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高校受験に落ちた僕、実は異世界で王をやっていたらしい  作者: あっかんべー


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第6話 ダンジョンと謎の壁の文字

渋谷ダンジョンに来た僕たちは、入り口で入場料を支払い中に入る。


「…アルト君、私が配信する分なら問題ないんだよね?」


「…はい。あまり戦闘中に僕を映さないようにしていただけるなら」


「ありがと!じゃあ……配信始めるね!」


「分かりました。」


ヒナが許可を取ってきたので僕は了承した。

ヒナは撮影の準備をしてカメラを取り出した。


「みんな~昨日ぶり!ヒナだよ!今日は昨日助けてもらった人と一緒に渋谷ダンジョンに潜っていきたいと思います!」


配信開始直後 — 同接:23,441


ヒナ推し最前線:ヒナちゃんこんにちわ~!

匿名A:少年がいんじゃん!

ガチ勢777:昨日の動画見たけどマジであれ何だったの?

エトウ:ヒナちゃんが若干ドン引きしてて笑う

匿名B:今日は装備してるんだね!



第一層は観光地みたいなものだ。

整備された石畳の通路、要所要所に案内板、売店まである。出てくる魔物も《コモンスライム》と《ウィークゴブリン》程度。入門者向けのエリアだ。


ヒナが配信しながら歩いていた。僕はその後ろを黙ってついていった。


「ずっと歩いていても暇だと思うので自己紹介をしてもらおうと思います!」


ヒナが言葉を選んだ。


「…どうも」


「あれれ~?照れているのかな?じゃあ、名前をお願いします!」


「田中アルト、16歳です。」


ヒナが小声で「もう少し盛って!」と言ってきた。

急に言われても分からない、配信なんてしたことないし…。


「…頑張ります。」


同接:41,882


全員:素直そうないい子じゃん!

匿名C:自己紹介からして同類の匂いがするな?

ヒナ推し最前線:頑張って!

ガチ勢777:この子絶対天然だろ!

エトウ:田中アルトでX検索したら何も出てこなくてワロタ 本当に無名じゃん!

匿名D:初めての撮影なのかな?応援してるよ!



第二層への階段を下りたとき、空気が変わった。


ひんやり、というより……重い。


第一層はどこか観光地的な軽さがある。整備されていて、照明もある。だが第二層は違かった。光苔の青白い光だけが頼りで、通路は広くなり、天井は高くなる。


そして、何かがいる気配がした。


「アルト君、ここから《シャドウウルフ》の縄張りなので気をつけて——」


ヒナが言い終わる前に、影が動いた。


通路の左壁、暗がりから三体が同時に飛び出してきた。《シャドウウルフ》。全身が暗灰色の毛に覆われた、狼型の魔物。体長は成人男性より少し大きい。素早く、群れで行動し、初心者が一体でも侮ると死ぬ相手だ。


ヒナが武器を構えた。


だが、僕は既に前に出ていた。

また、身体がどう動けばいいのかを教えてくれる。


一体目。左手で首を掴んで壁に叩きつけた。


二体目。跳んできた軌道をそのまま受け止めて、地面に押さえ込んだ。


三体目。俺の顔を見て、止まった。


魔物が、怯んだ。


僕を見て、一歩下がった。


「……あっ」


ヒナの声だった。


三体目のシャドウウルフが怯んでいる隙に僕は一気に近づいてナイフで一気に刈り取る。


僕は、残ったシャドウウルフにもとどめを刺し残心する。


「よかった…昨日のはまぐれじゃなくて」


ヒナは口を開けたまま僕を見ていた。


 「……今、何をしたんの!?うち、動けなかったよ!?」


 「…ナイフが思いのほか馴染んで動けました。」


 「そういうことじゃなくて!身体能力どうなっているの?加護の影響?」


 「…気のせいじゃないですか?」


 「気のせいじゃないですっっっ!!」


同接:89,004 —


ガチ勢777:シャドウウルフって第三層のボス格だぞ!?それが怯んだのか!?

プロ冒険者X:このおじさん……Sランクどころじゃないって。魔物が本能で逃げるって人間じゃありえないぞ!

匿名F:誰なんだよ田中アルトって 情報0すぎる…



配信を続けながら、僕たちは第二層を歩いた。

道中、ヒナは僕にちょこちょこ話しかけてきた。


「ダンジョンって今まで来たことあったの?」


「昨日が初めてです」


「アルト君の強さの理由とかわかる?」


「わかりません」


「……昔から強かったんですか?」


「普通でしたよ?体育は三でしたし」


ヒナが歩きながら僕の横顔を見た。


「嘘ついていない?」


「本当のことしか言ってないですよ?」


僕は本当にわからなかった。

なぜ体が動き方を知っているのか。


昨日から何度か考えたが、答えが出ない。

ただ、体が動く。動き方を知っていて僕はそれに抵抗していないだけ。


そして、この空気。


今日第二層に下りてから、ずっとその感覚があった。


懐かしい。


どこかで嗅いだことがある空気。どこかで歩いたことがある感触。

あの夢の話を、ヒナにしようか一瞬思ったが、やめた。

また、変な人だと思われるかもしれない。


というか、もう思われているかもしれない…。


「アルト君、あそこ——」


ヒナが通路の奥を指した。

薄暗い分岐路の向こう、壁に何かが刻まれていたるのがギリギリ見えた。

僕は目を細めた。


どうやら、文字の様だった。


石壁に、深く刻まれた文字。日本語でも英語でもない。

見たことがない字体だ。だが——


「……読める。」


思わず口から出てしまった。

聞こえたのか、ヒナがすごい勢いで振り返った。


「えっ?」


「あ、いや、なんでもないです」


僕はヒナから目を逸らした。

確かに読めた、いや、壁の文字の意味が、頭の中で静かに浮かんでいた。


——《帰還者よ、門はまだ開いている》


意味がわからなかった。

なのに、僕の胸はどこかがとてもざわついていた。


同接:134,290


エトウ:今「読める」って言いかけたよな?

ガチ勢777:あの壁の文字、ダンジョン研究者でも解読できてないやつじゃん

匿名G:なんでもないですで流すな!!!

プロ冒険者X:読めるのか…!?なんで!?

新規多数:この子何者なんだよ本当に



配信終了後、ヒナが黙って隣に立った。


「アルト君…。」


「…なんですか?」


「もしかして本当にあの壁の文字、読めたの?」


僕は少し間を置いた。


「……気のせいだと思いますよ?


「絶対気のせいじゃないでしょっ!」


ヒナの目が真剣だった。

先程までの目つきではなく、とても真剣な目つきで僕を見てくる。

それに、これも途中入学の実績になるかもしれないと思いヒナに先程の内容を伝えた。


「……帰還者よ、門はまだ開いている、と書いてありました」


ヒナが息をのんだ。


「……帰還者って、なんのことか分かる?」


「僕に聞かれても…」


「アルト君のことじゃないの?」


僕は答えなかった。

わからない、とは言えなかった。


なぜか?


——心当たりが、あったから。


ただ、まだ思い出せないだけで。



「明日も一緒に探索してくれないかな?」


「分かりました。大丈夫です。」


「ありがとう!じゃあ、また明日ね!」


「…はい、ま、また明日。」


その後三階層に行く予定であったが、解散となり僕は家に帰った。


「アルトお帰りなさい。」


「義母さん…ただいま。」


「ちゃんと帰ってきたな!よかった!」


リビングに入ると叔父夫婦が僕を出迎えてくれた。

今日ダンジョンへ行く話をしていたので、無事帰ったことを喜んでいる様だった。


「今日の活動はどうだった?冒険者登録は問題なかったか?」


「…はい、特段問題もなく活動を終えました。」


「うんうん!よかったよ!俺たちはアルトが無事ならそれでいいんだから!」


ちょっとだけ嘘をついてしまった。


冒険者のだけど、高校に行けるかもしれないこと。

そして、ダンジョン内の壁の不思議な文字のこと。


僕は叔父夫婦にそれを言わなかった。

…いや、言えなかった。


高校の件は、まだ決まったわけじゃないし期待をさせたくないから。

文字に関しては、叔父夫婦に心配を掛けたくないからだ。


この結果がどのように響くかは分からないけど、また明日僕はダンジョンに潜るために今日はもう寝よう。

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