表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代冒険者のすゝめ ~高校受験に落ちた僕、冒険者になってみた!~  作者: あっかんべー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
54/58

第54話 兎と僕

兎年生まれなので兎を強敵にしてみました。

騎士兎が地面を蹴った。

爆発したように土煙が舞い上がる。

そして、次の瞬間には既に目の前だった。


「っ!」


宝魔槍が突き出される。


技の完成が速い…っ。

だけど、動きは見えている、身体能力だけなら僕の方が高いっ!


僕は半歩だけ身体をずらした槍を避ける。


槍先が頬を掠めるが、そのまま懐へ潜り込みナイフを振り上げる。


ギィンッ!!


火花が散るように宝魔槍がの破片が飛び散る。

騎士兎は槍の柄で受け止めていた。


いや――違う。


受け止めたんじゃない。


誘われたんだ…。


目の前の兎は僕の剣が来る場所を読んでいたのだ。


「チッ!」


ナイフを引くが、同時に石突が腹を狙って飛んでくる。


身体を捻ってなんとか回避し、振り向きざまに斬撃を放つ。


――いないっ!?

いや、…っ背後!


反射的に回し蹴りを蹴り放つ。


ガァン!!


重い衝撃が腕を襲った。


二歩、三歩と後退する。


「ははっ……。」


思わず笑みが漏れる。


強い…。

本当に強い。


昇華前の僕なら、一瞬で殺されていた。

スキルの封印が解けた今だからこそ戦えている。


…それでも。

それでもまだ届かない…。


騎士兎は宝魔槍を肩に担ぎながらこちらを見ていた。


まるで力量を測る騎士のように。


――その時だった。


後方からエミリさんの澄んだ声が響く。


「❘ᚢ ᛏ《力よ、勝利よ。》」


蒼い魔法陣が展開される。

温かな魔力が僕の身体へ流れ込んできた。

まだ魔法は完成していないようだけど、魔力が集まり始めているのが分かる。


「❘ᛖ ᚱ《疾走よ、駆け抜けよ。》――肉体昇華アップグレート


幾重もの魔法陣が重なり合った。


その瞬間、僕の全身を熱流が駆け巡る。


筋肉が膨れ上がるような感覚がして、視界も鮮明になった。まるで、身体そのものが一段階上へ引き上げられたようだった。


「ありがとうございます!」


「行ってください、田中アルト!」


僕は再び地面を蹴った。


さっきまでとは比べ物にならない速度。


一気に騎士兎との距離を潰す。


普通なら愚策だ。


槍使いに真正面から挑むなんて。


だけど、僕が一番得意なのは遠距離戦でも魔法戦でもないっ!

一対一の接近戦インファイトだっ!


相手の間合いを喰い破り、呼吸を読み、癖を見抜き、ナイフを通す。


それが僕の戦い方だ。


「はぁぁぁぁ!!」


剣と槍が激突する。


1撃、2撃、と連撃コンボをつなげていく。


しかし、ナイフが槍に阻まれてしまう。


…悔しいけど、騎士兎の槍術はとても洗練されていて無駄がない…。

まるで、何十年も戦場を生き抜いてきた騎士の技だ。


だけど、僕だって前の僕じゃないっ!


4撃目!


8撃目っ!


16撃目っ!!


回転をうまく利用し連撃コンボを重ねたその瞬間、騎士兎の赤い瞳がわずかに見開かれた。


このとき、初めてこの魔物ひとが僕を敵として認識した。


そして――


宝石角が赤黒くダンジョン中エお照らす様に強く輝き始めた。


ゾクリ、と背筋が震える。

これはマズい…絶対にマズい…ま、魔力が…。


「田中アルト! 下がりなさい!」


エミリさんが叫ぶ。


同時に、僕の魔力視が❘危険信号を《逃げろと》告げていた。


騎士兎の全身を巡る魔力が今までとは比較にならない速度で宝魔槍へ収束している。


――何か来るっ!?


今までの攻撃は本気じゃなかったんだ…。


そう理解したとき、騎士兎は静かに槍を構えた。

まるで戦場で奥義を放つ騎士のように。



騎士兎は静かに槍を構えた。


…それだけだった。

それだけなのに…。


空気が変わる。


洞窟内の温度が下がったような錯覚。

肺の奥が重くなり、のどがカラカラと乾く。

本能が叫んでいる。


今すぐ逃げろ、と。


「…っ田中アルト!」


エミリさんの声が飛ぶ。

同時に新たな魔法陣が展開された。


「❘ᚨ ᛚ《護りよ、堅牢よ。》」


僕は陣系統魔法は全然分からない。

だから、続く言葉を待ち次の行動を思考する。


「❘ᛒ ᛟ《障壁よ、我らを守れ。》――守護付与プロテクション!」


魔力の膜が全身を覆った。


プロテクションって言うからには、おそらく防御系の魔法なのだろう。

エミリさんは、さっきの僕を見て近接戦闘インファイトを支援してくれているのだと思う。


ならば、僕は戦わなくちゃいけない…。


しかし、騎士兎から目を離してしまった次の瞬間、再度騎士兎が消えてた。


「――っ!?」


見失った。


いや、違う速すぎるんだ。

先程までの早さとは比べようもないほどの速さで移動をしており地面、壁、天井を巧みに利用し僕を攪乱かくらんしようとしてくる。


魔力視が捉えるより先に動いている。


――左っ!


咄嗟にナイフを振るう。


ガァァン!!


凄まじい衝撃が腕を貫いた。


防げたけど、押し切られるっ!?


地面を削りながら十メートル近く吹き飛ばされた。


「ぐぅっ…!」


肺の空気が強引に押し出され腕が痺れる。


防御強化がなければ折れていたかもしれない。

痛む腕を抑えながら視線を上げる騎士兎がじっとこちらを見ていた。


騎士兎は追撃してこない、ただ槍を下ろし、こちらを見ている。それはまるで試験官のように。


――測られている?


そんな感覚があった。

何を測られているのかまでは僕にはわからない。

カーバンクルが騎士兎イレギュラー化した時に何かが宿ったのか、そもそもあったもの異常進化イレギュラーしただけなのか、ただ分かるのは、目の前の強者が弱者を見下す目をしていないってこと。


目の前の強者《騎士兎》は僕を同格の相手として見てきている。


相手は魔物だから僕の勝手な妄想かもしてないけど…。


「はっ…っ!」


思わず笑ってしまった。


なんだこれ…面白い。

マグマトードとも違う、武田先生や絡んできたチンピラ冒険者たちとも全然違うっ!

強いだけじゃない、技術も経験も僕と比べて桁違いだ。しかし、そんな魔物《人》が僕を同格として戦ってくれている。


だからこそ――


立て――


立つんだっ!


人ではないけど、何かしらを僕に期待して待っているのだとしたら僕はその期待に応えたい…っ!


「田中アルトっ!?」


「大丈夫です!」


立ち上がり身体を確認する。


手も足もまだ動く。

…ならばまだ戦える。


全身の魔力を巡らせていく。

僕の身体は薄紫色に発光し始める。


この間の武田先生との訓練《ダンジョン研修》のおかげか僕はおそらく2段階連続で昇華レベルアップしている。

その恩恵かは分からないけど、目からしか溢れ出なかった紫紺の魔力は現在微量ではあるが体の汗腺から出すことができるようになった。


外気に触れた魔力なら今の僕は操ることができる。

逆に言えば、それだけだ、体内の魔力源に直接干渉することはまだ出来ない…。


それともこれが心威によるものなのかな…?


騎士兎が再び槍を構えた。

僕もナイフを構え相対する。


一瞬の静寂が空間を支配していく――


天井から落ちた一滴の雫が地面を打つ。

ぽちゃんっ……・・・


それが合図となり、どちらがともなく動き出す。


――そして、一人《僕》と一匹《騎士兎》は光となる。



ダンジョン内で剣戟音が反響する。

その音は先程までのような音ではなく、まるでダンスのリズムのように見聞きする者を魅了していく。


紫紺と赤黒が混ざり合い壁の宝石たちがその光を反射させあたりを照らす。


見える。

今なら見えている。


騎士兎の全身を巡る魔力が、一つの流れとして繋がっていた。


「そうか…っ!」


僕は息を呑む。


今まで見ていたのは点だった。

腕の魔力、足の魔力に武器の魔力。

僕は魔力をそれぞれ個別に分けて見ていた。


…違う、間違っていたんだ、そうじゃなかったんだ。


見るべきなのは全体だ。

身体に流れている魔力の流れだったんだ。

騎士兎の身体全体が、一つの技として繋がっている。


だから予測できなかったし、技が戦技アーツが速く見えたのもそのせいだ。


だけど今なら…っ!


騎士兎が踏み込み槍が閃く。

僕は半歩前へ出た。


「ギャッ!?」


初めて騎士兎の声に驚きが混じった。

槍が通るはずだった場所に僕はいない。


紙一重で回避しそして、さらに懐へ。


ここからは僕の領域だ!


「もらったぁぁぁ!!」


全力の斬撃を振り抜く。


剣閃が騎士兎の胸元へ迫っていく。


――しかし、兎のその真っ赤な瞳はなお冷静だった。


宝石角が再び妖しく輝き出し、次の瞬間、騎士兎の背後に巨大な赤黒い魔法陣が出現した。


「――なっ!?」


エミリさんが息を呑む。


僕も目を見開き咄嗟に後方へ飛び退く。


魔物が…それも詠唱なしで…っ?


そう、目の前の騎士兎は魔法陣を展開したのだ。


そして騎士兎は宝魔槍を縦に構えを取った。


その光景は、魔法陣と槍が重なり時計の針を表すかのように――


洞窟全体が震え始める。

その魔法陣から漏れ出る赤黒い魔力は、これまでとは比較にならないほど巨大だった。


面白いと思ったら、コメント、フォロー、評価をお願いいたします!

とても、励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ