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現代冒険者のすゝめ ~高校受験に落ちた僕、冒険者になってみた!~  作者: あっかんべー


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第42話 ヒナとダンジョン探索 終

「…二人とも今日の所はここまでにして引き返さないかしら?」


サクラさんがセーフエリア奥の通路に顔を向けながら僕とヒナさんにそう言ってきた。


「え?」


思わず聞き返してしまう。


まだ休憩したばかりだし、時間にも余裕はあるし、それに今日は中層を目指す予定だったはず…。


「どうしたの?」


ヒナさんも首を傾げているようだ。


するとサクラさんは小さく息を吐いた。


「…嫌な予感がするのよ。」


「嫌な予感?」


「…えぇ。」


サクラさんの視線は奥の通路へ向けられたままだった。


「根拠はないわ。」


そう前置きしてから続ける。


「でも、こういう勘は意外と当たるのよ。」


周囲を見渡してみる。


相変わらず冒険者たちは休憩している。


騒ぎもない。


魔物の気配もない。


危険そうなものは僕から見て何一つ見当たらなかった。


だけど――


サクラさんの表情は真剣だった。


少なくとも冗談を言っている顔ではない。


「う~ん…私は賛成かな。」


「…ヒナさんもですか?」


「うん。」


ヒナさんは苦笑した。


「それに、今日は特殊個体の宝石ゴーレムと戦ったしね。」


「…。」


「十分すぎるくらい成果はあるよ?」


確かに、あの戦闘だけでもかなり消耗している。


僕自身、まだ腕に力が入りづらかった。


「そ・れ・に!」


ヒナさんが声を落とした。


「サクラの勘は結構当たるんだよね。」


「…それ、褒めてるのかしら?」


「褒めてる褒めてる!」


そのやり取りを見ているうちに、少しだけ肩の力が抜けた。


「…分かりました。」


僕は頷きヒナさん達に従うことにした。


「じゃあ今日は戻りましょう。」


「決まりね。」


サクラさんが立ち上がる。


その瞬間だった。


セーフエリアの入口付近で、誰かがこちらを見ているのが見えた。


黒い軽鎧の男…先程の冒険者だ。


男は僕たちが立ち上がったのを見ると――


僅かに目を細めた。


そして何事もなかったかのように視線を逸らした。


「…?」


違和感を覚えた時には、男は既に人混みの中へ紛れていた。


…気のせいだろうか?


そう思いながらも、僕は視線を外した。


胸の奥に残った小さな不安だけは、最後まで消えなかった。



セーフエリアを出た僕たちは、そのまま地上へ戻ってきた。


外は夕方になっていたらしく、西日が高層ビルの窓ガラスに反射している。


地下の幻想的な景色を見た後だからだろうか。


見慣れたはずの新宿の街並みが少しだけ眩しく感じた。


「ふぅ~。」


ヒナさんが大きく伸びをする。


「やっぱり外の空気はいいね~。」


「ダンジョンの中も空気は悪くないはずなのだけどね。」


「それは気分の問題よ。」


「それでも外に出たぞ~!って感じがするじゃん!」


二人のやり取りを聞きながら僕も空を見上げる。


無事に帰って来られた。


それだけで少し安心する。


今日はカーバンクルとも戦って、宝石ゴーレムとも戦った。しかも特殊個体だ。


思い返すだけで胃が痛くなりそうだった。


「アルト君。」


「はい?」


「新宿ダンジョン初探索お疲れ様!」


ヒナさんが笑顔を向けてくる。


「本当に頑張ったと思うよ?」


「そうね。」


サクラさんも頷いた。


「少なくとも私が想像していたよりずっと動けていたわ。」


「そ、そうですか?」


思わず聞き返してしまう。


正直、自分では失敗ばかりだった気がしている。


カーバンクルの時も。


宝石ゴーレムの時も。


もっと上手く立ち回れたんじゃないかと思ってしまう。


「そうよ?むしろ初日で特殊個体の弱点を見抜いたのじゃない。それに今のアルト君は、万全な状態ではないんだからここまでできれば十分よ。」


「…あれは偶然ですよ。」


「偶然でも気付いたのはアルト君。初心者でなかなか出来ることではないわ。」


ヒナさんが笑う。


「気付かなかったら今頃私たち全員もっと苦戦してたと思うよ?」


そう言われると少しだけ嬉しかった。


「…その、ありがとうございます。」


自然と頭を下げる。


するとヒナさんが慌てたように手を振った。


「アハハ!お礼言われることじゃないよ!」


「そうね。」


サクラさんも小さく笑ているようだ。


「今日はパーティーとして戦った結果よ。」


パーティー、か…。


前の僕なら同行者くらいにしか思えなかったけど、最近心の余裕が出てきたのか視野が少し広がった気がする。


それに、まだ冒険者として見習い同然の上、色々と制限がある僕のことをパーティーの一員と呼んでくれるのはこそばゆいけど、なんだろうか、その…正直嬉しい、のかな。


「じゃあ今日は解散にしましょうか。次回の探索はまた予定を合わせて、ね。」


「うん、そうしよっか!」


ヒナさんが頷く。


そして――


「じゃあ、次は今度こそ中層攻略だね!」


その言葉に僕も自然と笑っていた。


「はい!」


新宿ダンジョンは通いなれた渋谷ダンジョンとは違い人の目も多くて、魔物の行動パターンも全然違う。


不安がないわけじゃないし、恐怖心も無いと言ったら嘘になる。


でも、あの綺麗な景色を思い出すと冒険者たちが冒険をする理由がなんとなく分かった気がする。


…今日ヒナさん達と潜っていてよかった。


次の探索はマサキたちとすると思うけど今日の経験を活かせられるといいな…。


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