第88話 ヒナの話 前
「……っ!?」
ヒナさんが、自分の今の状態に気づき、勢いよく僕から離れた。
そして、部屋の隅まで走って、そこに置いてあったテーブルクロスを引っ掴んで体に巻きつけた。
顔が、真っ赤に染まり俯き下を向いてしまった。
「み、見ないでっ!」
「み、見てません!」
そうヒナさんの"蘇生は"できたけど、服までは復活は出来ていなくて先程まですっぽんぽんだったのだ。
ヒナさんが気づき慌てて隠してはいたけど、時はすでに遅く色々見えてしまった僕もヒナさん同様に耳まで赤くなっている。
僕は即座に背中を向けた。
「……男の子は外向いててください。」
エミリさんが、僕とマサトに向かって言ってきた。
「向いてます。」
「……向いています。」
「ふふっ。」
ヒナさんが、小さく笑った。
「……みんな、ありがとう。」
しばらくして、ヒナさんの声がした。
「……もう大丈夫だよ。」
振り返ると、ヒナさんがテーブルクロスをしっかり巻いて座っていた。
顔がまだ赤かくさっき見てしまったものが脳裏に焼き付き……ちょっとだけ意識してしまう。
女の子の身体ってあんなに凄いんだ……っ!?
生まれて初めて見た……っ!?
「……その、服は後で。」
「うん。……まずは話をさせて?」
ヒナさんが、膝の上で手を組んだ。
「全部、話すって言ったから。」
「はい。」
「……どこから話せばいいかな。」
「……ヒナさんのペースで大丈夫です。」
ヒナさんが、少しの間考えた。
それから、顔を上げた。
「……うちの本名から話すね。」
「本名、ですか?」
「……白川ヒナは、こっちの世界での名前。本当の名前は――」
ヒナさんが、少し間を置いた。
「……ヒナ・セレスティア=レ・アーク・ルミナス。」
誰も何も言えなかった。
名前からして上の立場の名前だったから。
「アルカディアから来たの。うちも、お父さんも8年前に。」
「……アルカディア。」
リオさんが、静かに言った。
「うん。碑文に書いてある異世界になるね。」
「……ヒナさんは、その世界の住人なんですか?」
「そうなる、のかな。……うちは、閉門衆に所属していた巫女だったんだ。」
ヒナさんが異世界人?
口が出そうになったけど、今はヒナさんの話を聞いてからにしよう。
「巫女ですか?」
「アルカディアでは、異世界の神【ゾル】様の神意を伝える役割を担う者のことをそう呼んでいたんだよ。……うちは、まだ幼くて巫女の仕事は全然していなかったけどね。」
8年前ということは、当時ヒナさんは9歳だったことになる。
西条の話からするとこっちに来てアルカディアに帰れなくなってしまったと言っていたからまだ幼いヒナさんは心境を考えると…なんともやるせない気持ちになってしまう。
それに8年前か。
これは偶然なのかな…。
「……王というのは、田中アルトのことですか?」
実はずっと気になっていたことをエミリさんが言ってくれた。
「……そうだね。アルト君は、アルカディアの王、アルディスの転生者である可能性が高い。最初からそれを調べるために、白川グループはアルト君を監視していたの。」
「……なんで可能性が高いと判断したんですか?」
そうそれなのだ。
僕はD災害にあった以外は特に何もないただただ普通の子供なはず…なんで僕が王様なんだろうか?
アルディスはなぜ自分に宿っているのか、それが不思議でならない。
アルディスも天照大御神様も何も教えてはくれなかったから。
「……そう、だよね、それを疑問に思うよね。……アルト君ごめんね。」
「えっ?」
「アルト君からすると嫌な話になるかもしれないから。」
「……いえ、大丈夫です。話の続きをお願いします。」
「じゃあ、話していくね?」
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