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現代冒険者のすゝめ ~高校受験に落ちた僕、冒険者になってみた!~  作者: あっかんべー


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第49話 友達と初めてのダンジョン探索

昔友達に新しい知識を教えたら、馬鹿にされたのを思い出しました…。

日が経つのが最近早い気がする…。

ニートをしていた時は、時間をあまり気にしていなかったけど、明らかに一日が短く感じる。


確かに勉強は苦手だけど、でもニート時代を経験してみると勉強が楽しさが分かった気がする…。


…あっ、苦手と楽しいって別なんだ、って思った。

授業は難しいし、訓練は辛い…宿題は面倒だったりするけど、もう手に入らないと思っていた生活はとても楽しかった。


そして、今日は約束の土曜だ。

何の約束かだって?


みんなで新宿ダンジョンに行こうって約束だ。

正直、武田先生とのダンジョン探索で記憶が飛びかけたけど、今週はこれを楽しみに待っていたんだ。


「アルト~!約束に遅刻するわよ~!」


1階から義母さんの声が聞こえてくる。


「は~い!」


慌てて返事をする。


義父さん達との関係もこの間の旧東京地下ダンジョン以来少しだけ近くなった気がする。


ダンジョンのおかげなのか、それとも学校のおかげなのかは分からないけど今のこの現状を大切にしていきたいな。



電車に揺られながら新宿に向かっていると、前の車両でエミリさんを見つけてしまった。


いつも見ている制服姿ではなく、探索用の服装をしている。


黒を基調とした動きやすそうな服に、膝当てや手袋までしっかり装備していた。


いかにも優秀な魔法職という感じだ。


武器である杖は、背負っているゴルフバッグのようなケースにしまっているのだろう。


お姉さんが渋谷区役所で働いているから、家ももしかしたら同じ地域なのかもしれない。


声を掛けるべきなのかな…。

いや、声を掛けたら迷惑かもしれない…。


「…貴方はそこで何をしているんですか?」


頭を悩ませていると誰かに声を掛けられた。

顔を上げると、呆れたような表情を浮かべたエミリさんが立っていた。


「あ…。」


思わず変な声が出てしまった。

エミリさんはより怪訝な顔をしてくる。


「いや、その…。」


「…そのなんですか?」


エミリさんがじっとこちらを見る。

その視線が痛い…。


「その、声を掛けようか迷ってました。」


正直に答えるしかなさそうだ。

変に誤魔化しても余計に怒らせてしまうかもしれないし…。


「…。」


エミリさんは数秒黙り込み、そして小さくため息を吐く。


…やっぱり怒らせてしまったのだろうか?


「…別に普通に話し掛けてください。」


「…え?」


「…今日は同じパーティーなんですから。」


そう言われると少しだけ嬉しくなる。


同じクラスではなく、同じパーティーと言ってくれたからだ。


「…はい!…じゃあ、おはようございます。」


「おはようございます。」


エミリさんは小さく頷く。


…うん。


会話が終わってしまった。


早い。


「…。」


「……。」


…気まずい。


ものすごく気まずい。


同じパーティー、クラスメイトなのに話題がない。


何か、何か話さないと――


「…しりとりでもしますか?」


「…貴方はバカですか?」


「……はい。」


自分でもそう思う。



そこからは、終始無言のまま目的地である歌舞伎町までたどり着いてしまった。


みんなはどこにいるのだろう…。


…いや、よく見ると歌舞伎町の入り口の前に小林さんとマサトがいた。


マサトが緑色のヒョウ柄みたいな服を着ているおかげですぐに見つけることが出来た。


「おう、おはようさん!」


「待ってたよ~!今日はいっぱい稼ごうね!」


小林さんは背丈に合わない大きさの大剣を背負っていて…いや、むしろ剣の方が小林さんより大きくないだろうか…?


こんな大きな剣をこの小さな女の子が振り回せるのか分からないけど、背負っている様子から無理をしている様子は感じられない。


…やっぱり僕にはナイフくらいが丁度いいや。

僕だったら数分持っているだけで腕が限界になりそうだ。


「おはようございます。」


「…おはよう。その、小林さんその剣重くないの?」


「あ~。」


マサトは納得したように頷く。


「初めて見る奴は大体そう言うんだよなぁ。」


「…だって絶対重いよね?」


「重いよ?」


小林さんはケロッと答えた。

やはり、重いものは重いんだ…。


「でも慣れれば振れるよ?」


「いや、慣れの範囲超えてません?」


「よく言われる~!」


小林さんは楽しそうに笑った。

僕よりも力持ちなのかもしれない…。



「あ、皆ご飯食べたかな?」


「いんや?まだ食べてないが?」


「私もですね。」


「コンビニで買おうかなって思ってた~。」


よかった、まだみんな何も食べていないようだ。

それなら、と僕はみんなに提案をする。


「ちょっとおすすめのお店があるんだけど行かない?」


少しでも安全に潜るためには、しっかりとした下準備をしておきたい。


「お、アルトのおすすめは気になるなぁ。」


「…新宿に来慣れているんですか?」


なんで、そこで僕に軽蔑の視線を送ってくるんですかね…。新宿に来たのはこれで2回目ですよ。


「どこか食べに行くの?行く行く~!あ、でも、安いところだと助かるなぁ…。」


「そこは大丈夫だよ、学生割が効くし。」


「おぉ~!じゃあ、行こ!」


小林さんは小柄なこともあって、もし妹がいたらこんな感じなのかなって思ってしまう。


そんなことを考えながら案内した先は歌舞伎町の奥地にある先日も訪れた喫茶店だった。


ここでバフを得てからダンジョンに潜った方が怪我のリスクを減らすこともできるだろう。


「ここです。」


「…喫茶店?」


エミリさんが僕が初めて来た時と全く同じ反応をしていて苦笑してしまう。


「ここはバフ効果がある食事を提供している喫茶店なんだ、だからダンジョンに入る前に来たかったんだ。」


僕はお店の扉に手を変えそのまま――


カランカラン~


「おう、いらしゃ――この間の少年じゃないか、また来てくれたのかい?」


店主のおじさんが豪快に笑う。


「はい。今日は友達と来ました。」


そう言って後ろを振り返る。

すると店主さんの視線がみんなへ向いた。


「ほぉ?」


その一瞬だった。


空気が少しだけ変わる。

普段は気のいい喫茶店のおじさんなのに、今だけは違う。


まるで品定めするベテラン冒険者みたいな目だった。


「へぇ。」


店主さんは小林さんを見る。


「嬢ちゃんは前衛か。」


「うん!」


「大剣使いか。面白いな。」


次にマサトを見る。


「拳闘士か盗賊系か?」


「お、分かります?」


「長年冒険者を見てりゃ分かるさ。」


そして最後にエミリさんへ視線が向く。


「魔法職だな。」


「…そうですね。」


「しかも若い連中では珍しい陣系魔法使いだな。」


エミリさんが少しだけ目を細めた。


「…何で分かるんですか?」


「顔だな。」


「…参考になりませんね。」


「はっはっは!」


店主さんは大笑いする。

そして、最後に僕を見る。


「んで、今日はお前さんがリーダーか。」


「…えっ?」


思わず変な声が出た。


「違うのか?」


「違いますよっ!?」


するとマサトが吹き出した。


「いや、でもアルトが誘ったんだし実質リーダーみたいなもんじゃね?」


「そうだね~。」


「…確かに今回の発案者ではありますね。」


…やめてほしい。

急に責任が重くなってくるからっ。


店主さんはニヤニヤしながら頷いた。


「まぁいいさ。」


そう言ってメニューを差し出してくる。


「この店に来たんだから、今日は新宿ダンジョンだろ?」


「はい。」


「ならお今日のすすめはこれだな。」


店主さんが指差したのは、


『マスターの今日のおすすめ』

【~冒険者モーニングセット~】

・攻撃力微上昇

・疲労耐性微上昇

・集中力向上


三つのバフ付き…。

値段はこの間十ねじで学生割引込みで500円。


「安っ!?」


小林さんが思わず声が出たようだ。

僕も前に来た時にまったく同じこと言ったからね…。


「学生応援価格だからな。」


「神じゃん。」


マサトが真顔で言った。


「俺もうこの店好きだわ。」


「まだ食べてないよ?」


「雰囲気で好きになった。」


「…男子は単純ですね。」


エミリさんが呆れている。

すると小林さんが元気よく手を挙げた。


「私それ三つ!」


「ダメだ。」


即答だった。


「えぇぇぇぇ!?」


店内に小林さんの悲鳴が響く。

店主さんは呆れた顔をする。


「嬢ちゃん、バフ飯は重ね食い出来ねぇ。」


「そうなの!?」


「むしろ食い過ぎると腹壊すぞ?ま、ダンジョンじゃなくてトイレに行きたいのなら止めはしないがな!ハハハ!」


「そんなぁ…。」


小林さんは本気で落ち込んでいた。

やっぱり妹みたいだなぁと思ってしまう。


そんな様子を見ながら、僕は少しだけ笑ってしまった。


――なんだか、それだけで少し幸せだった。


そして数十分後、バフ付きの朝食を食べ終えた僕たちは、ついに新宿ダンジョンの巨大なゲートの前へと立つのだった。


「よし!」


マサトが拳を握る。


「初パーティーダンジョンだな!」


「怪我しないようにね~!」


「気を引き締めましょう。」


そして皆の視線が自然と僕へ向く。


「田中アルト。」


「え?」


「行きましょう。」


エミリさんがそう言った。

僕は少しだけ笑って頷く。


「はいっ!」


――こうして僕たち4人の、初めてのダンジョン探索が始まった。


そして、この時の僕たちはまだ知らなかった…。

新宿ダンジョンの下層で、僕たちを待ち受ける出来事を――

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