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現代冒険者のすゝめ ~高校受験に落ちた僕、冒険者になってみた!~  作者: あっかんべー


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第39話 ヒナとダンジョン探索 3

ダンジョンの中に入った僕はつい立ち止まってしまった。


渋谷ダンジョンとは全然違う…。


渋谷ダンジョンは、THEダンジョンって感じだったのに対してこちらの新宿ダンジョンはダンジョン全体がキラキラと輝いていて目が痛いくらいだった。


それに、ダンジョンと言えば薄暗いものだと思っていたのにパンフレットに書いてあった通り昼間のようにとても明るい…。


…だけど、人が多すぎてムードはあまり感じなかった。


入り口付近の人たちは討伐ではなく、壁の宝石目当てで来ているようだった。


カンッ!カンッ!


あちこちから金属音が聞こえる。


冒険者達はツルハシや専用の採掘道具を使い、壁に埋まった宝魔石を掘り出していた。


「…うわぁ~。」


思わず声が漏れてしまう。


…ダンジョンというより鉱山みたい。


「びっくりした?」


ヒナさんが笑いながら話しかけてくる。


「はい…。」


想像していた景色と全然違った。


もっとこう、魔物と戦う場所だと思っていたのに。


「新宿ダンジョンは採掘目的の人も多いからね。」


「なるほど…。」


よく見ると武器よりも採掘道具の方が立派な人までいる。


中には魔物と戦うためではなく、宝石を掘るためだけに来たような人もいた。


「ちなみに。」


サクラさんが壁を指差した。


「見えている宝石の九割以上は偽物よ。」


「偽物?」


「魔力の結晶体で、綺麗だけど価値は安いわ。」


「えっ。」


思わず壁を見る。

確かに赤や青や緑の宝石が無数に埋まっている。

それだけでも十分価値がありそうなのに。


「本当に価値があるのは天然宝石だけで。」


ヒナさんが続ける。


「ダイヤとかルビーとかサファイアとかね?」


「…見分けられるんですか?」


「無理だよ?」


「無理なんですね…。」


「だからみんな掘るんだよ。」


なるほど、掘ってみるまで分からない。

つまり宝くじみたいなものか。


ギャンブルみたいに変に中毒性とかないといいのだけど…。


「でも、初心者が採掘に夢中になると危ないからね?」


「危ない、ですか?」


「魔物に襲われるからね。」


そう言われて周囲を見る。


確かに入口付近には警備の探索者が配置されていた。


だけど奥へ行けばそうはいかないだろう。

宝石に夢中になっていたら背後から襲われる。


…十分あり得る話だと思う。


「アルト君、今日はまず新宿ダンジョンの雰囲気を覚えること!」


「はい。」


「それから魔物の特徴を覚えていこう。」


「はい。」


「あと無茶も禁止!」


「はい。」


「絶対だからね?」


「…善処します。」


「だから善処じゃないの!」


ヒナさんのツッコミが響き、サクラさんが小さく笑った。


その時だった。

通路の奥で何かが光った。


キラリと。


まるで宝石が歩いているような光。


「あれは…?」


「カーバンクルみたいね。」


サクラさんが即答する。


そして次の瞬間、宝石のような赤い瞳を持つとても愛くるしい小動物が、通路の奥から姿を現した。



周囲の空気が変わった。


「おい!カーバンクルだ!」


「いたぞ!」


「逃がすな!」


「「「ヒャッハー!」」」


えっ!?


僕は驚き後ろを振り返る。

するとさっきまで採掘していた冒険者たちがつるはしを片手にカーバングルに突撃していく。


「な、何がっ!?」


「…カーバングルの額に赤色の水晶があるのは見える?」


僕は冒険者たちから逃げ惑うカーバングルを凝視する。


カーバングルは青色の体躯に赤色の瞳をしていた。

そして、瞳の色に負けないほど赤い宝石みたいなものが額に嵌っていた。


「…見えましたけど、あれは?」


「見たまんまよ。」


サクラさんが冒険者たちを眺め肩を竦める。


「あの額の結晶は基本的には魔石なの。」


「基本的には?」


「たまにルビーやガーネット、極稀に高級宝石になっていることがあるの。」


「えっ。」


「だから新宿の冒険者はカーバンクルを見ると目の色が変わるのよ。」


可愛い魔物だからじゃなかったのか…。

…大人の冒険者に囲まれ少し可哀想に見える。


「…甘いわね。」


「えっ?」


「あの子たち、普通に人を殺すわよ?」


あんなに愛くるしくて可愛い生き物が人を殺す…?

想像が出来ない…。


「…見た目に騙されちゃいけなわよ。あいつらは近寄った人の頸動脈を的確に狙ってくるんだから!」


ヒナさんの方を見るとヒナさんも頷いていた。


そう、なのか…。

…そうだよね、魔物だもんね…。


僕も戦闘に混ざるべきか迷っているとヒナさんに止められた。


「それはダメだよ、アルト君。」


「…どうしてですか?」


「ピンチならまだしも、基本的には冒険者ルールがあって魔物の横取り防止法があるからね。」


「…よ、横取り!?僕はそんなつもりは――」


「相手がどう思うかって話だよ。特にカーバングルみたいな魔物だと争いが起こりやすいから気を付けてね?」


「…すみません、気を付けます。」


なるほど、手伝いのつもりでやったことが横取りって認識された時点でダメってことか…。


あっ、カーバングルが冒険者から逃げきってこっちに向かってくるっ!


「…っ!ヒナさんこれはっ!?」


「こういう場合は、うち達で討伐して良しっ!いくよ!」


冒険者たちは悔しそうにこちらを見てくる。

カーバングルは逃げ足がとても速くジグザグに走ったり壁走りをして僕たちからも逃げようとしている。


右に行ったり、左に行ったりジグザクと。


そして――正面に来たっ!


「そこだっ!」


武田さんとの訓練で嫌というほど見た動きだった。


僕は飛び出すのではなく、カーバンクルが飛び込んでくる位置へ先回りする。


ゴッ!


ナイフの柄が額の横を打ち抜いた。


「キュッ!?」


カーバンクルは目を回しながら床を転がった。


…やっぱり可愛い魔物は動物に見えてしまい殺せなかった…。


カーバングルはそのまま倒れ気絶した。


「…気絶させただけ?」


ヒナさんが瞬きをした。


「アルト君、倒したのに殺してないの?」


「そ、その…可哀想で。」


「…本当に甘いわね。」


サクラさんは呆れたように息を吐く。


「でも、アルト君らしいかも。」


ヒナさんは笑っているみたいだ…。

マグマトードの時を思い出してしまうが、これはこれで使い道がある。


「…あ、あのっ!」


「あぁ?なんだ坊主?あぁん?」


そう、僕は先程までカーバングルと戦っていた冒険者さんの方に話しかけた。


さっきからこっちを睨んできていた視線をより一層強くしてこちらを睨んでくる。


…怖い。


「…その、このカーバングルを譲るので、その…この先の情報を教えていただけないでしょうか?」


「はぁ?」


男は露骨に眉をひそめた。


「情報だと?」


「は、はい。」


「坊主、カーバンクルの価値知ってんのか?」


「え?」


「下手すりゃ数十万だぞ?」


「そ、そうなんですか!?」


数十万。


一瞬だけ頭が真っ白になってしまう。


僕のお小遣いなら何年分になるんだろうか…。


だけど――


改めて気絶しているカーバンクルを見る。


…無理だぁ、どんなに高価でも僕にこの子を殺すことなんてできない…。


「…そ、それでも情報とこ、交換して頂けませんでしょうか?」


「…本当にいいんだな?」


「…は、はい!」


「乗った!トレード成立だな!」


冒険者の男はニヤリと笑い握手を求めてきたので僕も差し出された手を握り返した。


「…ヒナさん、サクラさん勝手にごめんなさい…。」


そうこれは僕の独断で行ったことだったのでヒナさん達に謝罪した。


「まぁ、アルト君が倒したものだし~?好きにすればいいと思うよ?…それに、うちは嫌いじゃないよ?そういうところ。」


ヒナさん…。


「…甘いのは減点ですが、情報を対価にしたのは悪くないですね。」


…サクラさんは相変わらず厳しいけどこれが普通の冒険者としての判断なのだろう。


…みんなこんな可愛い生き物をそんな簡単に殺せるものなのだろうか…。


僕にはまだ分からない…。


だけど、冒険者ならきっといつか向き合わなければいけない問題なんだろう。

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