神儀当日と初めて(ではない)お外
今日は神儀の日当日
「アリアほらこれ見て!」
そう言って真っ白なワンピースと赤色のフード付きポンチョを私の前にじゃじゃーんといった感じに見せつけた
「これは?」
「今日は神儀だから、おしゃれをしないとね。」
「神儀?」
私は何も知らない少女を演じながら、質問した
「神儀はね...えっとーーー」
ミカリアは、私に神儀の間違った情報を教えるために、「う〜〜ん」と考え込んだ後、口を開いた
「今生の安定を願って神様に、お祈りする儀式よ。幸せを願いましょう!って事よ」
「そうなんだ!」
ごめんなさい!ミカリア
ボロが出そうなので、「そうなんだ」以外は感想が出なかった
「それじゃあ、アリアおめかししましょうね」
「うん!分かった」
私は、今着ている服を脱いで、ミカリアが用意してくれた白いワンピースを着せられた
いつも着ている服とは、明らかに違っていた
肌触りは、シルクに近い感情で、風通しも凄くいい
「お母さん、この服で外に出ると風引いちゃいそう」
「そんな事ないわよ」
ミカリアは、得意げな表情を作り、少しだけ部屋の窓を開けた
暖炉のお陰で暖かった部屋が、外から入ってくる冷たい風により少し室温が下がった気がした
冬が過ぎて、暖かい時期ではあるがまだ少しだけ寒いのだ
私は、冷たい風に身構えて...(あれっ?)と思った
「お母さん全然寒くないよ」
「その服は、特注品だからね」
特注品って事は、これって物凄く高いんじゃ...
私は、視線を下げてワンピースをまじまじと見る
青空の鮮やかな着色に、袖には、何かの模様かと思ったがよく見るとこの世界の文字だろう
突然扉を開けてランドルが、入ってきた
「アリア似合ってるじゃないか!俺の娘はかわいいなーー」
「ランドル今日は仕事でしょ早く行きなさい」
ランドルは、襟首を掴まれてそのまま部屋から追い出されてしまった
「そんな〜!もう少しだけ!もうすこしたけ見せてくれ!!!」
ランドルの願いは虚しく扉をパタンと閉められた
「それではアリアおめかしをしましょう」
何故かお父さんとお母さんのテンションが少し高い気がする
気がする。ではなく高いのだ
ここで、私が授かればランドルとミカリアは、やっと休めるのだ
おめかしと言っても、髪を結うだけの簡単なものだ
ミカリアはゆっくりと割れ物でも触るような手付きで私の髪を解いていく
「お母さん...私幸せに...なれるかな」
私の言葉一度手が止まったが、何事もなかったかのように再開した
「勿論幸せになるわ。だって私達の娘よ」
「...うん」
「ほらできたわよ」
水鏡を見ると、私の髪に艶ができていた。
最初は青黒く荒れていた髪も何をしたのか、今では夜闇のような髪色に変わっていた
「なにこれすごい!」
「あら気に入った?」
「うん!」
「よかったわ。それじゃあ私も準備をするから少し待ってて」
ミカリア、桶の水を捨てて、自分の部屋に入り身嗜みを整えだした
私は、その姿を目で追った
自分は、大丈夫と鼓舞を打っていたが、結局駄目で不安感だけは掻き消えることは無かった
「アリア準備できたわよ。それじゃあ行きましょう」
ミカリアは簡易的に作られたバックを持って立っていた。
どうやら、私の靴も新しいのを買ったらしく、汚れ一つのない綺麗な靴が並べてあった
私はミカリアに「ありがとうお母さん!」と言って靴に指を掛けて一足一足履いていく
ミカリアは左手で私の手を引いて右手で玄関扉を開けた
扉を開けたあと直ぐに、手提げバッグから青白い宝石を取り出して握りしめた
すると、周囲の物音や喧騒が急に聞こえなくなった
だけどミカリアの声だけが耳に直接聞こえてくる感じ
あの冬のときに使った魔石だ
ミカリアは安心させるような表情で私の頭をゆっくりと撫でた
それから「フードを被っていなさい、後今日は神儀の日だから騒がしくしては駄目よ。」そう言って私の手を軽く引いた
私はミカリアに手を引っ張られコツコツと3段ある石の階段を降りていく
私が最後に外に出たのは確か...あの男に突き飛ばされた時だった
嫌な記憶だ
心中で悪態を付きながらな、ミカリアをチラッと見た
ミカリアの表情は、強張り、必死に隠し通そうとする姿が見えた
それから俯きながら歩いた
ふと周囲が気になったので、フードを少し親指と人差し指で握り辺りをチラと見る
私を見てヒソヒソと話すもの大人達
指を指して嘲笑する子供達
口を大きく開いて何か言っている男がいるけど、ミカリアが持っている魔術具で声は聞こえない
中には心配そうな、憐憫な瞳で私を見ている人もいた
誰も彼も遠巻きから、私達を見るが近づこうとはしない
これがランドルやミカリアが見てきた光景なのだと思うと心臓がはち切れんばかりの痛みを感じた
しばらく歩いていると、ミカリアが突然立ち止まり緊張した面持ちで前を見ていた
私も気になり前をチラッと見る
ミカリアと同い年ぐらいの女性が二人、ニヤニヤとしながらこっちを見ていた
口をパクパクとしていたが何を言っているのか分からないけど...何を言っているのか分かる
ミカリアは、それを素通りして私が開ける事のできなかった扉前に着いた
ミカリアは、扉前に立って綺麗な宝石に触れた
すると扉に掘られた模様が淡く光を放ちゆっくりと両扉が開いて私は俯きながら足を踏み入れた
少し顔を上げると人、人、人
大勢の人が居る
日本でいうところの商店街のようなものかもしれない?
音は相変わらず聞こえないが、賑やかそうでとても楽しそうに見えた
真っ昼間から酒を飲んでいる人
赤子を抱えて肉を買っている人
腰に剣を挿して木造の建物に入る人
あの門を潜ってからミカリアは、ふぅと溜息を付いていつもの表情に戻った
私も張り詰めていた緊張の糸をゆっくりと解いてミカリアを見上げながら思案する
そういえば、神儀って神様に祈りを捧げて、ミカリアやランドルが持っているような力を授けてくれる儀式のようなものだっけ?
祈り...転生前でいうアマテラスオオミカミとかイザナギみたいな神に祈りを捧げる感じでいいのかな?
転生前は神様何て信じていなかったけど、町のみんなは魔力を授かっている
これから、向かうところが神殿みたいな所だと思うと、何だか不思議な気分だ。
ミカリアに手を引かれ15分ぐらいかな
歩いていると
「着いたわよ。」
と声がしたので見上げて私は、困惑した
「お母さんここなの?」
「そうよ。」
ここって町の外に出る門じゃない?
物語などでよくある神殿や教会みたいな所を想像していたのだが、まさかの草原に私は戸惑ってしまう
「ほらあそこには兵隊さんが待ってるでしょ。後はあの兵隊さんに教えてもらえばわかるわよ。残念ながらここからは、私は一緒に行けないから」
ああ...そういうこと
「..うん」
「それじゃあお母さんは用事があるから、終わったらこれを光らせてちょうだい。」
ミカリアは、バックから取り出した小指程の宝石を手に握らせて、使い方を教えてくれる
「この宝石を握りしめれば光るからね」
(魔力が授かる前提で話を進められても...)と口に出かけて直ぐに飲み込んだ
そうだ。ミカリアは、魔力がある前提で、授かる前提で話を進めているんだった
「うん、行ってきます」
「いってらっしゃい」
私あの門番さんに話しかけるの?心細いな〜
4歳の私視点では、巨人に見える
でもこれで授かれば家族は私を見放してくれない
そう思うと少しだけ勇気が出る気がした
がんばるぞ!私は大丈夫と自分自身を励ました
「あのっ!」
男は、のそのそと身体を動かして私を見る
おっお...大きい
遠くから見たらでかいなーと思え程だったが、いざ近づけば大きすぎて常に見上げなければならない
「この人身長何メートル?」
あっ心の中声が出てしまった
「んっ?どうした?」
「いえっすみません。その神儀は何処に行けばいいですか?」
「神儀...ああそうか付いてこい」
草原を暫く歩くと、ちょっとした人集りが見えた
私と同じぐらいの年齢の子供が多分20人はいる
辺りをキョロキョロとしていたり、俯いたり、涙をポロポロと流していたりと、どの表情も暗く、重く、陰りのある表情だった
その周囲を白の服に黄色の糸で刺繍されている服を着た男が数人で取り囲んでいた
腰には剣が差してあり、護身用だと思う
神様から祝福を授かる雰囲気ではない
どちらかというと神様に断罪されるような空気だ
この場所に足を踏み入れないといけない、
そう思うと少し足が竦んだ
「ありがとうございます」
「ああ」
私を連れてきた兵士は、そっけない態度でもと来た道を戻っていった
「集まったなそれでは神儀を始める。」
そう言って、色とりどりの宝石を付けた男が前にでて神儀の説明をする。
多分この人がこの中で一番偉いのかな?
私がこれからする神儀は、私達何も授けられていない子供達が自ら神に祈りを捧げて祝福を授かる儀式
祝詞はこの男の言葉を復唱するだけだ
神儀の説明後、偉そうな男は「一言だけ言いたい」と言って語り始めた
「君ら子供達は、呪詛受けし子供だ。魔力がないこと事を、恥もせずに今日までのうのうと生きてきたのだろう?。祈りをせずに、生まれた事に感謝もしない。それは怠慢で救いがたい罪だ。」
それから、私達を散々非難した
「生まれた瞬間から祈りを捧げてないからだ。」とか
「これから、その罪を注ぎ祈ろう」
これを5歳になったばかりの子供に向かって、偉そうに叫ぶのだ。
大人として、というより人としてどうなのだろう?
まだ小さな赤子に神に祈れって普通に無理じゃない?
バカなんじゃないの?と心の中で悪態を付いておく
「それでは、始める」
やっとはじまったーー
辺りを見渡して、私と同じくらいの子供が沢山泣いていた
非難されたのが辛かったのだろうか、それとも自分の産まれてはいけない存在。と自信を否定された事が辛いのか
隣の子供も大泣きしている。
「泣くな!これから祈りを捧げる。私の後に復唱しろ」
子供達を泣かせたのは、あなたなのにこの人はどうしてここまで偉そうなの
私は隣で泣いている子供に声を掛ける
「大丈夫?」
「うんだっ..じょぉぶ」
ぐすんぐすんと涙を流がしているが、必死に顔を擦り拭いている
それから両手を組み両膝を付いて祈りを捧げた
地球でいうところのシスターが祈りをするポーズに似ている
皆が同じポーズをするのを確認したのか、偉そうな男は祝詞を始めた
「魔神カルドハイムは魔力をこの地に与え、女神シェスティファロールは恩恵を大気に与えました。魔力は源泉の水滴となり川の下流へと。」
その言葉を私達も復唱した
心を込めて一文字一文字祈りを捧げながら私は復唱した
「「「「魔神カルドハイムは魔力をこの地に与え、女神シェスティファロールは恩恵を大気に与えました。魔力は源泉の水滴となり川の下流へと。」」」」
祝詞が終わり「目を開けよ」と声が入る
「選別を開始する。授かっているものは肩を叩く」
私達を取り囲んでいた男の内の一人が、右上から順番に肩をトンと叩いてく
端の子供から、やった!と言うもの、ショックのあまりに言葉がでない者 皆それぞれの反応をしている
草原を歩く足音
私に近づいてくるに連れて、心臓の鼓動が少しずつ...少しずつ速くなっている気がする
「次」
私は、抑揚のない声にビクッと身体を震わせた
来た!お願い!お願い!もうこれ以上あの家族に迷惑を掛けたくない
ミカリアやランドルにあの目で見られるのは嫌!
あの顔も声も、また惨めな気分と罪悪感に押し潰されてしまう。
瞼を力強く閉じて、両手を握りしめた。
嫌な想像が脳裏を過る
魔力を授からず家に帰り、「祝福してもらえなかった」と言った後のミカリアの落胆した表情にランドルの憔悴した顔
いやだ!いやだ!
厭世的な想像は、より一層緊張を大きく強めた
バクバクなる心臓を右腕で抑えた
おねがい!おねがい!おねがい!おねがい!おねがい!
私は両手の握りしめた拳をさらに強く握る
「駄目だ」そう言って
スッと私を通りすぎた
そして私の後ろの子が肩をトンと叩かれた
後ろから「神様ありがとうございます!」そう言って必死に祈りを捧げているが声が耳に入るが、その言葉の意味までは通らなかった




