が来る時間です」
すぐにパソコンに通知が出て、なんかのソフトが立ち上がりました。音声通話できるソフトみたいです。
『ご機嫌よう、刑事諸君。前回のヒントは役に立たなかったようだな。君たちの無能っぷりには笑わされたよ。犠牲者が出ても諸君は指を咥えるばかり……滑稽なことだ。しかしながら──……』
ダラダラ喋るタイプの犯人でした。機械で声変えてます。さっさと終わらせて早く帰りたかったんで、続きを話そうとしてるところに割り込んでやりました。
「あの、話の流れ分かんないんでアレなんですけど、とりあえず自首してもらえます?」
『なんなんだ、お前は?』
「そっちこそ誰なんですか?」
『クックック……、捜査が及ばないからと泣き落としか? この私がそんなことで──』
「そうじゃなくて実家に郵便物取りに行きたいんで早く終わらせたいんですよ」
『郵便……えっ? 何かいまとてつもなく日常を聞かされた気がしたが? もうちょっと緊張感を持った方がいいんじゃないか? この〝ジャック・ザ・立派〟からのヒントが得られなくなってしまうぞ?』
「ジャック・ザ・立派? それがあなたの名前ですか?」
『いかにも。クックック……いまさら怖じ気づいたのか? それなら──』
「そうじゃなくて、ラジオネームじゃないんだからちゃんとした名前にした方がいいですよ」
なんか黙ってるんです、ジャック・ザ・立派。
『……別にスベってるわけじゃないよな? もう2ヶ月くらいこの名前でやってんだけど』
「スベってるというか、ふざけてんのかなーって思われてんじゃないですかね。だって元はジャック・ザ・リッパーなわけじゃないですか。ラジオネームすぎますって」
なんかめちゃくちゃため息ついてるんです、ジャック・ザ・立派。
『アンドレイ・地下通路ってのも考えたんですけど、チカチーロって一般的にはそんなに知名度ないよなーとか思ってジャック・ザ・立派にしたんですよ』
めちゃくちゃ気弱な声になってるんですけど、大丈夫かよ、元アンドレイ・地下通路のジャック・ザ・立派? 全然立派じゃないよね。
「なんでちょっと有名人をもじろうとしてんのよ? 発想がラジオネームすぎるでしょ。なんかもっと死とか殺みたいな字使って名前作りなよ」
『いまさら名前変えると日和ってんなーとか思われません?』
「仕切り直しみたいな感じで別の連続殺人でも始めればいいでしょうが」
『あ、それは始めちゃっていい感じなんですか』
刑事たちが首振ってますが無視しときました。
「で、名前考えた?」
『〝死んでミーナ〟はどうですかね?』
「なんでちょっとポップにしたいんだよ。そんなのダメ。次!」
『じゃあ、殺って字を使って〝殺スケ〟はいかがでしょう? あのキテレツ大百科の……』
「コロ助の顔がチラついちゃうでしょうが。っていうかなんでちょっとおもしろを入れようとするんだよ」
『やっぱり名前って重要じゃないですか』
こだわり強すぎてうるせーなこいつ。
「なんかもっとオリジナリティあるやつないの? もじりとかだと創造性ないんだって思われるよ、連続殺人鬼のくせに」
『それはまずいですね……。こっちもセンス出していかないとナメられますもんね』
こいつは何と戦ってんだよ? とか思ってたら、なんか創作欲に火がついたみたいです、ジャック・ザ・立派──いや、いまは殺スケか。
『これなんかどうです? 〝ぼちぼち墓地〟。そろそろお前も墓に入るよみたいな怖さもありますよ』
「怖くないでしょ、無駄にリズム感良いし。なんか棺桶に片足突っ込んでる奴みたい」
『じゃあ、〝老人ホームラン〟はどうです?』
「なにが『じゃあ』なんだよ。いよいよラジオネームじゃん。なんかあるでしょうが、強そうな漢字とか。中学の時の男子がなんか技の名前とか作ってたけど、ああいう感じよ」
『なんかカッコつけすぎかなって……』
皆さんも思ったと思うんですけど、ラジオにネタ送ってる奴っぽかったんで思わず聞いちゃいましたよ。
「普段はどんなラジオネーム使ってんの?」
『4年くらい前からメール送り始めたんですけど、〝トランプマンのトークライブ〟って名前で……』
ラジオ局に問い合わせたら犯人特定できました。各番組で採用されてめちゃくちゃノベルティもらってたらしいです。良いラジオネームつけてんじゃん。




