表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代冒険者のすゝめ ~高校受験に落ちた僕、冒険者になってみた!~  作者: あっかんべー
第3部:深層と蛙と痛み

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
74/94

第74話 指名斡旋《クエスト》

今日は、渋谷区役所に行くこととなった。


平日の午後だったので、窓口はそこそこ混んでいた。

順番待ちの番号札を取って、椅子に座って待つ。

僕の隣には、ヒナさんが隣に座った。


最近、本当に毎日ついてくる様になった。

何でだろう?こんな毎日一緒にいると少しドキドキしちゃうよ…。


「カード更新、久しぶりだね。」


「そうですね。前回から結構経ちましたし。」


「アルト君のステータス、どのくらい変わってるんだろ。」


「……自分でも楽しみです。」


番号が呼ばれるまでの間、ヒナはスマホを見ていた。昨日の配信のコメントを確認しているらしかった。昨日の夜に再開した配信は、思った以上に反響があったらしく、何度もスマホを見ては少しだけ表情が和らいでいた。


「…コメント、多いですか?」


「うん。久しぶりって言ってくれる人が多くて。」


「よかったですね。」


「……うん。」


ヒナが、また画面に目を落とす。


【78番号札お持ちの方は、冒険者カード更新カウンターまでお越しください。】


番号が呼ばれたようだ。

窓口に向かうと、担当者が顔を上げた。


「いらっしゃいませ、本日のご用件は…あ。」


やっぱりエリナさんだった。


「田中様じゃないですか。お久しぶりです。」


「お久しぶりです。カードの更新をお願いしたいんですが…。」


「もちろんです。白川さんも一緒なんですね。」


「こんにちは、佐藤さん。」


「こんにちは、お二人が一緒にご来庁されるのは、久しぶりですね。」


エリナさんが、少し楽しそうに言った。ヒナさんが「たまたまですよ」と返した。


「では、田中様から更新しましょうか。カードの提出をお願い致します。」


冒険者カードを差し出し、エリナさんがカードリーダーに通して、画面を操作する。


「少々お待ちください……血を少々頂きますね。」


これ…苦手なんだよなぁ…。


端末が向けられ、採決部分に血を一滴たらす。


「…はい。ありがとうございます。では、もう少々お待ちください。」


そう言ってエリナさんは奥に行ってしまった。

少しの待機時間を終えエリナさんは戻ってきた。


「こちらで更新完了です。新しいカードはこちらになります。」


「……ありがとうございます。」


カードを受け取り確認をする。


~田中 アルト 16歳~ Dランク

加護 :天照大御神

スキル:?????の記憶(解放率45%)

    炎系統魔法 初級

    氷系統魔法 初級

    パリィ

    十二円卓(2席)NEW!


また増えてる…。

十二円卓(2席)?なんだろうかこれは?


「いえいえ。え~っと、あとヒナさんの分も――」


「わたしは今日は大丈夫です。アルト君の付き添いで来ただけなので。」


「あら、そうですか?」


エリナさんが、少し意外そうな顔をした。


「あ、あと田中さん、今日は少し空いている時間はありますか?」


「……はい、今日はそのままダンジョンへ行く予定でしたが、何かあれば。」


「実は、田中さん宛に指名斡旋《指名クエスト》が来ていまして。」


「指名斡旋《指名クエスト》、ですか?」


「はい。特定の冒険者を名指しで依頼する制度です。依頼内容は後ほど詳しくご確認いただけますが、こちらに依頼主の情報だけ先にお伝えしておいた方がいいかと思いまして。」


エリナさんが、端末を操作した。


「依頼主は――」


画面に、名前が表示された。


「……白川グループ、です。」


「……っ。」


隣で、ヒナが小さく声を出した。

エリナさんは気づかなかったようで、嬉しそうに続けた。


「白川グループといえば、国内最大手のダンジョン関連企業ですよ!冒険者になったばかりの方に、あそこから指名が来るなんて、本当に異例中の異例です。すごいことですよ、田中さん!」


「……そうなんですか?」


「そうですよ!うちの窓口でも、白川グループからの指名斡旋が来た冒険者は片手で数えるくらいしかいません。それも全員、Aランク以上の実力者ばかりで。」


エリナさんが興奮気味に言う。


「田中さん、何か伝手でもあるんですか?」


「……いえ、全然。」


「不思議ですねぇ。でも、それだけ注目されているということですよ!依頼内容の詳細は、受託してからでないとお伝えできないんですが、受けますか?」


僕は少し考えた。

なんで、そんな大手から?という疑問がどうしても頭に浮かぶ。


白川グループ。

世間知らずの僕ですら聞いたことはある。

この国のダンジョン関連事業の大半を動かしているという、巨大企業だ。武具から魔石、更には魔物の討伐部位の買取まで幅広く手を広げている会社だ。

しかも、創業して8年と短い期間でここまで躍進したとんでも企業である。


なぜ、冒険者になってまだ日の浅い僕に、指名が来るのか、と怪しいという感覚はある。


だけど――


「……受けます。」


これはチャンスだと思った。

ここで、大金を稼げれば義父さん達に恩返しができる、そう思ってしまったのだ。


「本当ですかっ!?」


「はい。詳細をお願いします。」


「では手続きしますね。少しお待ちください。」


エリナさんが端末を操作し始めた。

隣に目をやるとヒナさんが、窓口の方を見ていた。

普段と変わらない顔だ、だけど、手が膝の上で、ぎゅっと握られていた。


「……ヒナさん?」


「なに?」


「どうかしましたか?」


「ううん、何でもないよ。」


笑顔のまま、言った。


「白川グループから来るなんて、すごいね、アルト君。」


「……なんか、不思議だなと思って。心当たりがないですから。」


「そうだね。」


ヒナさんは、それだけ言って前を向いた。

エリナさんが戻ってきた。


「お待たせしました。こちらが依頼の概要です。詳細は後日、担当者から直接ご連絡が来る形になります。」


紙を受け取り見てみると、簡単な内容が記されていた。


依頼主:白川グループ代表 白川 貴之

依頼の種別:調査系

対象:渋谷ダンジョン、および周辺施設の特定区画

報酬:後日提示


「調査系、ですか。」


「はい。詳細は担当者からのご連絡待ちになります。近々、連絡が来ると思いますよ。」


「……分かりました。ありがとうございます。」


「こちらこそ、またいつでもお越しください。エミリもお世話になっているみたいですし。」


「いえ、僕の方こそエミリさんには本当に。」


「頼りにしてあげてください、あの子、頑張り屋なので。……ところで白川さん。」


エリナさんが、ヒナに向いた。


「ちょっとだけいいですか?」


「はい?」


「今日、なんか顔色が少し悪いですよ。大丈夫ですか?」


ヒナが、少しだけ目を丸くした。


「……大丈夫ですよ。ありがとうございます。」


「そうですか?まあ、妹の友達みたいなものなので、心配してしまって。無理しないでくださいね。」


「はい。」


ヒナが笑った。

区役所を出ると、午後の日差しが眩しかった。


「……ヒナさん。」


「うん?」


「本当に大丈夫ですか?」


ヒナが、立ち止まった。

少しの間、空を見た。

それから、僕の方を向いて笑った。


「大丈夫だよ。」


「……エリナさんにも言われてましたよ。」


「顔に出ちゃってたかな。」


「少しだけ。」


ヒナが、少しだけ笑みを深めた。


「……アルト君、白川グループからの依頼、なんか嫌なら断ってもいいんだよ?」


「怪しいとは思ってます。でも、断る理由も今はないので。」


「……そっか。」


「何か知っているんですか、ヒナさん。」


一瞬だけ、ヒナの目が揺れた。

だけど、すぐに元に戻った。


「知らないよ。ただ、気をつけてねって思っただけ。」


「……はい。ありがとうございます。」


「うん。」


ヒナが、また歩き出した。

渋谷の街が、いつも通り賑やかだった。


白川グループ、か。

そんな依頼になるのだろうか…。



この時、ちゃんとヒナさんを見ていればもう少し違った未来があったのかもしれない。

でも、後悔しても過ぎてしまったことはどうにもならないのだ。

スキル:十二円卓(2席)について

これは、とても単純なスキルで召喚の契約を結んだ相手の数を表しています。

副次効果もありますが、今はまだ秘密です。


面白いと思ったら、コメント、フォロー、評価をお願いいたします!

とても、励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ