表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代冒険者のすゝめ ~高校受験に落ちた僕、冒険者になってみた!~  作者: あっかんべー
第3部:深層と蛙と痛み

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
86/99

第85話 痛み 4

「……やはり、そう簡単にはいかないようだね。」


白川の声がした。

振り返って白川を見ると手の中に、何かが握られていた。


それは黒い結晶だった。

あれは魔石だろか?いや違う、普通の魔石とは全然違う。

……色が、深すぎる。

光を吸い込むような、底のない黒さだった。


「……それは。」


「ダンジョンコアから採取された遺産アーティファクトだよ。」


白川が、静かに言った。


「数十年前、最初のダンジョンが出現した際に発見されたものらしい。その効果は、一言で言えば、魔物の強化及び魔物の作成。そしてこれは、人間に含まれる魔力の回路を強制的に書き換え、魔物の性質を付与することができる。」


「……それを、どうするつもりですか。」


「……娘には、使いたくなかった。だがね、私には全てを捨ててでも叶えたい宿願あるんだよ。」


白川の表情に、初めて苦しさが見えた。

本当に、使いたくなかった、とそれは、見ていれば分かった。


それならば、何で自分ではなくて自分の子供を使うんだっ!?覚悟があるなら他人を巻き込むのは間違っているよ……。


だけど、白川のその手が動いた。

黒い結晶が、砕かれた。

黒い粒子が空中に広がって、ヒナの全身を包んだ。


「……っ?」


ヒナが、声を上げた。


「ヒナさん!」


駆け寄ろうとした。

エミリさんが腕を掴んだ。


「……待ってください。」


「でも、ヒナさんがっ!?」


「近づいたら危険です。」


黒い粒子がヒナの全身に染み込んでいく。

ヒナの体が、変わり始めた。

肌の色が変わっていく。

薄っすらと、鱗のような模様が浮かび上がってきて目の色も、変わった。


茶色の瞳から、深い赤黒い色へ。


体格が、わずかに大きくなった。


「……あ、」


ヒナが、自分の手を見た。


「……何、これ。」


「ヒナさん!」


「……アルト、くん?何でここに?……っ、ここはどこ?」


ヒナが、こちらを見た。

既に洗脳が完全に解けているようで、この状況に混乱をしているようだ。

そして洗脳の代わりに、身体が変わっていた。


「……うちは、どうなって、いるの?」


「大丈夫です…大丈夫ですから。」


「……大丈夫じゃない気が、するよ?体が、うちのものじゃない、みたいで。」


「ヒナさん、僕の声を聞いていてください。僕の声だけを。」


「……う、うん。」


「まだ、聞こえていますか?」


「……聞こえてる、よ。」


「僕はヒナさんのそばにいますからね。」


「……うん。」


だが、どんなに慰めてもヒナさんの身体の変化は止まらなかった。

いや、むしろ先程よりも変化のスピードが早くなっているような……?


鱗の模様が広がっていく。

それに合わせ体格がさらに大きくなっていく。

目の色が、さらに深くなっていき理性の色が消えていく。


「……アルト、くん、こわい。うちは、こわい。」


「大丈夫です。絶対に大丈夫ですから…っ。」


「……助けて。」


「助けます。だから、もう少し――」


「……っ、あ、あ、体が、うちの体が、」


ヒナが、苦しそうに声を上げている。

魔物化が、加速しているのだ。

白川が、それを見ていた。

その顔に、勝利の色はなかった。

ただ、苦しそうに、自分の娘を見ていた。


自分でやっておいてそんな顔をするなんて絶対に許せない…。


「……白川さん。」


白川を見た。


「止める方法はありますか。」


「……アーティファクトによる魔物化を止める方法は、我々の知識では存在しない。」


「じゃあ、なぜそんなものを使ったんですかっ!貴方はヒナさんの家族でしょうがっ!?」


白川が、答えなかった。


「ヒナさんを、どうするつもりだったんですか。」


「……魔物化が完了すれば、あなたを排除する力になると。」


「自分の娘を、そのために?」


「……陛下を消せるのならばどうなろうともいい。娘であることは変わりないし、魔物化が完了しても、知性と記憶も残る。ただ、姿が変わるだけだよ。これが私が君たちに見せる覚悟と痛みだよ。」


「それは、人間としての人生が終わっている、と言うんじゃないんですかっ!?」


何が白川をこうさせる?

脅されでもしているのか?


白川が、初めて目を逸らした。

ヒナが、また声を上げた。


「……っ、アルト、くん、うちは、うちは、もう、」


「ヒナさん、聞いてください。」


「……聞いてる、聞いてるけど、体が、もう。」


「ルージュ、炎蛙えんあ出てきて。」


短槍とフランベルジュを握った。

槍の宝石とフランベルジュの刀身が、温かく光った。


「……ぬしさま。」「ぬし、呼んだ?」


「ヒナさんを助けたいけど、僕だけじゃダメだった…。何かできることは無いかな。」


少しの間があった。


「……あたしには分からない、でも。」


「でも?」


「……ぬしさまは、神威解放が使える。」


「今の状態で使えるかどうか。」


「……アルディスに聞いて。」


ルージュはアルディスを知っているの?

いや、今はそんなことはいい……。

僕は頭の奥に、語りかけた。


アルディス、聞こえる?


――聞こえているよ。


神威解放で魔物化を止められるスキルか魔法はある?


――僕の知識の中に魔物化なんてないんだ、ごめん。でも、可能性がある技はあるよ?


……っ!それに賭けたい…。


――もちろんリスクがある。記憶がさらに流れ込んでくるから、さっきよりも有人に負担が掛かるんだ。


構いません。


――本当に?


ヒナさんが助けられるのなら。


頭の奥で、アルディスが少し黙った。


――分かった。一緒にやろう。


全身の魔力が、動き始めた。

目から、紫紺が溢れ出してくる。


――ᛟ ᚨ ᚾ ᛞ ᚱ《遥かなる昔、一人の王は世界を背負った。》


部屋の空気が変わった。


――ᚠ ᛖ ᚱ ᚷ ᛚ《されど王は敗れ、民を護れず、祖国を失い、己すら失った。》


マサトが、後退した。


「……アルト、また倒れちまうぞ。」


マサト大丈夫だよ。

心配してくれてありがとう


――ᛋ ᛖ ᚾ ᚷ ᛁ《王冠は砕け、玉座は朽ち、英雄の名は歴史より消え去った。》

――ᛗ ᚨ ᚾ ᛁ ᚷ《王は逃げた。》

――ᚢ ᚱ ᛞ ᛟ ᚾ《過去から逃げ、責務から逃げ、己の罪から逃げ続けた。》


白川の顔が変わった。


「……何を、しているんだ。今更何かしたところで――」


――ᛖ ᚷ ᚨ ᛚ ᛟ《名を失い、記憶を失い、それでもなお終わることだけは許されなかった。》

――ᛒ ᛖ ᚱ ᚾ ᚨ《彷徨い続けた果て、王は一つの光に出会う。》

――ᛚ ᛁ ᚠ ᛖ ᚾ《それは剣でもなく、力でもなく、共に歩む仲間たちだった。》


ヒナが、こちらを見た。

魔物化が進む体で、それでも、その目でこちらを見ていた。


――ᛞ ᚨ ᚷ ᚱ ᛁ《共に笑い、共に傷付き、共に涙し、共に未来を願う者たち。》

――ᚨ ᛚ ᚷ ᛁ ᛉ《その温もりだけが、王の凍てついた心を再び動かした。》

――ᛏ ᛁ ᚹ ᚨ ᛉ《故にここに誓う。》

――ᛋ ᛟ ᛚ ᛟ ᚾ《二度と誰一人、この手から零さない。》

――ᚠ ᚱ ᛖ ᛃ ᚨ《二度と仲間を置き去りにはしない。》」

――ᛗ ᛁ ᛞ ᚷ ᚨ《二度と逃げる王ではいない。》


部屋全体が、光に包まれ始めた。

白川が、腕で目を庇った。


――ᛒ ᛚ ᛟ ᛞ ᛁ《我が血肉は盾となれ。》

――ᚺ ᛖ ᚨ ᚱ ᛏ《我が心は剣となれ。》

――ᛋ ᛟ ᚢ ᛚ ᚨ《我が魂は希望となれ。》

――ᚨ ᚾ ᛋ ᚢ ᛉ《天を統べる神々よ。》

――ᚱ ᚨ ᛁ ᛞ ᛟ《地を巡る精霊よ。》

――ᚲ ᛖ ᚾ ᚨ ᛉ《我が誓いを今ここに刻め。》

――ᛖ ᛁ ᚹ ᚨ ᛉ《過去を断ち切り、未来を切り拓くために。》

――ᚦ ᚢ ᚱ ᛁ ᛋ《世界よ見届けよ。》

――ᛟ ᚦ ᚨ ᛚ ᚨ《逃亡の王は、この瞬間に終焉を迎える。》

――ᛏ ᛁ ᚱ ᚨ ᛉ《ここより始まるは――守護の王。》

――ᚷ ᛖ ᛒ ᛟ ᛉ《我が全てを賭して紡ぐ聖戦を。》

――ᚨ ᚾ ᛋ ᚢ ᚱ ᚨ《神よ、人よ、世界よ――その目に焼き付けろ。》

――ᛋ ᛟ ᛚ ᛁ ᛞ ᚨ《これが我らの英雄譚。》

――ᛏ ᛁ ᚱ ᛉ《さあ――始めよう。》

――ᚷ ᛖ ᛒ ᛟ《僕たちの聖戦を。》


「――二次解放セカンドステージ・パージ 神威解放シンイカイホウ

――力の使い分けが出来てきたの!

――僕からしたらまだまだだけどね。


面白いと思ったら、レビュー、コメント、フォロー、評価をお願いするのじゃ!

とても、励みになるからね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ