第40話 ヒナとダンジョン探索 4
「っと、まぁこんな感じだな。じゃあこいつは貰っていくぜ?」
「はい、ありがとうございます。」
「坊主たちはどこまで潜るんだ?」
「え~と、今日は中層まで行けたらと考えています。」
「なら宝石ゴーレムには気を付けろ。」
「宝石ゴーレムですか?」
「あぁ、宝石ゴーレムは硬い上に反射持ちの特殊個体も出てくるって話だ。」
「反射?」
「魔法を跳ね返す個体がいんだよ。ま、程ほどに頑張れよ!じゃあな!」
強面の冒険者は気絶したカーバンクルを肩に担ぐ。
カーバンクルは最後まで目を回したままだった。
…少しだけ申し訳ない気持ちになる。
「アルト君。」
「はい?」
「あんまり気にしちゃダメだよ?」
ヒナさんが苦笑する。
「冒険者だもんね。」
「…はい。」
僕は小さく頷いた。
そして二人の方へ向き直る。
「それで、聞いた情報なんですけど、この先の階層も見た目はあまり変わらないそうです。ただ、出てくる魔物と階層ギミックが違うらしくて。」
「ギミック?」
「はい。」
僕が頷くとサクラさんが興味深そうに続きを促した。
「具体的には?」
「第二階層から宝石ゴーレムが出るみたいです。」
「あ~、やっぱり。」
ヒナさんが納得したように頷く。
…知っていたのかな?
「…あと、壁に埋まっている宝魔石にも注意しろって言われました。」
「宝魔石を?」
「はい。場所によっては急に強く光ることがあるそうです。」
「あ~それはおそらくそれはトラップのことね。」
サクラさんが即答した。
やっぱり知っているんだ…。
「…トラップなんですか?」
「えぇ、そうね例えば――」
サクラさんは壁の宝魔石を指差した。
「このダンジョンの宝魔石は光属性の魔力を一定量溜め込む性質があるの。」
「一定以上の蓄積すると?」
「こうなるわ。」
パチンッ!
サクラさんが宝魔石を指で弾いた。
次の瞬間――
ピカッ!
「うわっ!?」
思わず顔をしかめてしまう。
目の前が見えなくなってしまったが、ヒナさんが目薬を渡してきてくれたのでそれを差す。
…いきなり、酷いですよ…。
「…目くらましってことですか?」
「アハハ、そういうこと!」
「初心者だとそのままパニックになる人もいるよ。」
ヒナさんが肩を竦めた。
「そこを魔物に襲われたりね。」
なるほど…確かに危険だ。
綺麗だから安全そうに見えるけど、ダンジョンはやっぱりダンジョンなんだ。
「あっあと、ゴーレムの中には魔法反射を持つ個体がいるそうです。」
「それが一番厄介かな。」
やっぱり、経験豊富なヒナさん達でも宝石ゴーレムは厄介なようだ。
「…サクラ。」
「えぇ、そうね。」
二人が視線を合わせた。
「もし反射個体が出たら私が前に出るわ。」
「うちは援護だね。」
相性の問題か。
サクラさんは氷魔法主体だし、もし魔法を反射されたら危険だ。
「アルト君も気を付けてね?」
「はい。」
「反射個体に魔法を撃ったら。」
ヒナさんが笑顔で言った。
「そのまま自分に返ってくるから。」
「えっ!?」
思わず声が裏返ってしまった。
そんな会話をしながら僕たちは第二階層へ続く坂道を下っていく。
すると――
カンッ!
どこかで硬いものを叩く音がした。
採掘の音?
そう思った次の瞬間――
ドゴォン!!
地面が揺れる。
「なっ!?」
「…戦闘音ね。」
ヒナさんが即座に周囲を警戒する。
通路の先、曲がり角の向こうから数人の冒険者が慌てた様子で走ってきた。
「逃げろ!」「反射個体だ!」「魔法が効かねぇ!!」
その叫びと同時に曲がり角の向こうから、巨大なエメラルド色の人影が姿を現した。
全身が宝石でできた三メートル近い巨体、胸部では眩い緑色の核が脈動している。
「…。」
「…。」
「アルト君。」
ヒナさんが苦笑した。
「どうやら予習の時間は終わりみたい。」
噂をすればなんとやら本当に出てきてしまった…。
◇
ヒナさんが苦笑した瞬間。
宝石ゴーレムがこちらを向いた。
ギギギギッ――
巨大な身体が軋んで洞窟内にその音が反響している。
そして緑色の瞳が光った。
「来るよ!」
それは、ヒナさんの声と同時だった。
ドォン!!
宝石ゴーレムが地面を蹴る。
なんだ!あの巨体とは思えないスピードはっ!
「速いっ!?」
思わず口からも漏れてしまう。
三メートル近い身体なのに、エミリさんの魔法並みに速い…っ!
「サクラ!」
「分かってるわ!」
サクラさんが前に出ていき白銀色の魔法陣が展開された。
「氷壁」
ガガガガガッ!っと地面から氷の壁が生えた。
…だけど、宝石ゴーレムは止まらない…。
拳を振り上げ――
ドゴォォン!!
氷壁を一撃で砕いた。
「そ、そんなっ!?」
「硬いだけじゃなくて力も強いのよ!」
サクラさんが舌打ちする。
しかし、その隙にヒナさんが駆けていた。
火球が宝石ゴーレムの脇腹に至近距離で叩き込まれる。
豪炎にして轟音。
しかし――
「硬っ!」
ゴーレムは数歩よろめいただけで効いていないようだった。
でも、反射はされていなかった、どうして?反射する特殊個体じゃなかったのだろうか…?
それでも、2階層でこの強さの魔物が出てくるなんて…。硬さも以前戦ったアイアンゴーレムの比じゃないみたいだ…っ。
「これだから嫌なのよ!」
ヒナさんが距離を取る。
しかも、確認は取れていないがこれに魔法反射まで付いていると先程すれ違った冒険者が言っていた。
その時だった。
サクラさんが氷槍を生成する。
「…一応もう一度試すわ。」
放たれた氷槍が一直線に飛ぶ。
そして――
キィィィン!
宝石ゴーレムの胸の核が光った。
「えっ?」
氷槍が空中で反転する。
「サクラ!」
ヒナさんが叫ぶ。
ドゴォォン!!
サクラさんの足元で氷槍が炸裂した。
氷の破片が飛び散る。
「っ!」
サクラさんが後方へ跳ぶ。
…今回は無傷だったけど、今のは危なかった…っ!
「今度は跳ね返された…?」
思わず呟く。
冗談じゃなかった。
あれは本当に魔法を反射している。
すると、宝石ゴーレムが今度はこちらを見た。
緑色の瞳が僕を捉えている。
「アルト君!」
ヒナさんの声。
ゴーレムの腕が振り上がる。
まずい、速い…っ!
いや、避けられる――!
僕は横へ飛ぶ。
直後――
ドゴォォン!!
さっきまで立っていた場所が石片が飛び散り地面が沈んでいた。
「危なっ…!」
その瞬間、僕は違和感を覚えた。
…胸の核が攻撃する瞬間だけ一瞬光が強くなっている?
「…?」
僕はゴーレムの動きを目で追った。
拳を振るう。
そして。
やっぱりだ…。
核の輝きが変化している。
反射も攻撃も全部あの核が制御しているんだ…!少なくとも、ただのアイアンゴーレムみたいに自動って感じで動いているわけじゃない。
「ヒナさん!」
「な、なに!?」
「胸の核です!」
「核?」
「攻撃の瞬間だけじゃなくて、反射するときも光ってました!」
「…つまり?」
「多分、反射も攻撃も全部あの核が制御してるんです!」
ヒナさんが目を見開く。
そして次の瞬間ニヤリと笑った。
「なるほどね!」
炎が爆ぜる。
「サクラ!」
「分かったわ!」
二人が同時に動いた。
どうやら何か作戦を思いついたらしい。
面白いと思ったら、コメント、フォロー、評価をお願いいたします!
とても、励みになります!




