第91話 王の回廊とゲートの先に広がる世界《HELLO RE WORLD》
廊下の奥に、それが見えた。
それはアーチ型の門だった。
やはりこちらも古びた石材で作られていた。
特別な装飾もなかった。
ただそこにあるだけの、変哲もない門だった。
「……これが?」
「はい、アルディスが言うにはですが。」
近づいていき手を伸ばした。
触れた瞬間、門が淡く光り始める。
碑文と同じか……。
最初は弱い光だった。
それが、少しずつ強くなっていき、光の輪郭が、形を形成されていく。
門の向こう側は、光っており何も見えない。
正直ここを通るには、かなりの勇気が必要だと思う。ってか、普通に怖い…。
「……ゲートが開きました。」
「……綺麗。」
小林さんが、呟いた。
確かに見た目はとてもきれいに見える、見た目は。
「……アルカディア…ママ。」
ヒナさんが、静かに言った。
ママ?お母さんがアルカディアにいるのだろうか?
お父さんはこっちにいるのに?
「……懐かしい匂いがするわぁ。」
ヒナさんが若干トリップ状態のような感じな気がする。何かに反応でもしている?
いや、気のせいだろう。
今は気にしてもしょうがない。
「向こうに行きましょう。急いで、リオさんのお父さんを探して、すぐに戻ります。見つからなくても、情報を手に入れたら即帰還しましょう。」
「そうですね。あちらでは、王は歓迎されていないとのことですから長居は禁物です。」
エミリさんが言った。
「……そうだわ。"私"たちがいることで、またあちらが乱れたら本末転倒だもの。」
よかったヒナさんが普通に戻ったようだ。
ヒナさんの声に全員が、頷き渡ろうとした、その瞬間だった。
――声が聞こえる。
それは、とても甘い女性の声だった。
どこから聞こえているのか分からない。
でも、確かに聞こえたんだ。
頭の中に、直接響いて酔っぱらいそうな程甘い声が。
――ふふふ、お帰りなさぁい、アルディス陛下ぁ。
「……っ!?」
アルディスの気配が、急変しいつになく慌てた様子の声が脳内に響き渡る。
――逃げろ、有人っ!?
声の通り後退しようとした、その瞬間、腕をガシリっと掴まれた。
僕の腕を掴んでいたのはヒナさんだった。
ヒナさんは薄く笑みを浮かべており瞳が、紫色に変わっていた。
「ヒナさんっ!?」
「……あははぁ、アルディスぅ陛下ぁ。逃げないでぇ?」
ヒナさんは、やはり微笑んでいた。
その笑顔が、いつものヒナさんの笑顔ようでいつものヒナさんにはない妖艶な笑みだった。
「……アルディス陛下ぁ?アルカディアに一緒に行きましょうぉ?」
「ヒナさん、じゃない、だ、誰だ貴女はっ!?」
「……あははぁ、分かるんだねぇ?あはははははぁ。」
ヒナさん?に引きずり込まれる形でゲートの光に触れてしまいゲートの光が、全身を包んだ。
アルディスは、まだ僕に向かって何かを叫んでいた。
声が、遠くなっていく。
意識が、途絶えていく。
最後に見えたのは、ヒナさんの紫色の瞳だった。
◇
目が覚めると、木々の隙間から空が見えた。
今度は流石に知らない天井ではなかったようだ。
空をそのまま見上げると地球と同じ空色の空が広がっている。
ただ、地球と違う点があった、太陽が二つある…。
「……うぅ。」
身体を起こし周りを見渡すと、ここは森の中だった。
それもかなり深い森の様だった。
木の高さが、日本の比ではなく空を覆う程の巨大な木々が立ち並んでいた。
「……ここは。」
ここがアルカディアなのだ、とすぐに理解してしまう。
辺りを見回し皆を探すけれど……
――ここには一人を残し誰もいなかった。
マサトも、エミリさんも、リオさんも、ヒナさんもいなかった。
ゲートも、消えていた。
「……っ、みんなっ!!」
立ち上がろうとして、足元に何かがあることに気づいた。
それは小林さんだった。
地面の上で、まだ気絶していた。
「……小林さん。」
肩を揺さぶった。
「……小林さん、起きて。」
「……んぁ。」
小林さんが、目を開けた。
良かった、気絶していただけか……。
「……アルト、くん?」
「よかった、大丈夫?」
「……大丈夫、だと思う、けどここは、どこ?」
「恐らくは、だけどアルカディアなんだと思う。」
「……アルカディア。」
小林さんが、空を見た。
「……太陽が、多い?」
「うん。」
「……みんなは?」
「……いないんだ。バラバラになったみたいで。」
「……そっか。」
小林さんが、立ち上がった。
そして、さっきまで僕みたいに辺りを見回した。
「……とりあえず、合流先を探さないとね!」
こんな時でも元気な小林さんを見ていると僕もどこか安心してしまう。
「そうですね、まず――」
その時だった。
ヒュッ!
という音が聞こえた。
反射的に身を低くし音の方向を振り返る。
木には矢が刺さっていた。
それも頭があった場所を、矢が通り過ぎていた。
「……っ!?」
「きゃっ!」
小林さんが、声を上げた。
木の陰を取り身を隠す。
矢が、まだ飛んできており、二本、三本、次々と飛んできた。
「……誰かいるっ!」
「どこから!?」
「上、木の上に誰かいるよっ!」
木の上を見ると確かに人影が見えた。
それも複数人分の。
更には――
その全員の耳が、人間にしては尖っていた。
「……エルフ?」
ここまで不運だと流石に笑えてきてしまう。
今は、種族間戦争で人間とエルフも争っているという記憶を僕は前に見た。
そして、僕たちの現在地もちゃんと分かってしまった。
あぁ、ここは人間嫌いのエルフの縄張りの…【アウストラの樹海】なのだと。
――だから…言っておったのに…お主は何がしたいのじゃ?
――まぁだ、言えなぁいわよ?
――まだ、ね。
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