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現代冒険者のすゝめ ~高校受験に落ちた僕、冒険者になってみた!~  作者: あっかんべー


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第51話 新・金亡者はどこにでも現れる。

お金は人間関係を壊す…。

「案内をしてやる代わりと言っちゃあなんだが、身に着けている武器とか金を置いていってくれや。」


強盗っ!?

現代日本にっ!?


「…ダンジョンの入り口付近で騒いでいていいんですか?」


エミリさんが冷静に尋ねる。

男はニヤリと笑った。


「誰が騒いでるって?」


「?」


「俺たちは親切に初心者へ助言してるだけだぜ?」


周囲を見る。

確かに警備員も周りの壁を採掘している冒険者たちもこちらを見ていない。


いや、正確には見ているが、動く気配がない。


「ダンジョン管理局は基本的に民事不介入だ。」


男は肩を竦める。


「殴ったり武器を抜いたりすりゃ別だがな。それでどうするんだ?俺たちにダンジョンの中で逆らってやっていけるとは考えない方がいいぜ?」


どうする?どうする?どうすれば…。


マサトは拳を前に構え戦闘態勢に入っているし、小林さんは剣の柄に手を掛けていた。

エミリさんは、冷静に状況を把握しようと静観しているようだ。


そうだ、落ち着け、今は僕がリーダーなんだ。

…こっちから手を出せば相手に正当防衛として反撃を許してしまうことになる。

もしかしたら、それを狙っている可能性がある。


でもだからといって、ダンジョンの中で本当に後ろから攻撃されたらたまったものじゃない…。


…どうする?


……どうする?


その時ふと武田先生の言葉を思い出す。


『力で解決できることは力で解決してもいい。』


『力で解決ってそれって暴力で解決ってことですか?』


『あぁ――でも、それしか出来ない奴は三流だ。』


…確かそんなことを言っていた気がする。


僕はゆっくり息を吐く。


「…分かりました。」


男達の顔が緩む。


「お?」


「払います。」


マサト達が驚いた顔をする。

だけど僕は続けた。


「その代わり領収書ください。」


「……は?」


「恐喝被害として提出するので。」


沈黙。


目の前の男たちも、マサトたちも、なんなら警備員さん達まで黙り込んでしまった。


「あと、さっきから録音してます。」


スマホを持ち上げる。


もちろん録音なんてしていない。


ただのハッタリだ。


男達の表情が変わった。


「…ってめ、ふざけやが――」


その時だった。


「…お前たち休日まで探索してんのか?」


ダンジョン入口から姿を現したのは、ボサボサ髪、よれた服に咥え煙草、腰にロングソードを携えた我らが担任伊藤先生であった。


「せ、先生っ!?先生こそここへ何しに来たんですかっ!?」


突然の先生の登場に僕はさっきまで考えていたことがすべて飛んでしまった。


男たちもさらに後ろから現れた伊藤先生に注意を向けて固まっているようだ。


「…新宿ダンジョンに来てんだから、金稼ぎだろ?今月はパチンコで負けまくって金欠なんだわ。お前たちは?」


教師が生徒の前で言うことじゃない。

この人、本当に先生なんですよね…?


ダメだこの先生…。

生活力が無い上に今のこの現状をちゃんと把握しているようにも見えない…。


僕とエミリさんで注意を引こう。


「…渋谷ダンジョンが入場できなかったので新宿ダンジョンにみんなで潜りに来ました。」


「そうかそうか。このダンジョンは当たれば大儲けだからな~、そう言う俺も――」


「む、無視すんじゃねぇぇぇっ!!!!」


そりゃそうだ。

先程まで、僕とこの男が話していたところに伊藤先生が割って入ってきたんだ。


いや、この場合は無視しても失礼には当たらないと思う。


だって恐喝してるし。

まだ逮捕されていないだけで。


「…おい。」


先生が言葉を発した瞬間、場が完全に凍り付いた。


な、なんですか、この圧はっ!?

魔力は見えないし、感じ取れないっ!?

ま、まさか先生の殺気なのかっ!?


「俺はよぉ、今よぉ、うちの生徒と話しているよなぁ?」


「…だ、だから、何だってんだよっ!」


男もこの圧を感じ取っているらしく先程までの威勢は消え失せやや腰が引けている。


「大体よぉ、土曜の昼間っから子供脅して金せびろうなんざ、大人として情けないぜ?」


言葉を発するごとにどんどんとその圧は重く、そして強くなっていく。


な、なんでこれ…武田先生にも劣らないこの圧は…っ!?


「う、うるせぇっ…!」


男たちは完全に戦意は無くなっており逃走を図ろうとしている様に見える。


僕としても別にまだ被害を受けたわけでもないので逃げるというなら追うつもりはない。


しかし、入り口に先生がいて、ダンジョンの通路側には僕たちがいる。


逃げるとするなら、先生がいる入り口ではなく脅そうとしていた僕たちの方を強行突破してこようとするのではないか?


その証拠に、先生に意識を向けているのにチラチラと最後尾に立っている男がこちらを確認してきている。


「それになぁ――」


「てめぇら、今だっ!」「「「――っ火炎嵐ファイアストーム!」」」


男たちはその一言を合図に魔法スキルを行使してきた。最後尾の男が僕たちを見ていたのは、スキルを打ち込むタイミングを見計らっていたからのようだ。


まずい。

魔力視で流れは掴めているけど、魔力を逃がすスペースがない…。


右にエミリさん、左に小林さん、ちょっと後ろにマサトがいるからだ。


さらに魔法が使われた距離が問題だった。

間隔が短すぎる…っ!

ギリギリ1発なら抑え込めるか…?


いく――


「…喝っっっ!!!!」


空気が震え、耳を劈くような怒号。

突然の大声がダンジョン内にこだまする。


火炎嵐ファイアストームは霧散し、熱すら残さなかった。逃げの姿勢に入っていた男もその場でぺたんっと尻餅をつく。


「おいおい、人が話しているときに魔法を使うとは頭おかしいんじゃねぇか?」


男たちの顔色が一瞬で変わる。

特に先頭の男は、信じられないものを見るような目で先生を見ていた。


「ま、まさか……。」


「あ?」


「ま、まさか、お前、壊し屋、なのか…?」


壊し屋…?

なんだそれは?


「おいおい、懐かしい名前で呼ぶんじゃねぇよ、照れちまった勢いでお前たちを血祭りにあげちまいそうだなぁ。今の俺は教師なんだよ。」


全然照れていない…。

いつの間に動いたのか分からなかった。

気付けば先生は先頭に立っていたこのグループのリーダーと思われる男の頭を掴み、睨みを利かせている。


「す、すみませんっ!!!」


「自首しろ。」


「は、はい、させて頂きますから!見逃してくだせぇ。」


「さっさと、行けぇいっ!!!」


「はいぃっ!!」


男たちは入口の警備員の腰に抱き着き「自首させてくれぇぇぇっ!!」とむせび泣き始めた。


先生はというと――


「あぁぁぁ!!!!時間を無駄にした!!!!急げば今からでも稼げるか?あ、田中、先生は先に行くからあとはよろしくな?」


先生はそう言い残すと、ダンジョンの奥へ凄まじい勢いで駆け出し一瞬で姿が見えなくなる。


「金ぇ~~~~!!!」って声を残しながら。


――僕は思った真の金の亡者は、ダンジョンの中にも外にもいるが、ただ、一番厄介なのはすぐ身近にいる場合だ…。


「金ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


先生の叫び声が、いつまでもダンジョン内に響いていた。

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