表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代冒険者のすゝめ ~高校受験に落ちた僕、冒険者になってみた!~  作者: あっかんべー
第4部:異世界《アルカディア》

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
98/99

第97話 夢の試練 3

※小林ナユタ視点


気づくと、私は台所に立っていた。

そして、ここは私にとって見慣れた場所だった。

だって、自分の家の台所だったから。


なんで、私ここにいるんだっけ?

アルト君と一緒にいたはずなんだけど……。


窓の外は、夕方だった。

その窓に反射され自分の姿が映し出されていた。


――まるで、中学生くらいの自分だった。


あれ?よく見ると身に着けている制服が中学生の時の制服だ……。なんで?


手に、包丁を持っており、野菜を切っている途中のようだ。


「ナユタ、弟たちのご飯まだ?」


廊下から、お母さんの声がした。


「もうすぐ。」


えっ?声が勝手に…っ!?

言葉は間違いなく自分口から発せられたのに、自分の意志で発したものではない。


「早めにお願いね、夜勤前に食べたいから。」


「……分かったよ。」


……あぁ、これは私の過去の記憶なんだ…。

それも、最近の劇的でも何でもない私の"普通"の日常。


お母さんの足音が、遠くなった。

また、夜勤だった。


またって言うのも、私の家はシングルマザーで、子供を4人を育てて、毎日働いていた。


しかし、昼間だけではどうやってもお金が足りず夜勤のお仕事をしていた。

しかも、お母さんは黙っているけど、夜勤って言って家から出ているけど、要は夜のお仕事をしていた。


そして、お母さんはいつも、疲れた顔をしており、だから、私も家のことは出来る限りのことを手伝っている。


「……頑張ってるよね、お母さん。」


誰にともなく、呟いた。

弟たちに心配を掛けたくない。


野菜を切りながら、呟いた。

私が手伝えばお母さんの負担が減らすことができる。


お肉を炒めながら、呟いた。

私が頑張らないと…だって私は"お姉ちゃん"なんだからっ。


「……私が頑張らないと。」


それは、本当のことだった。

本当のことなのに、少しだけ…ほんの少しだけ胸の奥がざわついた。


「ナユタ、まだ~?」


弟の声がする。


「もうすぐだよ。」


「はやく~。」


「うん、もうすぐだよ。」


夕飯を作り終え、弟たちは私の作ったご飯を食べ始める。

皆は美味しいと言ってくれ良かったとは思っているんだよ、正直いつも数少ないお肉をもやしで嵩増ししただけの単純な料理だったから飽きないか?とか。


……皆ごめんね、こんなご飯しか作れなくて…。


皆が食べ終えたら私は食器を後片付けをする。

その後、弟たちが学校の宿題をするのを見守る。

時間はあっという間に過ぎ、お風呂の時間になってしまう、みんなお風呂があまり好きではない様でこれも入れるのになかなか苦労したよ…。


皆を寝かしつけ全部終わった時、台所に一人で戻りやっと夕飯の残りを、一人で食べることができる。


……冷めてる。


「……今日、友達に誘われてたんだけどなぁ。」


放課後、一緒に服を見に行こう?と誘われていて、それを断ったんだった。


「……私も可愛い服、見たかったなぁ。」


冷めた夕飯を食べながら、一度呟いた言葉を飲み込むことが出来ずどんどん…どんどんと漏れ出てきてしまう。


「……自分で選んだ服、着てみたかったなぁ。」


そもそも自分のために、服を買ったこと自体が少なかったんだ。

買ったとしても中古の安いやつ…。

一番まともで可愛い服は…制服なのかもしれない。


「……アルバイトしたいなぁ。」


呟いた。

でも、そんな時間はない。


「……自分で稼いで、自分で使いたい。」


もっと呟いた。

でも、お金があるなら弟たちにお腹いっぱいご飯を食べさせてあげられる。


「……もっと自由…ううん、もっと好きに生きたかった。」


もっともっと呟いた。


ここは誰も聞いていない私だけの時間。

台所の静けさの中に、その言葉が消えていった。


悪いことを言ったわけじゃなかった。

普通のことを言ったはずなのに、言った後に罪悪感が消えず私の胸の中に確かに存在した。


「……私って、わがままなのかな?」


別に不幸自慢をしたいわけじゃない。


「……お母さんはあんなに頑張ってるのに。」


お母さんも弟たちも大好きだ……でも、


「……弟たちだって、今を頑張って生きているだけだ。」


……私だって、もうすぐ高校生だよ?


「……私だけ、自由でいたいなんて贅沢なのかな…?」


オシャレして、街を出かけたい、友達と遊びたい。

優しくてカッコいい人とだってお付き合いしてみたい…。


――やめよ、空しいだけだよ…。


頭を振って立ち上がって食器を洗い始める。

水の音が台所に響き渡り、さっきまでの私の言葉が、全部、水と一緒に流れていった。


……でも、完全には流れてはいってくれなかった。

胸の奥に、積もっていった不満の種は確かに残っていた。

――ヤングケアラー、か。

――ふふふ、この子もなかなか悪くないのだわぁ。


面白いと思ったら、レビュー、コメント、フォロー、評価をお願いするのだわぁ!

とても、励みになるのだわぁ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ