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現代冒険者のすゝめ ~高校受験に落ちた僕、冒険者になってみた!~  作者: あっかんべー
第3部:深層と蛙と痛み

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第82話 痛み 1

渋谷ダンジョンを出ると、街の明かりも落ち着いており人の波は既になくなっていた。


どのくらい地下にいたのか分からなかった…。

義父さん達は心配しているだろうか…。

でも今は――


「大崎まで急ぎましょう。」


僕より先にリオさんが言われてしまった。


「タクシーを呼びます。」


「ありがとうございます。」


走りながらスマホを見た。

マサトからメッセージが来ていたことに気づいた。


『アルト、どこにいるだよ。連絡返してくれよ。まさか一人で行ってたりはしないよな?』


エミリさんからも来ていた。


『竜ヶ崎さんから聞きました。私も行きます。どこに向かえばいいですか?』

しばらくしてからもう一本メールが来ており、


『田中アルト、今すぐ連絡してください。』


それに小林さんからも…。


『アルト君、大丈夫???』


全員に、短く返した。


『大丈夫だよ。詳細は後で。』


マサトからすぐに返信が来た。


『どこだ。俺も行くぞ。』


マサト…。

最初に頼れと言ってくれた彼にこれ以上甘えてしまってもいいのだろうか…。


「……呼びましょう、ここからは出来るだけ人数を増やして向かったほうが安全かもしれません。」


「……分かりました。」


リオさんにそう言われ決心がついた。

皆に助けを求める、か。

こんな僕に本当に力を貸してくれるだろうか。


そう思いながらも皆に続けてメッセージを飛ばす。


『……大崎の白川グループ本社です。その、助けてくれませんか……?』


『馬鹿野郎。一人で行くなって言っただろ。俺も今すぐそっちに行くぞ。』


『……一応大学生の人もいます。』


『それでも足りないだろ。俺も行く。』


止める間もなく、マサトたちが動いてくれているようだった。

何故だか分かる…。



みんな……ありがとう。



タクシーが意外とすぐに来た。

リオさんと乗り込んで、大崎へ向かった。

車の中で、リオさんが、


「……さっきのことを、少し聞いてもいいですか?」


「は、はい、分かりました、では、碑文に触れたところから話しますね――」


僕はダンジョン内で碑文に触れてからのことを簡単にだけど、リオさんに説明をした。


「――では、田中さんの中に、別の意識がある、ということですか?」


「……そうなると思います。アルディスという名前の。」


「碑文に出てきた王の名前と同じです、か。」


「は、はい、そうなります。」


リオさんが、少し間を置いた。


やっぱり気味が悪いだろうか?

僕はリオさんの顔色を伺うように返答を待った。


「……父の資料でアルディスと言う名称は何度も見かけました…。父は一体何者なのでしょうか…?だって、誰も碑文は読めないはずなのに…。でも、そのアルディスと言う名称は、田中さんの中の人格の名前なんですよね?」


「……はい、確かにそう言っていました。」


「そう、ですか。」


アルディスと言う人格は一体何者なのだろうか?

碑文の内容ではまるで王様かのように記されていたようだけど。


リオさんが、静かに言った。


「……父はアルディスという名前を特別な書き方で記録していました。そして、調査中にその姿を消しました…。」


「……リオさんのお父さんは、何かを知っていたんでしょうか?」


「……分かりません。でも、何かを知っていることは確実な様です。それと、閉門衆と呼ばれていた人たちも同様の知識を持っていたみたいです…。……父と白川グループ、閉門衆は繋がっていた?」


最後の方は上手く聞き取れずボソボソと聞こえた。

やっぱり、お父さんのことを気にしているのだろう。

もしかしたら、あの閉門衆と何かしらの関係があるのかもしれない…。


リオさんはそれっきり黙り込んでしまい社内が静まり返ってしまう。


若干の気まずさを紛らわすために窓の外を見るとタクシーは大崎に近づいてきており、白川グループのビルが遠くに見えてきた。



ビルの前まで来た時、マサトたちが既に来ていた。


「……何で僕たちよりも先に来てるの。」


「当たり前だろっ!お前が心配だからだろっ!めっちゃ急いできたんだぞっ!?…それと、神崎さんでしたか?アルトをありがとうございましたっ!」


「いえ、私も田中さんのことが心配でしたから。」


僕は子供か何かなのかな…?

でも、ここまで心配してくれる友達は中々いないと思う。それが何といえばいいか分からないけど、……とても嬉しかった。


「ふふふ、田中さんは良いお友達をお持ちですね。」


「……はい!」


恥ずかしくてもこれだけははっきり言える。

マサト達は僕にはもったいないくらい良い人たちなんだ。


マサトが、再びこちらを見てくる。


「……メールを見たけどよ、白川先輩が、中にいるんだよな?」


「……うん。公園で見たし、僕を誘い込んできた人が、別室にいると言っていたんだ。」


「どうやって入るんだ?」


「……正面から行こうと考えているんだ。」


「……え、大丈夫なのか、それ。」


「おそらくだけど、ここの社長は僕にあってくれると思うんだ。」


「なんでだ?」


「向こうは、僕が」


「……なるほど。」


「それよりも、ヒナさんを見つけ次第すぐに外に出てください。マサトと小林さんにお願いしたいんですが…。」


「あぁ、任せろ。」


「ありがとうございます。」


エミリさんが、僕の顔を見た。

ど、どうかしたのかな?


「……田中アルト。あなた、何か変わりましたね。」


「そ、そうですか?」


自分だと分からないなぁ。


「目付きが、少し変わりました。」


アルディスの記憶の一部を見たことで少しだけ精神的に成長できたのかな…。


「……説明は後でします。今は急ぎましょう。」


エミリさんは何も言わなかったが、頷いた。


――目ぇ腐っとるのかこの女…全然アルトじゃろ。

――うぅ…あ、…ははは…


あはははははぁ~あ。


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