殺人が起こる未来が見えたって人の話をネタバレを敵視してるおじさんが邪魔してくる
異世界から帰ってきた鈴木さんによるエクストラステージが幕を開ける……。
殺人が起こるっていう予言する人っているじゃないですか。犯人まで教えてくれればいいのにっていつも思うの私だけですかね?
急に意外な人が犯人とか言ってめちゃくちゃ説明するのめんどくさそうですけどね。
〜 〜 〜
なんか私が異世界行ってる間に世の中だいぶ変わったみたいですけど、まあ、そんなことは置いておいて、久々に自宅に帰ったら玄関の前で誰か待ってたんですよ。帰るのやめようとか思ってたら気づかれたんで逃げるのやめましたけど。
「ああ、鈴木さん! お願いです、助けてください!」
困り果てて眉尻が地面につきそうなおじさんが泣きついてきます。っていうか、どこで私の家の住所知ったんだよこいつ。
「いやあの私、出張から帰ってきたばっかなんで……」
出張っていうか、異世界行ってただけなんですけどね。そんなことクソ真面目に言ったら頭おかしいと思われるじゃないですか。
「お金ならいくらでも払います! お金さえあればいいんですよね?!」
必死に懇願してくるんです、このおじさん。っていうか、マンションなんであまり大きな声出さないでほしいんですけど。……それより私どんな人間だと思われてんのよ?
「星読みの巫女が予言したんです! 私が殺されると!」
じゃあ逃げ回ってればいいじゃんって思いましたけど、なんかおじさんが必死すぎて言いそびれちゃいました。というか、星読みとか言ってたけど、ここ異世界じゃないよね?
※ ※ ※
押し切られて自然豊かなところにある屋敷にやって来ました。もう夕方なんですけど。せめてシャワー浴びたいんだよなとか思いながら大広間に集められました。関係者らしい人たちもいます。その中にいかにも巫女ですみたいな格好してる女もいました。
「みなさん、よくぞお集まりいただきましたね。それでは、ご主人の予言の詳細についてお話ししましょう」
勝手に話進めてくれててよかったんですけとね。とか思ってたら、なんかふてぶてしいおじさんが歩み出て来ます。
「そんなことよりなんなんだね、この女は? 部外者がいていいところじゃないぞ」
なんか私を除け者にしようとしてくるんです。いや、帰れるなら帰りたいんだよ今すぐにでも。死亡予告されたおじさんが私を庇うように割って入って来ました。
「どうしても彼女に同席してもらいたかったんだ。彼女は……鈴木さんなんだ!」
大広間が静まり返ります。みんなピンと来てないじゃん。めちゃくちゃ恥ずかしいじゃん。ふてぶてしいおじさんがため息混じりに言います。
「そもそも、私はこんなことは反対なんだ。何が予言だ、ふざけやがって」
死亡予告されたおじさんにそっと聞いてみました。
「あのおじさん誰なんですか?」
「近所に住んでる推理作家の矢田根さんです」
「めちゃくちゃ部外者じゃないですか」
異世界に行ってた身からすると予言ってありふれてて、ああまたですかって感じなんですよね。巫女が不敵に笑ってます。
「私はただ星から未来を読み取っただけ。そしてそれが人を助ける力になるのなら、喜んでお話ししたい。ただそれだけなのです」
矢田根さんが吠えます。
「ネタバレするな!」
ずっこけちゃいましたよね。予言をネタバレとしてる人なんかいないんだよ。っていうか予言自体は信じてるんかい。死亡予告されたおじさんもさすがに苦笑いしてます。
「私殺されることになってるんで、そんな悠長なこと言ってられないんですよ……」
矢田根さんが顔を真っ赤にしてめちゃ怒ってます。なんで部外者のくせに一人で熱くなってんのよこのおじさんは。
「いるんだよな、すぐにネタバレ言うやつ!
ノストラダムスの大予言が流行った時、私は全財産使って豪遊したんだ。そのせいで一文なしになった。予言は実現せず、全てを失った……まるで私がバカみたいじゃないか。それ以来、予言もネタバレも嫌うようになったんだ、私は!」
「まるでバカじゃなくてストレートにバカでしょ……」
思わず言っちゃいましたよ。そしたら矢田根さんがますますヒートアップするんです。
「それ以降、私は天気予報も見なくなった。ニュースの途中に流れてくるたびにテレビを消し、スマホのアプリも消したんだ!」
「天気予報ってネタバレってことじゃないから」
「そのせいでこの前も洗濯物が雨でびしょ濡れになったんだぞ」
「不便になってんじゃん」
シャワー浴びたい気持ちが蘇ってきてめちゃくちゃ帰りたくなってきました。それなのに矢田根さんが血走った目で訴えてくるんですよ。巫女もなんか若干引いてるの。元はと言えばお前のせいなんですけど。
「雑誌とかの100年後の未来都市の予想図なんかも最悪なんだ。そのせいで雑誌を引き裂いたこともある」
「どうせその頃には死んでるからいいでしょ……」
「ドリカムの未来予想図Ⅱもイントロが流れてくるたびに耳を塞ぐ毎日なんだ……」
「ネタバレとかの曲じゃないから。めっちゃいい曲だから。っていうか、そんな毎日流れてこねーよ」
「そのせいで未来予想図Ⅱのイントロクイズだけは強くなったんだ……」
「いつイントロクイズする機会があるんだよ」
死亡予告されたおじさんもなぜか巫女に予告の内容を聞きづらくなってるんです。なにこの時間? 早く帰ってシャワー浴びたいんだけど。
不穏な空気の中、巫女が神妙な面持ちで口を開きます。なんか嫌な予感したんですよね。
「分かりました……。では、ネタバレにならないよう、ご主人の予言をクイズにしてみましょう」
「え? クイズ?」
何を言われたのか分かってるのに何を言われたのか分からなくて混乱してると、なんか早押しのテーブルが参加者の人数分運ばれてきました。
「こんなこともあろうかと用意しておいてよかったです」
とか巫女が言ってるんです。用意よすぎてめちゃくちゃ予言者じゃん。で、なぜか私も解答者になりました。早く帰りたいんですけど。巫女が往年のクイズ番組のMCみたいに赤いジャケット着てマイク片手に司会進行し始めました。小慣れすぎてて怖いんですけど。
「さあ、それではご主人はいつどこでどうやって、そして誰に殺されてしまうのでしょうか? クイズの前に、ご主人、意気込みをどうぞ!」
そりゃ絶対正解したいでしょ。
「必ず正解して優勝したいと思います」
なんか急に棒読みで意気込み発表してんです。優勝狙う意味も分からんし。巫女が矢田根さんにマイクを向けてます。早くクイズ始めろよ。
「矢田根さんはネタバレがお嫌いとのことですが、クイズに正解する自信はございますか?」
「よくクイズするので自信はあります」
ネタバレ嫌なんじゃなかったのかよ? 自分で解き明かそうとしてんじゃないよ。っていうか、なんでこのおっさんはクイズやる機会に恵まれてるんだよ。巫女が私の前に来ました。
「鈴木さんはどうですか? 初参加ですけれども」
「初参加じゃない人もいるんですかね? まあ、早く帰りたいんでさっさと終わらせたいです」
※ ※ ※
「第一問。まずはこちらをお聞きください」
ピアノのメロディが聞こえてきます。聞き覚えある……と思ってたら矢田根さんが早押しボタンを押しました。巫女が声を上げます。
「おおっと、問題文はまだ読まれてませんが、矢田根さんが押しました。自信満々の表情です。それでは解答をどうぞ!」
「ドリカムの未来予想図Ⅱ!」
なんでホントに未来予想図Ⅱ流れるんだよ。矢田根さんのチャンス問題じゃん。……なんで私悔しがってんだろ?
ブブーと音が鳴ります。
「残念! 問題文もありますので、続きをお聞きください」
未来予想図Ⅱの曲が流れて、巫女が問題を読み始めます。
「今お聞きいただいたのは、DREAMS COME TRUEの『未来予想図Ⅱ』ですが、この曲の歌詞に出てくる数字を全て足すといくつになるでしょうか?」
問題がマニアックすぎるでしょうが。分かるわけないとか思ってたら矢田根さんがまた押します。
「さあ、また矢田根さんです。答えをどうぞ!」
「19!」
巫女が険しい表情で矢田根さんを見つめます。要らないんだよクイズミリオネア方式の焦らしなんか。急に笑顔になった巫女が叫びます。
「正解!」
矢田根さんがめっちゃガッツポーズしてます。未来予想図Ⅱの問題に強すぎでしょこのおっさん。
「さあご覧ください!」
いつの間にか巨大モニターが用意されていて、予言の言葉が隠されて表示されてます。無駄に大掛かりです。隠されていた一部が明らかになりました。
「19ということで、日付が開きました! 19日です!」
観客席からおおーと声が上がります。いつ観覧の客入れてたんだよ。
「ご主人、日付が開きましたがどうですか?」
「そうですね、この調子で他の部分も開けていきたいと思います」
もっと焦れよ。今月だとしたら4日後なんだよ? しかも開けたのあんたじゃないでしょ。
※ ※ ※
「赤!」
最後の問題に死亡予告されたおじさんが答えます。正解の音が流れておじさんガッツポーズしてます。喜んでる場合じゃないでしょ。
モニターには「今月19日の午後9時半頃、赤い服を着た女にナイフで刺され、出血多量で死亡する」って書いてあるんです。どういう気持ちでガッツポーズしたんだよ。よっしゃーじゃないんだよ。
巫女がニコニコしておじさんにインタビューしてます。
「これで予言が明らかになりましたね」
「そうですね、はっきり分かってよかったです」
よくないでしょとか思ってたら、巫女が険しい顔するんです。
「……すみません、今、予言をお伝えしたことで未来が変わってしまったようです。というわけで、新しい予言でセカンドステージ、スタートです!」
ネタバレ回避したとか言って矢田根さんが喜んでます。クイズしたいだけだろ。私はめんどくさくなってたんで帰りました。




