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現代冒険者のすゝめ ~高校受験に落ちた僕、冒険者になってみた!~  作者: あっかんべー


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第50話 金の亡者はどこにでも現れる。

金は人を狂わせる…。

新宿ダンジョンの受付で1万円を払い入場した僕たちはそれぞれ自分の武器を装着していく。


ダンジョンの外だと普通に銃刀法があるので武器は裸で持ち歩くことはできないように定められている。

だから、エミリさんの杖はゴルフバックに、小林さんの大剣はカバーが取り付けられている。


因みに僕のナイフは鞄にしまってある。

前回来た時、ゴーレムが想像以上に硬かった。だから今回は予備を含めて三本持ってきている。


マサトは拳闘士だから武器は使わないと思っていたけど、手袋みたいに薄いグローブを付けていた。


「マサト、それって武器になるの?」


僕が聞くと、マサトはニヤッと笑う。


「おう。魔物ぶん殴るんだから素手じゃ痛いだろ?」


「それはそうだけど…。」


「それにこのグローブには魔糸が組み込まれていて魔力の質で属性付与が出来るんだぜ?」


魔糸…魔石を粉々に砕き水に溶かし、繊維にしみこませて魔力を宿らせた糸のことだ。

魔石と同じでランクがあり、魔石の質が高ければ高いほど上質な糸を生成できるらしい。


この間の家庭科の授業がこんなところで役に立つとは思いもしなかったけど…。


それに属性が選べる魔石ってレアだったような…。


「…聞いていいなら聞くんだけど、それってもしかして高いやつ?」


「詳しくは言わないが、ミスリル装備の2段階ほど格下くらいだと思ってくれ。」


ミスリルほど高くはないけど、それに並ぶくらい高価な品物ってこと?学生で払えるものとは思えないのだけど…。


「今までのダンジョン探索の儲けをほとんど費やした上で交渉して何とか買えたんだよ…。」


そう語るマサトの背中には哀愁が漂っていた。


「だから、今日は稼がせてもらうぜ?リーダー?」


もう僕がリーダーで確定なのかな…?

エミリさんとかの方がいいんじゃないかな?頭いいし、魔法使いだから後方から全体を見渡せると思う。


「…リーダーと指令役は別ですよ?」


話を聞いていたエミリさんが割り込んできたようだ。


リーダーと指令役は別?

…何が違うんだろう?


「指令役は読んで字の如く、全体の状況把握を行い的確に指令を飛ばすことが役目になります。」


「…じゃあ、リーダーは?」


「リーダーとは、そのチームの中心です。」


…指令役と何が違うんだ?


エミリさんは小さくため息を吐いた。


「…本当に理解していなかったんですね。」


「ご、ごめんなさい。」


「別に謝る必要はありません。」


そう言いながらエミリさんは人差し指を立てる。


「…例えば、私が指令役をやるとします。」


「はい。」


「前方に魔物3体、右から1体接近、後方は安全の状況下で、小林さんは前衛維持、竜ケ崎さんは右を迎撃、貴方は支援、このように状況を整理して伝えるのが指令役です。」


…なるほど。

確かにそれはエミリさんの方が向いていそうだ。

頭も回るし、冷静だし。


「じゃあリーダーは?」


僕が聞くと、今度は小林さんが手を挙げた。


「は~い!」


「…なんで小林さんが答えるの?」


「なんとなく!」


なんとなくで手を挙げる人初めて見た。


「リーダーってさ~。」


小林さんは大剣を背負い直しながら続ける。


「みんなが迷った時に決める人じゃない?」


「決める人?」


「うん!」


マサトも腕を組みながら頷いた。


「例えばだな、ダンジョンでレア魔物見つけたとする。」


「は、はい。」


「追うか逃げるか、危険だけど奥へ行くか帰るか。」


「…はい。」


「誰かが怪我した時に探索を続けるか撤退するか。」


そこでマサトはニヤリと笑った。


「そういう時に最後に決断するのがリーダーだ。」


僕は少し考え込む。


…確かに指令とは違うみたいだ。

正解を言う人ではなく、責任を持って決断する人、そんな感じなのかな?


「でも僕、猶更そんなの向いてないと思うけど…。」


するとマサトが肩をすくめた。


「誰も最初から向いてる奴なんていねぇよ。」


「そうそう!」


小林さんも元気よく頷く。


「私なんて毎回勢いだし!」


「それは改善してください。」


エミリさんが即座に突っ込む。


「…それに、今回このパーティーを作ったのは貴方です。」


「え?」


「私に声を掛けたのも。」


「…。」


「竜ケ崎さんを誘ったのも。」


「…。」


「小林さんと話したのも。」


言われてみればそうだった。


「だから中心は自然と貴方になります。誰が一番強いかではありません。」


エミリさんは淡々と言う。


だけど、その言葉は妙に胸に残った。


「…分かった、どこまで出来るか分からないけど頑張って皆をまとめてみます。」


「えぇ、よろしくお願いします。」


…なんだろう、少しだけ恥ずかしいや。

でも不思議とリーダーを任せられることへの不安は霧散した気がする。


そんな時だった。


「おいおいおい。」


後ろから下品な笑い声が聞こえた。


振り返るとそこには五人組の冒険者がダンジョンの入り口に立っていた。


年齢は二十代くらいで装備はそこそこ良い。

だけど、その目つきがあまりよろしくは無いように見えた。


「見ろよ。」


「学生パーティーじゃねぇか。」


「しかも初心者っぽいな。」


男達はニヤニヤ笑っている。


その視線は僕達ではなく――


僕達の装備へ向いていた。


マサトの魔糸グローブ。


小林さんの大剣。


エミリさんの杖。


そして僕のナイフ。


値踏みするような目。

その目付きに途轍もない不快感を感じ僕は皆を背に隠す様に前に出る。


すると男の一人が笑いながら近付いてくる。


「なぁ学生さんよ。」


「…何ですか?」


「新宿ダンジョン初めてか?」


「まあ、そんなところです。」


嘘だ、他の皆は分からないけど僕はここに来るのは2回目だ。


でも、ここは初心者を装ったほうがいい気がしたから咄嗟にそう答えてしまった。


「だったら俺達が案内してやろうか?」


その男は笑っていた。


けれど目だけは笑っていない。

まるで獲物を値踏みするような目だった。

背筋に嫌な汗が流れる。


――あぁ、この人達は危ない。


そして僕はこの時に知った。


――金の亡者は、ダンジョンの中ではなく外にいるということを。


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