第86話 痛み 5
光が、爆発し社長室全体が、白と紫紺に塗り潰されていく。
その中で僕は、ヒナに向かって踏み込んだ。
ヒナが、魔物化した体で、こちらを見ていた。
鱗に覆われた腕を振り上げた。
その腕を、優しく掴み紫紺の光と柔らかな神光が、そこから広げていく。
「……ヒナさん。」
「……アルト、くん。」
「まだ、意識はありますか?」
「……うん、あるとくn。」
急がないと意識が消えてしまいそうだ。
「僕はここにいます。」
「……うん。」
「絶対に、離さないのでヒナさんも絶対にあきらめないでくださいっ!」
「……うん。」
「……僕を信じてもらえますか?」
ヒナが、泣いていた。
魔物化した目から、涙が流れていた。
「……うちは、アルト君のこと、ずっと、」
「知っています。」
「……ずっと、守りたかった。でも、何もできなくて、うちは、うちは穢れていて、」
「ヒナさんは違います。穢れてなんていません!」
「……違くない、よ。お父さんのこと、知っていて、止められなくて、」
「ヒナさんは絶対に穢れてなんていない。綺麗な人ですっ!」
「……でも、」
「穢れていない。僕が保証します。」
紫紺の光が、鱗の上から広がっていく。
魔物化が、逆流していく感覚がした。
白川も声を上げて僕を見守っていた。
先程までの勢いはもうなくなっており娘を心配しているようだ。
「……なるほど。神性魔力で魔物化魔力を消す、というわけか…それならいける早く神性魔力を高めるんだ!娘を頼む!」
どうやら、これで白川と決着がついたみたいだ。
白川もやはり親として子は見捨てられないようだ。
よかった…。
親子の縁が本物で…。
「……アルト君。」
「はい、なんですか?」
「……うちの名前、呼んで、もらえない、かな?」
「……ヒナさん。」
「……もう一回。」
「…ヒナさん。」
「……もう一回。」
「ヒナさんっ!」
「ふふふ、ある、と、くん、ありがとう。」
ヒナさんは鱗に囲まれた顔を薄く微笑みに変え静かに目を閉じた。
「……あたた、か、い――」
薄紫紺の光が、ヒナさんの全身を包んでいく。
ピキピキピキっ
そう音を立てて最後にはヒナさんは静かに崩れ落ちて――
目の前から姿を消した。
えっ?ひ、ヒナさんはどこに?
「ひ、ヒナさん?」
「お、おい!大丈夫なのか、これは。」
僕の目の前には、ヒナさんはどこにも見当たらず塵の山しかこの場に異物は存在しない。
ま、まさか――
「……ふは、アハハハハっ!」
この静寂が走る空間で笑い声がこだまする。
声の主は白川だった。
娘の姿が見えなくなって焦ってい――
「田中アルト君おめでとう。」
「な、何がですか?」
「もう分かっているのだろう?」
嫌な予感がする。
この先の言葉を聞きたくないと心が全力で拒否をする。
しかし、白川はそんな僕の状況を分かっているかのように薄く笑い冷たい声で告げる。
「君はこれで立派な人殺しだ。君は私の娘を殺してしまったのだから。」
――アルト…。辛かろうが耐えるのじゃ。
――ふふふ。
面白いと思ったら、レビュー、コメント、フォロー、評価をお願いするわぁ!
とても、励みになるからねぇえ!




