家族『愛』
えっ.......私...私...私...
「それでは、これで終了する」
その魔力を得たのは20人の内18人
私と小さな男の子だけが、魔力を授かる事はなかった...
「お父さんお母さんどうしたらいい?」「お父さんお母さんどうしたらいい?」「お父さんお母さんどうしたらいい?」
意味も無い言葉を何度も何度も呟き、口に馴染ませる
発する機会なんて本当にあるかなんて分からない
ミカリアとミカリアは期待をして私を送り出してくれた
耐えて、どれだけ辛くても私には当たらないように気持ちを押し隠していた
今度は、私が期待に答える番なのに
「生きてていのかな?」
この身体に転生して、初めて言ったかもしれない
私は、神儀が終わり、宛もなく草原を彷徨した
太陽の光に照らされた緑の葉が、何故か愛おしく思えた
「この葉になれば、私は。戻らなくていい」
私がここで死ねば、この土の肥料に変わり恵みとなって、この葉の一枚一枚に、私はなれるかな?
そしたら、いつかこの草原に、ミカリアやランドルが私の知らない子供を作って遊びに来てくれる
それを遠くから眺めて、私も笑顔になる
そんなありもしない事が想像となって私の頭の中を駆け回った
しゃがみ込み葉っぱを一枚指で挟んだ
そういえば、学校の授業で先生が言っていた
「茎は美しいという点では、花に劣る。」
国語の授業での、誌の一文だ
何故か、私はその誌が、好きで記憶に残っていた
私は、花にはなれるけど、茎にはなれない
支えるための根がないから
人を引き付けるための魅力も美しさもない
そう思えたら、私は花にもなれないね
私は小さく苦笑した
「そういえば、死ぬ時はどんな感じだったかな?」
死ぬ前に見たものは、倒れがコップと黄色の蛍光ペンと私の右手だ。
コップにはまだ暖かいカフェオレが入っており、倒れた表紙に床一面に茶色の水面が広がっていた
確か、死ぬ前は腹痛や胸を締め付けるような痛みが乱立して起こっていた
病院にも行かず、母親にも言わなかった
病院にいけば、お金が掛かる。
母親に言えば、何を言われるか分からない
黙って耐えて、私は、小さな部屋の中で誰に看取られるわけでもなく死んだ
「一度死んだのなら二回目もあんまり変わらないよね」
口に出せば、死ぬことに対する恐怖が少し和らいだ気がする
神殿に預けるには、それなりのお布施が必要らしい
だったら、ここで誰にも見つからないように命を落とした方がいいだろう。
草原をしばらく歩いていると、小さな湖が見えた
遠くから見た感じでは、広さはそこまで無かった
「ここに飛び込めばそれで...」
ランドルとミカリアは楽になる
湖を見ると途端に恐怖が増して、息が荒く激しくなっていった
身体がまだ死にたくないと抗っているのか、足が小刻みに震えだした。
私は震える足で一歩一歩前に進み湖の前にまで移動した
湖をよく見れば、濁っおり、ここで溺死すれば、見つかる確率はかなり低い
再発したかのようにまた、呼吸が荒くなるがたった一歩前に進めばいいだけだ
荒い息を無視して湖に飛び込もうとして...。
誰かの声が聞こえた。
「リアッ!」
「アリア!何してるの!!」
聞こえた声の方向に、首を向けるとミカリアが急ぐ足取りで私のとこまで走ってきていた
「アリア聞いてるの?」
顔をペチペチと叩かれてミカリアの不安そうな顔が私に近づいてきた
「アリア大丈夫?」そう言って頭をゆっくりと撫でて、優しく抱き寄せてくれる
「どうしたの?神儀は終わったんじゃないの?どうして魔石を光らせないの?」
魔石?
私は、俯いた状態で革袋から魔石を取り出した
素手で握ってしまい、足の力がどっと抜けた
ぷるぷると震える足を気合で立たせて、ミカリアに魔石を手渡した
「光らなかった」と言葉を付け加える
私の言葉で察したのだろう「ああ...そう」と言うだけだ
目に見えるほどの落胆した声
俯いたままの状態で、一本踏まれた草が視界に入った
踏まれた草には、靴に踏まれた跡があり不規則な形で地面に横たわれている
私は、この踏みしめられている草に今はなりたいと無性にそう思った
強張った顔を何とか作り直して、顔をあげようとしたがあげられない
何度も何度も口にして、口に馴染ませた言葉を今言うべきなのに言葉は一向に出てこない
「どうしたの?アリア魔石が光らなかったの?別に怒ったりしないわ。見つかったんだからいいじゃない。それより今日はご馳走よ」
ミカリアは、自分の声色に気づいたのか、直ぐに声が明るくなったが、最後の声トーンは暗く、小さく気がした
俯いたままミカリアに手を引っ張られ歩いた
いつの間にか草が土の舗装された道に変わり、石畳に変わり、見慣れた木製の床に変わった
そこで初めて家に帰り付いた事に気づいてゆっくりと顔を上げた
見渡せば、ランドルがせっせと何かの準備をしていた
机には、沢山の美味しそうな料理が並べられており、誰かの祝うかのように、ちょっとした飾り付けもされていた
「おお!!帰ったのか!」
ランドルは、嬉しそうな顔でこちらに歩いてきた
「どうしたんだ?ミカリア」
「そのランドル...」
ミカリアの表情を見て嘆息して一言言った
「そうか...」
明らかにがっかりした表情失望を隠そうともしなかった
落胆と失意の表情。それと僅かに見える厄介者を見る瞳
それからお風呂に入った
そして席に付いて、食事に手をつけた
食欲が湧かない、味があまりしない、でも食べなくてはならない
ゆっくり、味を確かめるように噛みしめてみるが、やっぱり味はしない
食事中は、一言も会話がなかった
その空気の重さに耐えられずに椅子を立ったが、もう一度座り直し、木で作られた食器を握り必死にかきこんだ
食事が終わり話し合いが始まった
自然と両親が席に付いてランドルは両手を机上で組み下げた
「それで、どうしたんだ」
私は俯いたまま両親の顔を見らずに口を開いた
「わだっ..うまっでよがったのっ」
口に馴染ませた筈なのにうまく言えない
ランドルとミカリアは自分の表情に気づいたのが、突然ニコリと笑顔に変えた
「何で泣いてるんだ〜〜神様は、祝ってくれなくても父さんと母さんは祝ってるぞ〜〜」
そう言ってランドルは私の頭をがしがしと撫でた
無理をした笑顔だ。
ミカリアもそれに続いて「そうよ。アリア元気を出して」と言って私をぎゅっと抱きしめた
励まそうとする声だが、(落胆したのだと)言っているように聞こえる。
「父さん、今日は疲れたから先に寝る。明日も仕事だからな」
「アリアも今日は疲れたでしょ。もう寝なさい」
そう言ってランドル立ち上がり部屋を出ようとした時に、あの夜の会話が脳裏を過ぎった
あの時ランドルが言っていた。「神殿に預けないか?」そんな言葉が頭を過ぎり更に不安になる
このままでは神殿に預けられてしまう。そう思って不安な気持ちになったが少し安心した。
このまま家族に迷惑を掛けたくない。
それにお父さんのあの声色を、お母さんのあの表情をもう見ないでいいと思うと少し安心する。
だけどもう会えないと思うと物凄く寂しくなる
期待と不安と罪悪感だけがぐるぐると回っている。
最後に自分の気持ちを私は吐露した
今なら何でも言える。そんな気さえする
「お父さん!お母さん!私どうしたら良かったの!?ねぇ!なんで私だけ!みんなと同じようにできないの!」
これが私のわがままなのは、知っている...だけど、口が動くのを止められない
「お父さん言ってたよね!魔術具に触れてはいけない!他の人はみんな普通に触れている」
魔石に触れて遊んでいる子供を見た。
「お母さん外に出てはいけない!とかなんで!窓を覗けば小さな子供が外を走り回ってたよ!」
ランドルに当たっても意味がないのに、ミカリアに理由を聞いても意味がないのに。
それは私を守る為だということを私は知っているのに...なんで...どうして....
ランドルとミカリアは、私を見て口を抑えていた。
「ランドルさん、ミカリアさん私は二人の家族になれますか?」
神殿に預けてしまえば、両親と会うことはできない、名前すら呼んではいけない
仮に何処かで会っても、両親としてではなく、赤の他人として接する事になる
私の突然の言葉に驚いたのかその場でランドルもミカリアも立ち止まり、驚嘆した表情で私を見ていた
少しの沈黙の後恐る恐ると言った口調でランドルは呟いた
「知っていたのか?」
私は小さく頷いた
ミカリアは、口を両手で覆い隠して泣きそうな目で私を見ている
「はぁ。」とランドルは片手で前髪を鷲掴むようにして頭を抱えながら溜息を履いた
そして...。突然自分の額を壁にふづけだした
ミカリアは「ランドル!?」と目大きく開けて止めようとしてもやめる素振りも見せなかった
がん!がん!っと木製の壁に血の跡が付くまで何度も。
「ふーー」と息を吐き出して、額の血を袖で拭った
そして私に、近づいてやさしく抱き寄せた
「ああ、家族だ。お母さんもアリアも俺にとっては大事な家族だ。そしてアリアは俺の大事な、とても...とても...大事な娘だ」
最後に「すまなかった」と呟いた
私は、どうしていいか分からず、ランドルの顔をじーっと見ていた
それから少し声色を高くして「今日はアリアの好きなあれをしやろう」
そう言って私の両脇を掴んで、何度も何度も高く高くぶ上下に振り回した
やめて!気分が悪くなる!何て言えるはずがない
「ミカリアあれを持ってきてくれ」
ランドルのやりたいことを察したのか、
「そうね、ちょっとまっててね。」
ミカリアはニコッと笑い隣の部屋に駆け込んだ
その間ランドルにたかいたかーいとされるがままミカリアを待っていた
「戻ったわ」その言葉を聞いてランドルはもう一度私を抱き寄せてぎゅーーっとする
なになに!?
「アリア誕生日おめでとう。それと不甲斐ない両親でごめんな」
その後ミカリアにもぎゅーっとされた
「ごめんなさいね。貴方の気持ちに気づいてあげられなくて」
ミカリアが涙を流し私の背中に腕を回した
「ミカリア、アリアがプレゼントを開けれないだろ。そろそろ離してやれ」
ランドルは笑いながら私をミカリアから離した
「アリア誕生日おめでとう。」
最初は落胆した表情だったランドルが急に明るくなったのを見て私は動揺が隠せなかった
「あの..私駄目だったのに」
「だからどうした?娘の誕生を祝うのとアリアが授けられなかったのは一緒じゃない」
「私神様に捨てられたから..」
「神官が言ってたんだろ?気にするな。仮に神様に捨てられたとしてもお父さんとお母さんずっと味方だ。なっ」
涙が止まってくれない
涙を堪えても堪えても止まってくれない
うまく喋れない。涙で言葉が詰まる
「ゔん...私お父さんとお母さんと一緒がいい」
ミカリアがゆっくりと私の前に座り布で包まれた細長い物を私の手に置いた
「アリア開けてみて」
震える手で布を一枚一枚開けていく
「これって」
細長く削られた木を棒に瑠璃色の宝石がちょこんと付けられている
髪飾りだ。
「お母さん付けてもいい?」
「そのままにしてなさい、私が付けるわ」
ミカリアは私の髪丁寧に解いて髪飾りを付けてくれた。
「お母さん、お父さんありがとう」
「かわいいな。俺の娘は世界一だ」
「あら、素敵じゃない」
この二人は、何かを誤魔化す時よく私を褒める
それが、今日は何処となく嬉しい
私この家族の元に生まれて本当に良かったと。ほんとうにほんとうに思った
「よし、気を取り直して今日は娘の誕生の祝だ!」
ランドルが高らかに宣言して、ミカリアもクスッと笑い「そうね」と言った
第一章終わりましたー
ここまで読んでくれた読者の皆様ありがとうございます




