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現代冒険者のすゝめ ~高校受験に落ちた僕、冒険者になってみた!~  作者: あっかんべー


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第53話 騎士兎《ラビットナイト》

生類わかりみの令…。

前回ヒナさん達と来たときは上手く躱せたけど、今回は果たして上手くいくか…。


「…証拠は?」


僕がそう返すと、短髪の青年は眉をひそめた。


「は?」


「先に見つけたって言うなら証拠があるのかなって。」


新宿ダンジョンは広い。

誰が最初に見つけたかなんて基本的に分からない。

だからこそ――


「俺たちはさっきから追ってたんだよ。」


青年が苛立ったように言う。


「角の状態を見れば分かる。そいつは逃げ回る個体だ。」


「…なるほど。」


正直僕には分からない。

だけど嘘を言っているようにも見えなかった。


「なら追い付けなかった時点で負けじゃね?」


マサトが肩を竦める。


「ダンジョンは早い者勝ちだろ?」


その言葉に青年の後ろにいた仲間が一歩前へ出た。


「ふざけんなっ!俺たちが30分近く追い回してたんだぞ!」


「だから譲れって?」


マサトの声も少し低くなり、空気が一気に険悪になった。


…これはまずい。


このままだと本当に喧嘩になる。

僕は慌てて口を開いた。


「待ってください。」


全員の視線がこちらへ向く。


「カーバンクルはおそらくですが、4体います。」


魔力視で確認した反応を思い出す。

曲がり角の先には4つの反応があったはずだ。


「…1体を巡って揉める意味ありますか?」


青年が目を細める。


「…続けろ。」


「僕たちが2体、貴方たちが2体、それで終わりじゃ駄目ですか?」


沈黙――


正直、自分でも弱気な提案だと思う。


でも戦う理由がない、ここはダンジョンだ。

魔物を倒しに来たのに人と戦うなんて馬鹿らしい。


すると青年の後ろから眼鏡の少女が小声で言った。


「リョウ先輩。2体だけでも十分黒字です。」


「……。」


青年――リョウは舌打ちする。


「ちっ。」


そして僕たちを睨みながら言った。


「今回はそれでいい。」


少しだけ肩の力が抜けた。

リョウが仲間へ振り返り仲間達に言い放つ。


「お前らもそれでいいな?」


「えぇ。」「あぁ。」「「「はい。」」」


良かった、何とか――


そう思った瞬間だった。


ぴきっ


嫌な音が聞こえた。


全員が同時に音の方向を見る。

4体いるカーバンクルの内1体が、額の宝石角が赤黒く光っていた。


「…え?」


エミリさんの表情が変わる。


「まずいです。」


「何が?」


変異種イレギュラーです。」


刹那――


ギャァァァァァァッ!!


兎とは思えない絶叫がダンジョンに響き渡った。



正直なところまたかよ…っていうのが僕の率直な感想だった。


ダンジョンに潜るたびに何かが起きる。

マグマトード然り、特殊個体の宝石ゴーレムだったりと…。


そして極めつけは他パーティーと揉めた直後のイレギュラー出現だ。


どうして僕の周りはこうなるんだろう…。

ダンジョンに嫌われているのだろうか?


目の前のカーバンクルはその姿をどんどん変えていき4足歩行のはずが2本足で立ち始め、額の宝石角が赤黒く輝き、溢れ出した魔力が空中で凝縮されていく。

やがてそれは一本の武器となった。


――言うならば、宝魔槍ほうまそうハルバード、と言ったところだろうか。


宝石で作られた巨大な戦斧槍を握りしめたカーバンクルは、もはや僕の知る兎型の魔物ではなかった。


「…誰だよ。カーバンクルは可愛い小動物だなんて言った奴は。」


マサトがそうつぶやいたのが聞こえた。


すみません、それ僕です…。


「…リョウさんと言いましたか?すみませんが協力してくれませんか?」


カーバンクルが3体にイレギュラー兎が1体、通常個体もイレギュラーの魔力に触れ少し強化されたように見える。


僕はマサトとエミリさんの戦闘能力しか知らないため、イレギュラーを他の人に任せるか迷った。


それならばと、マサトと小林さんで通常兎1体、リョウさん達で残り2体、僕とエミリさんでイレギュラーに当たろうと考えたのだ。


この間の旧東京地下ダンジョンで昇華した上に、今スキルの封印が解けている僕なら何とかイレギュラーの相手も出来ると思う。


それにあのイレギュラー兎は魔力の流れがはっきりしている。


「…マサトと小林さんで通常個体を1体、リョウさん達で残り2体を、そして、イレギュラーは僕とエミリさんで引き受けます。改めて言います、協力してください。」


「あぁ、わ、分かった。協力する。」


リョウさんは何とか言葉を飲み込み協力してくれるようだ。


「おう!了解だ!」


「まっかせて~!いっくよぉ~!」


マサトと小林さんがカーバンクルに向かって一気に駆け出す。


よかった…ここで断られていたら作戦が一気に瓦解するところだった。


「…エミリさん、すみません。一番危険なところの配置にしてしまって…。」


「…いえ、大丈夫です。私は、後衛として貴方の補助をすればいいですか?」


流石、学年主席!

僕がお願いしようとしたことを先回りして考えてくれていたようだ。


「…はい。僕が前衛としてイレギュラー個体に当たるので魔法をお願いします。」


「分かりました。」


作戦は決まった。

ならば、もう考えることはもうない。


――勝負だ。



「はぁぁぁ!!!」


僕はイレギュラー兎に突貫する。

持てる限りのスピードを持って兎の懐に入り込む。


魔力視には見えている。


足、腰、肩、そして武器の全身を循環する魔力の流れが。


確かに見えていた。

…だが見えていたからといって避けられるとは限らない。


ギィンッ!!


「っ!?」


硬い音が響く。


剣を振り抜く前に、宝魔槍ほうまそうが最短距離で僕の剣を弾き上げた。


速い?いや、違う速さなら僕の方が早いはずだ。

単純に上手いのだ。


ただ力任せに振るっているんじゃない。

まるで訓練された槍使いみたいに最小限の動きで迎撃してきたのだ。


「ギャァッ!!」


イレギュラー兎が叫ぶ。


同時に槍が閃いた。


突き、薙ぎ払い、石突による打撃のよる三連撃が流れるように繰り出される。


「うっ!?」


慌てて後ろへ飛ぶ。


岩壁に槍が叩き付けられ、爆発したように砕け散った。


破片が飛び散る。


「う、嘘だろ!?」


ただの一撃だ。

それだけで壁が抉れている。


もし直撃していたら――


…考えたくもない。


「田中アルトっ!」


後方からエミリさんの声だ。

直後、無数の魔法陣が兎の足元に浮かぶ。


「❘ᛁᛊᚨ ᚾᚨᚢᚦᛁᛉ ᛖᚾᚨᛉ ᛏᛁᚹᚨᛉ《極北に眠る永劫の氷よ 万象を凍てつかせる冷気よ その力を無数の槍へと変え 蒼天より降り穿て》――氷槍群アイスバレット!」


放たれた氷槍がイレギュラー兎を中心に殺到していく。


しかし、カーバンクルは槍を一回転させた。

宝石の粒子が渦を巻き、迫る氷槍を片端から砕き散らしていく。


「なっ…!?」


エミリさんが息を呑む。


魔法を迎撃したっ?…そんなこと出来るのか?


イレギュラー兎は宝石角を赤黒く輝かせながら、ゆっくりと槍を構え直した。


その姿はまるで――。


「…騎士?」


思わずそう呟いてしまう。


普通はあり得ないことだ。

魔物に人間のような知恵と技能を持つなんてことは。


しかし目の前にいる兎の魔物はまるで人間のような行動に槍捌きをしており、その佇まいは魔物のそれでは決してなかった。


…あれは騎士だ、しかも相当強い歴戦クラスの。


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