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家族"愛"たくさん貰いました  作者: 紅葉
第一章 秘密
10/17

真冬の訪問者

本格的な冬が始まった

小粒の雪が大粒に変化しだした頃には、ランドルもミカリアも外に出ることもなく、魔石に触れたり、備蓄した食料の確認をしたり、手仕事をしたりとのんびりとした時間を送っている


「お母さん今日は何をしているの?」

暖炉のある部屋でミカリアが、糸をくるくると木の棒に巻きつけていた


「糸を作ってるのよ」

「糸?」

話をしながらミカリアの手元を見てみる

ミカリアの左手元にあるのは、白色の宝石。


多分魔石だろう。


そこから白い糸のようなものがツルツルと伸びて、ミカリアの持っている木製の棒に眉のような形を形成していく

「そうよ。冬はこうやって手仕事でもしないとやることがないからね」

「へーー。わた...何か出来ることはある」

「そうね...。」

ミカリアは、苦笑しながらランドルを指さした

「ランドルを手伝ってきて何だか心配だわ」

「なっ!?ミカリア 父さん料理腕を信じてくれないのか!?」

「当たり前よ。あなた野菜のヘタを取るたびに、手を切ってたじゃない」

「そっ...それは力加減がな」

「力加減って言い訳をしないで」


ランドルとミカリアがそんな軽口を叩いていると玄関扉からコンコンとノック音がなった


こんな猛吹雪に誰だろ

なんめ呑気な事を考えながらミカリアを見ると、ミカリアの表情が険しくなっていた

ミカリアは一言「ランドル」と言ってアイコンタクトをとった

ランドルもアイコンタクトでミカリアに何か合図をした


するとミカリアは、魔石と眉状の糸を床に置いた。

そして私の手首を掴みゆっくりと引いた

「アリアこっちおいで」

私が、何も言わずこくりと頷いてミカリアについていった

左手で私を掴み右手で、寝室の扉を開けて私と一緒に寝室に入る

寝室には、暖炉が無いので寒いままだ

部屋に入りミカリアは、タンスから青白い宝石を取り出しながら口を開いた

「アリアお母さんと手を繋ぎしょうか」

「手?」

「そうよ。」

そう言って私の右手をぎゅっと握る

雪粒が、屋根や窓に落ちる音が、無くなりミカリアの声だけが耳に直接聞こえてくる感じだ


えっ?

驚嘆した顔で、ミカリアを見ると「大丈夫よ。お母さんとお話しましょうか」と言って二人で寝台に腰掛けて、毛布を被った


15分程経った

まだ、話し込んでるのかな?

今は、ミカリアが、ランドルの面白話を私に聞かせてくれている


ランドルが、調味料の塩と砂糖を間違えたとか、「冒険者になりたい」とか言って体を鍛えだして直ぐにやめたりとか


私も思わず「何やってるの」と呆れてしまった


「それからお父さんはね」

ミカリアがランドル面白話パート6に、入ろうとした瞬間コンコンとノック音がなりランドルが入ってきた


「アリア少し静かにしててね。」と言って私の手を話した

すると、雪粒が屋根や壁に当たる音や巻が燃えてチロチロとする音が耳に入りだした


私は、ビクッとなり声が出そうになったが、慌てて口元を抑えた

ミカリアは、魔石を持ちながらランドルの手を軽く握った


二人は、口をパクパクとさせながら何か会話をしている

険しい顔になったり、驚嘆した顔になったり、口に手を当てて心配する顔になったり字幕だけの映画を見てる気分だ


「アリアごめんな。ちょっと寒いかもしれんが待っでてくれ」

そう言ってミカリアを連れてリビングに向かった

私は、毛布に包まり寝台で横になる




「アリア遅くなった。ごめんな。」

「ふえっ...寝てた...」

みっともない声を上げて私は起き上がった

いつの間にか寝てたらしい


「アリア今日はお客さんが泊まるからあんまり困らせるなよ〜〜」

「お客さん?」


どうして?

私が魔力を持ってないことを、私自身に隠さないといけないんじゃないの?


私の気がかりな表情を、ランドルはどう勘違いしたのか

「大丈夫だ」と言うだけだった


ランドルに手を引かれリビングに向かった

「お父さんこの子は誰なの?」

ミカリアの隣にちょこんと座っている少年を見て「えっ?」と漏れ出てしまった

子供がいることに驚いたのではなく、子供の姿を見て驚いた

泣き腫らしたのだろう。

目元には、赤みが差している。


年齢は私と同じぐらい

薄汚れた肌に、継ぎ接ぎだらけの服のようなものを、着ている。というより羽織っているに近い感じだ


そして一番気になったのは...


「その手首の傷はなに?」

呆然としながらも漏れ出た小さな呟き。

「アリア、この子は、ロウくんだ。えっと...」

ランドルは、そこから先の言葉を詰まらせた


私の脳裏を過ぎった最初の言葉は、『親の虐待』だった


暖炉の前に座っている子供は、何も話さず無言で私を見ていた

ランドルは、料理に戻り、ミカリアは、手仕事の続きを始めた

勿論ロウくんが来た時には、ランドルがお風呂に入れて、ミカリアは緑色の魔石を取りに行っていた


その間、私はどうすればいいか分からず右往左往していた

緑色の魔石は、ちょっとした傷を治す効果を持っている


私も、指を怪我したときに使ってもらった

ランドルとロウが風呂から上がってきた

「どうだ、ロウくんうちの風呂は気持ちいいだろ」

「...」

ロウは、何も言わず俯いたままだ。

ロウには、男物の服を用意して着せていた


男物?どこからもってきたのかな?

少年が着るような服に、私は困惑した


風呂から上がってきたロウをミカリアは手招きして、膝下まで近づけた

そして、手袋越しに、握られた緑色の魔石を素手変えて、ロウの手首の傷に近づけた


すると緑色の魔石は、淡く光だしロウの手首の傷が...治らなかった

正確には、手首にある傷の一つか二つがみるみると消えていったが、それ以外はくっきりと残っている

私が「あれっ?どうして?」と言って慌てていたがランドルやミカリアは、「やっぱり」と呟いて傷に当てていた魔石を革袋に入れた


「お父さん、お母さんどうして傷が治らないの?」

「傷が古すぎたんだ」 

古すぎた?

「古いと治せないの?」

「ああ、この魔石じゃ治せないな」


ランドルが言うには、古すぎる傷、つまり傷跡は治すことができないらしい


「ロウくん?とりあえずご飯を食べよう」

「...はい」

ランドルが料理の続きを始めてミカリアは「私も手伝うわ」と言ってランドルが切ろうとした野菜を切り始めた


子供同士の方が気持ち的に楽になるだろう。というミカリアの配慮かもしれない


「ロウくん?どうして家に?しかもこんな吹雪にどうして?」

「...母さんが貰ってこいって」

「もらってこい?なにを?」

「お...ね」

「おね?」

「お金」

お金?えっ!?お金?


そういえば、前世の私が住んでいた世界でもそんな事件があったのを思い出した

子供の方が同情を煽れていいから。と母親が子供に「お金を貰ってこい」というそんな事件だ

結果的に、お金を恵んでほしいと懇願された大人が児童虐待を疑い警察に通報。

そのこの母親は、警察に逮捕され、子供は児童養護施設に預けられたそうだ


だったら私もミカリアやランドルに頼んで通報するべきだろうか?

と思ったけど、この世界の価値観や倫理観が分からない

それにこれ以上迷惑はかけられない

「そう...なんだ」

彼の話を聞いてあげることしか私にはできなかった


「おーいご飯出来たぞー」

ランドルが呼びに来てくれた

今日は、スープと堅パンだ。

カトラリーはスプーンだけが机に置かれている


「ゆっくり食べな」

ランドルは、そう言ってロウの席を用意した

ロウは、というとおずおずと椅子に腰掛けて

ランドル、ミカリア、私の順番で何度も見渡した

「お父さん食べよう」

「あ、ああそうだな。」

最初に私がスプーンでスープを啜り、次にランドルその次にミカリアがスープを口にすくって口に入れた


「おいしい!」

使ってる肉は分からないけど、鶏肉に近い出汁の味がしておいしい

「そうだろ!お父さんの得意料理だからな」

ランドルは自慢気に私を見る

ミカリアがぼそっと「味付けは、私が...」と呟いた気がしたけど聞かないほうがいいよね


ロウは、一度スプーンで一口啜り、次にパンをゆっくり齧った


食事が終わり

ロウくんは、というと何度も手伝いをせがんできたが、客人だからリビングで休んでいてというミカリアとランドルのはからいにより暖炉の前に座らされている


なんでじっと私を見るの?

ロウは、じっと私を見てきて少し気まずい

私が目を反らして、暖炉に焚べられた薪を見ていると唐突にロウが呟いた

「どうして」と一言だけ呟かれた言葉

それからは一言も口を開かず、暖炉の薪を羨ましがる表情で見ていた


「ごめんなー遅くなった」

ランドルが手を拭きながら私達の前まで近づいてくる

「そういえば、ロウくんの手首の傷はどうしたんだ?」

「あの..その..自分で」

「自分で?どうして?」

「...   分からない」

ランドルは、意味が分からないと言いたそうな顔で考え込んでいるが、私はこの行為を知っている


私もよくカッターなどで自傷していたから


リストカット。


リストカットとは、何らかの方法で、自らの手首に傷を付ける行為の事を指す


リストカットを行う理由として


1.不安や恐怖を痛みにより誤魔化すため


2.痛みにより生きている感覚を得るため


3.極度のストレスにより


4.痛みに耐性が付くため、回数は少しずつ増えていく


「お父さんこういった行為ってあまり見ないの?」

「いや、昔から自分の手首を切ったり、頭を壁にぶつけたりするやつは見るから、何でだろうな?と思ったんだがな」

この世界に自傷行為は、存在するも、何故行うのか。という理由は分かってないらしい

やっぱりどの世界でもあるんだ。


ロウは、うたたねを始めたので簡易的に作った寝台で寝かせてランドルとミカリアは家族会議を始めていた

勿論私は、参加できずに寝台いきだ


「ランドルあの子えっとロウくんはどうするの?今日は泊まってもらうとして明日は明後日は?」

「どうするのといってもな...明日には、帰ってもらう。そうでもしないといいがかりを付けられて、何を要求されるか分からんからな」

「やっぱり、そうよね。」

「今の俺達じゃ何もできないからな。」

ランドルは鎮痛な面持ちのまま窓外を見る

大粒の雪は、窓にピシピシと当たる光景を見ていると、何かを訴えているようにも見える


「アリアは、...あの子は、俺達はどうするんだろうな」

ランドルが暖炉の薪を見ながら困り顔で言った

「分からないわ。」


ランドルは部屋の片隅に置かれている薪を3つ手に取って、一つ一つ暖炉に焚べていく


火は強みを増したり、弱まったりとしている

ミカリアは、「ランドル?」

「大丈夫だよ。流石にもうしないさ」

ランドル苦笑しながらミカリアの瞳を見つめている


翌日には、ロウに備蓄した食料を少しだけ分けた

服はお古だからそのままあげることにした

「ごめんな...お金はあげれない変わりにこれをやろう」

ランドルは革袋を一つロウに手渡した

中には野菜や干し肉が入っている

「ありぃがどお」

涙を堪えながら、吐き出すように言った

吐息は白く、ポロポロと流れた涙は、白い地面にぽつりぽつりと小さな丸い跡を作っていく

「こらこら、涙なんて流して勿体ないじゃないか。また来ればいい。その時はランドルスペシャルを食わしてやる」

「そうよ。またいつでもおいで」

そう言ってミカリアロウに微笑みを向ける


私も何か掛ける言葉を探して、玄関から見える空を見上げたり、床を見たりと思案する


「またコンコンとノックしてね」

と言って私も微笑を浮かべた

私の微笑を見てかロウくんも微笑を浮かべて雪化粧の地面をじゃりじゃりと歩いていった

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