表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代冒険者のすゝめ ~高校受験に落ちた僕、冒険者になってみた!~  作者: あっかんべー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
52/57

第52話 壊し屋と呼ばれた男

マジで冒険物を書くって難しいですね…。

「…なぁ。」


ダンジョン入口の騒動が終わって数分後、僕たちはようやく探索を開始していた。


一階層は相変わらず薄暗く、ところどころに採掘跡が残っている。

けれど、今の話題は魔物でも採掘でもない。


「マサト?」


先頭を歩いていたマサトが、妙に静かだった。

普段ならうるさいくらい喋るのに。


「なぁアルト。」


「うん?」


「お前、伊藤先生のことどれくらい知ってる?」


「どれくらいって…?」


正直伊藤先生のことはあまり知らない…。

ちょっと不愛想で、朝礼が始まるとアイマスクを付けて寝始めるイメージしかない。

そして、先程その印象は更新された。

場を凍らせるほどの強い圧力に、生活を壊すほどのパチンコ中毒者…。


「…変な先生、かな?」


「…だよな。」


マサトは真顔で頷いた。


「俺もそう思う。」


「いや、聞いておいてそれ?」


するとマサトは頭を掻いた。

どこか複雑そうな顔をしている。


「…いやな。」


そう言って彼は小さく息を吐く。


「俺さ、壊し屋って二つ名は知ってるんだ。」


その瞬間、エミリさんが反応した。


「…聞いたことがあります。」


「え?」


僕だけ話についていけていない…。

いや、小林さんも首を傾げていた。


…よかった僕だけじゃないみたい。


「有名なの?」


「有名どころじゃないぜ?」


マサトが即答した。


「探索者やってる奴なら大体知ってるレベルだ。」


そんなに?


僕が驚いていると、マサトは少し遠くを見るような目をした。


「十年くらい前だったかな。奥多摩ダンジョンが魔物氾濫寸前まで行ったんだよ。」


ダンジョン魔物氾濫スタンピード…。


ダンジョン内部の魔物が異常増殖し、地上へ溢れ出す災害だ。発生すれば都市一つが壊滅することもある。だからこそ国も管理局も神経を尖らせている。


D災害や地震や台風のような災害と違い、ダンジョン魔物氾濫スタンピードは予兆がある。


そのため冒険者たちは日頃から魔物を間引き、氾濫の予防を行っている。


「その時、たまたま近くにいた一人の探索者が単独ソロでダンジョンに突入した。」


単独ソロで?」


「そうだな。」


エミリさんが頷く。


「本来ならあり得ません。」


「ダンジョンコア破壊なんて国家級探索者でも危険な任務です。」


「それを一人でやったんだよ。」


マサトは苦笑した。


「しかも成功したんだぜ?」


僕は思わず足を止めた。


成功した?一人で?ダンジョンを壊したってこと?


「法律上、ダンジョン破壊は基本禁止だ。でも、魔物氾濫の危険がある場合だけ例外になる。だから、そいつは街を守るためにコアを破壊した。」


マサトはそこで少し黙る。


「その時に付いた二つ名が――壊し屋ってわけだ。」


僕の脳裏に、さっきまで金欠だのパチンコだの叫んでいた担任の顔が浮かぶ。


…嘘だろ?

まさか、あの人が…?


するとマサトが遠い目をした。


「…俺さ、昔から壊し屋に憧れてたんだよ。」


マサトは言葉に詰まりながらも、子供の頃の想いを口にした。


「まさか伊藤先生だったとは思わなかったけどな…。」


その声には、少しだけ夢を壊された少年の響きが混じっていた。



場所を移動しながら、マサトは口を開く。


「…でもよ、やっぱりすげぇんだよな。」


「伊藤先生が?」


僕が聞くと、マサトは頷く。


「普通、ダンジョンコア破壊なんて国家級探索者が数人は集めてやるもんなんだぞ?」


「そんなに危険なの?」


「危険なんてもんじゃねぇよ。」


今度はエミリさんが説明を引き継いだ。


「ダンジョンコアはダンジョンの最深部に存在します。」


「うん、まぁ、そうだよね。」


「つまりコアを破壊するには最深部まで到達しなければなりません。」


…それは確かにそうだ。


「しかもコア周辺は魔物の密度も強さも別格です。」


「だから普通は大規模な討伐隊を編成するんだ。」


マサトが肩を竦める。


「それを単独ソロでやったんだ。」


改めて聞くと意味が分からない。

しかも魔物氾濫寸前のダンジョンをたった一人で攻略する…言うだけなら簡単だ。

でも、それが普通では決してありえないことなんだろう。


「…やっぱり化け物なんじゃない?」


思わずそう呟いてしまう。


「…化け物だな。」


「…化け物ですね。」


二人とも即答だった。


…なんだろう。

担任教師への評価とはとても思えない。


「でも、パチンコで金を溶かすような人なんだよ?」


「そこなんだよなぁ…。」


マサトが頭を抱えた。


「…俺の中の英雄像が崩壊した。」


「今も壊し屋じゃん!」


小林さんがぽつりと言う。


「…何が?」


「マサト君の夢を壊したもん。」


「…やめてくれ。」


真顔で言う小林さんにマサトが本気でダメージを受けていた。


そんなやり取りをしながら進んでいると、エミリさんが突然足を止める。


「…静かにっ!」


その一言で全員が口を閉じた。

僕も慌てて魔力視を発動する。


前方の通路の曲がり角付近。


小さな魔力反応が三つ見える。

いや、四つか?


「…魔物?」


「恐らく。」


エミリさんが頷く。


すると次の瞬間――


ぴょこん。


岩陰から白い耳が飛び出した。

続いて姿を現したのは額に宝石のような角を持つ兎型の魔物だった。


「カーバンクルだ!」


マサトが声を上げる。


「…知ってるの?」


「知ってるも何も高級魔物だぞ!」


目を輝かせながら言う。


「魔石も角も高値で売れる!」


なるほど、急に目の色が変わった理由が分かった。

…しかし、ここまで知っているのなら、僕が事前に来る必要はあまりなかったのかもしれない。


それに、カーバンクルがそんな高く売れるのなら前回遭遇した時に渡してしまったことを思い出し少し損をした気持ちになる。


…いや、後悔はしていない。…していないけど、少しだけ惜しい気持ちになるのは仕方ないと思う。


…でもやっぱり、小動物を攻撃する気にはどうしても慣れないなぁ…。


「アルト!」


「え?」


「リーダーだろ?」


あ、そうだった。

今は僕が指示を出す番だった。


少し緊張しながらも深呼吸する。


「…小林さん前衛!」


「おっけ~!」


「マサトは右から回り込んで!」


「了解!」


「エミリさん援護お願いします!」


「…分かりました。」


僕の一声で皆が一斉に動き出す。


不思議だった。

少し前まで自分がリーダーなんて無理だと思っていたのに、今は自然と言葉が出てくる。


カーバンクルがこちらに気付き、警戒するように後退したその時だった。


「待てっ!」


突然、通路の奥から怒鳴り声が響き、僕たちは反射的に通路の奥を凝視する。


そこには六人組の若い探索者が立っていた。

年齢は僕たちより少し上くらいの高校3年生か大学生くらいだろう。


その中心にいた短髪の青年が、険しい表情でこちらを睨む。


「そのカーバンクル。」


青年は低い声で言った。


「俺たちが先に見つけた獲物なんだけど?」


ダンジョンの空気が一気に張り詰めた。

前回ヒナさん達と来たときは上手く躱せたけど、今回は果たして上手くいくか…。


面白いと思ったら、コメント、フォロー、評価をお願いいたします!

とても、励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ