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現代冒険者のすゝめ ~高校受験に落ちた僕、冒険者になってみた!~  作者: あっかんべー


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第48話 蘇生薬《エリクシル》

「ん…うぅ~ん。」


重たい瞼を薄く開く。


目の前に見えたのは、見覚えのある大きな背中だった。


揺れる視界。規則正しい足音。


どうやら誰かに背負われているらしい。


その感覚が妙に懐かしかった。


幼い頃、熱を出した僕を父さんが背負って家まで連れて帰ってくれたことがあった。


あの時と少しだけ似ていた。


「お、起きたようだね。」


聞き慣れた軽い声が頭上から降ってくる。


「あ…先生。」


「やぁ、おはよう。」


「す、すみません!降ります!」


慌てて声を上げる。


僕はもう子供じゃない。

先生に背負われるなんて恥ずかしすぎる…。


「そうかい?じゃあ降ろすね。」


先生はあっさりしゃがみ込む。


地面に足を付けた瞬間――


ガクッ。


「うわっ!?」


膝から崩れ落ちそうになる。


…身体が鉛みたいに重い?


「言っただろう?心威は疲れるって。」


先生はケラケラ笑っている。


笑い事じゃないですよ?


本当に全身が痛いし、むしろまだ生きているのが不思議なくらいだ。


そして、不意に、あの最後の言葉が頭をよぎる。


『ダンジョン賊と蛙、そして雛?は絶対に許すな。』


あれは何だったんだろう?未来の僕は、一体何を見てあの憎しみの目を向けていたのだろうか?


考えても答えは出ない。


今の僕には情報が少なすぎる…。


「まぁ、その辺は今考えても仕方ないさ。」


まるで心を読んだみたいに先生が言った。


「…え?」


「未来なんて変わるものだからね。」


先生はいつもの軽い口調だった。

だけど、その言葉だけは妙に重く聞こえた。


「それより!」


先生が懐から小さな瓶を取り出す。


透明な水晶瓶で中には金色の液体が入っていた。


それだけで空気が変わる。


「これを君に、あげるよ。」


「……はい?」


思考が止まった。


先生の手にある物と、自分の知識が結び付くまで数秒掛かった。


そして――


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」


思わず叫んでしまう。


「な、なななななっ!?」


「うん?」


「そ、それ蘇生薬エリクシルじゃないですかっ!!」


先生は不思議そうに首を傾げた。


「そうだね。」


そうだねじゃないですよ!?国宝級ですよ!?


世界に数本しか存在しないって言われてるやつですよ!?


僕の一年分の生活費とかそういう次元じゃない。

時価数百億の人を生き返らせる秘薬…。

その秘薬を求め国が動くレベルだ。


「いやいやいや!受け取れませんって!」


「今回は使わなかったし。」


「そういう問題じゃないです!…え、今回は?」


「じゃあ、使ったら受け取るの?」


「え、あ、いやいや、それはもっと嫌です!」


先生が楽しそうに笑う。


絶対面白がってる…。


「まぁまぁ。」


先生は僕の手を掴み、無理やり瓶を握らせた。


「未来への投資だと思って。」


「いやいやいや!」


「田中君なら無駄遣いしないだろうし。」


そんな理由で渡していい物じゃない。


「それにね。」


先生の声色が少しだけ変わる。


「君はこれから何度も無茶をする。」


「…。」


反論できなかった。


今回だって死にかけた。

ていうか、今回は先生のせいでは…?


先生は僕の頭を軽く叩く。


「だから保険だよ。」


その言葉に、なぜか胸が少し熱くなった。


「…ありがとうございます。」


「うん!素直が一番だよ。」


先生は満足そうに頷いた。


「じゃあ帰ろうか。」



その後、転移陣を使って地上へ戻る。


いつも帰ってきているのに、久しぶりに帰宅した感じがする…。


僕が玄関の扉を開けた瞬間だった。


「アルトっ!!」


聞き慣れた声が響く。


次の瞬間。


ぎゅううううっ!


「ぐぇっ!?」


義母さんに抱き締められた。


「よかったぁぁぁ…。」


「か、義母さん…苦しい…。どうしたの?」


「苦しいくらい元気なら安心だわ!先生に連れられて日本一危険なダンジョンに行ったって連絡を受けたのよ…黒澤さんから。」


理不尽だけど、少しだけ嬉しい気もする。

しかし、何で僕が旧東京地下ダンジョンに行ったことを黒沢さんが知っているんだろう…。

先生と黒澤さんは思っていた以上に繋がりがあるのかもしれない。


「おいおい。」


義父さんも苦笑している。

だけど、その目は少し赤かった。


「無事でよかった。」


たったそれだけの言葉だけど、僕の胸に刺さる。


…そうだ、僕は帰ってこなきゃいけなかったんだ。


そう、約束したのだから。


「…ただいま。」


僕が言うと、


「おかえり。」


義父さん達と記憶の中の父さん達が重なった気がした。


その瞬間、張り詰めていたものが全部切れた。


心威の疲労なのか、安心したからなのか、自分でも分からないけど、気付けば僕は義父さん達に寄り掛かっていた。


「…アルト?」


「ちょっとだけいい?」


「どうした?珍しいな?…おいで?」


恥ずかしい…本当に恥ずかしい。

僕はもう子供じゃない。


でも――


「ちょっとだけ、このままで。」


義父さんは何も言わないまま、ただ黙って頭を撫でてくれた。


まるで幼い頃父さんがやってくれたみたいに。


その温もりが妙に心地良くて、僕は少しだけ目を閉じた。


すると反対側から義母さんがそっと肩を抱いてきた。


「いっぱい頑張ったのね。」


その一言で。


胸の奥に溜め込んでいた何かが崩れそうになった。


「……うん。」


父さん…母さん…僕頑張ってるよ…。

今度ずっと行けていなかったお墓参りに行くから、その時にたくさん話したいことがあるんだ。


冒険者になったこと。


大切な友達ができたこと。


先生がとんでもなく無茶苦茶な人だったこと。


そして――


僕が、少しだけ強くなれたこととか。


まだまだ話したいことはたくさんあるけど、それはお墓参りの時に話すね。


だから、もう少しだけ見守っていてね。

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