第4話 装備調達とダンジョンへの再アタックの理由を知った少年
冒険者登録を終えた僕たちは装備を整えるためにショップを探した。
「アルト君はどんな装備がしたいの?」
「特に考えているわけではありませんが、やはり剣がいいかと考えています。」
「ふふふ、男の子なんだね!」
「……。」
どこに何を感じたのだろうか。
しかし、ダンジョンが出来て以来ショップは数多くできた。
どこのお店を見ればいいのだろうか。
「ヒナさんのお勧めはありますか?」
「ん~、私は高校で安く買っているからなぁ。実は、ショップとかはあまり詳しくないんだよね……。」
「……。」
高校か……。
僕は高校受験を失敗している。
だから、高校のシステムをあまり詳しく知らない。
そういえば、昨日ダンジョンで会った時ヒナさんは制服を着ていたのを思い出した。
「そういえば、アルト君はどこの高校に通っているの?」
「…通っていません。受験落ちたので……。」
「……ご、ごめん。あっ、でも、私の冒険者学校なら途中入学とかできるよ?」
「……えっ、そうなんですか?」
高校生活ができるかもしれない……。
何か期待していたわけじゃないが、去年受験に失敗したときに諦めた生活……。
「でも、僕…Dサバイバーですよ…?」
「えっ、そんなこと関係ある?」
「……だ、だから、僕はDサバイバーなんですよ?」
「……?だから?」
ヒナは当たり前のようにそんなこと言う。
だから、僕は最初何を言われたのか分からなかった。
初めて言われた。
中学の時は、目が紫色だったことでDサバイバーだとバレて周りから人が消えた。
こいつの近くにいるとD災害に巻き込まれるかもしれない、と。
同級生のみならず、先生たち大人も僕を避けていた。
だから、高校への進学も義父さんたちが行った方がいいと強く言われたから受験をしただけだったし、高校生活に何か期待をしていたわけじゃない。
だが、叔父夫婦以外で僕に優しく語りかけてきた人が現れた。
しかも、今、目の前に。
「ぼ、僕が高校に通えるかもしれない…?」
「え、あ、うん!試験とかはあるけど、実績さえあれば確か免除された気がするよ!」
「……。」
「え、え、どうしたの!?何か変なこと言っちゃった、私!?」
「へっ?」
「…泣いてるよ、君?」
僕はそう言われ頬を触れる。
両の目から涙が溢れ頬が濡れていた。
あ、あれ、何でだろう。
僕は責められたわけでもないし、悲しいわけでもない。
何度も言うが、特別高校に行きたかったわけでもない。
……そうか。
……僕は、誰かにDサバイバーでもいい、と認められたかったのかもしれない。
だから、僕は昨日助けたヒナに誘われて今日来た。
だから、僕は冒険者登録の時に受付嬢にDサバイバーだと言われた少し慌てた。
だから、…僕は、今泣いている。
「うぅ……。」
「え、え、どうしよう……。」
「い、いえ…大丈夫です。ありがとうございます。」
「そ、そう?」
「…はい」
しまった。
いきなり泣いてしまって、変な奴だと思われたかもしれない……。
僕は、少し落ち着きヒナの方を見る。
彼女は、心配そうにこちらの様子をうかがっていた。
離れていきそうな気配は特に感じない。
どうして、この人は離れていかないのだろうか?
「……ヒナさんはどうして、僕と一緒にいてくれるんですか?」
「えっ?う~ん。……言っても怒らない?」
「……はい。とりあえず、教えて頂けませんか?」
「……うち、渋谷ダンジョンの三層のボスを訳あってずっと倒したかったんだ。半年間、強くなろうと思って配信続けて、でも届かなくて…。昨日助けてもらった時に君となら行けるかもしれないって思って…。私的理由でごめんね?……やっぱり、怒る?」
「……いいえ、怒りません。」
打算があったとしても、僕といてくれる変わり者は見たことがない。
どんな人でも、僕の目と過去のことを知ると離れていった。
だから、僕から人に関わることを諦めた。
たとえ打算であっても僕のことを望んでくれているのならこの人の力になってあげたい、それに――
「……第三層のボスを倒せれば途中入学の実績になりますか?」
「……っ!ボスを倒せれば確実に実績にカウントされると思うよ!」
「……倒します。」
「えっ?」
「ヒナさんと一緒にボスを倒します。」
「いいの!?」
「僕でよければ、ヒナさんの力になりたいです。」
「ありがと~!」
そう言って、ヒナさんは僕に抱き着いてくる。
恥ずかしがったが、僕はこの温もりを放したくなくて、黙ってされるがままにされた。
◇
「…とりあえず、装備を整えよっか!」
「…そうでした。どこのショップがいいですかね?」
「うーん。規格品とジャンク品でお宝探しどっちがいい?」
「……とりあえず、規格品があるお店を見てみてもいいですか?」
「おっけ!じゃあ、行ってみようか!」
僕たちは、渋谷の大通りに面したショップに入ろうとした。そしたら、若い女性の店員らしき人が出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ!整理券はお持ちですか?」
「えっ、整理券ですか?」
「…お持ちでないようですね。本日お客様が多く整理券を配布させていただきました。大変申し訳ないのですが、お待ちいただくか、後日でのご来店をお願いいたします。」
平日なのにお店は満員のようだった。
このお店は、大通りに面しているので人の出入りが多いようだ。
「あちゃ~、まぁ、仕方ないよ。ジャンク屋さんの方に行ってみよ?」
「…分かりました。ありがとうございます。」
「申し訳ございません。またのご来店お待ちしております。」
その後、大通りのお店を後にした僕たちは渋谷の裏通りを歩く。
これといって目に付くお店が見つからない。
僕たちは更に奥の方へと進んでいく。
「おい兄ちゃん、冒険者か?」
声がする方を見るとそこにいたのは、20代半ば程のがたいのいい男がいた。地下へと続く階段があり表に出ている看板にもたれかかりながらこちらを見ていたようだ。
「…はい、先程冒険者になりました。」
「…ち、ちょっと、あれは無視しといた方がいいんじゃない?」
ヒナがアルトに小さく呟く。
しかし、アルトは話しかけられたので声を返してしまった。
「ほ~、道理で装備をしていないわけだ。じゃあ、今は装備を探しているってところか?」
「…そうなりますね。」
「さてはお前、大通りの店に入れなかったくちか。」
「……。」
「いやぁ、お前は運がいいぞ?俺に話しかけられたんだからな!ガハハハハ!」
男は笑いながらも、こちらを見て品定めをするように頭から足先までを見てくる。
「よし!俺の店に来い!元々シルバーアクセサリー屋だったんだが、最近武具の制作をしてんだ。」
男はそう言って階段を一人下りていく。
どうすればいいか分からず立ちすくんでいると、
「…今のうちにここから離れよ?」
「えっ、いいんですか?あの人、来いって言ってましたよ?」
「おバカ!あんな怪しい人についてっちゃダメでしょ!」
確かに怪しい男だった。
見るからに若い男女に声を掛けてくる男……。
時代が時代なら通報されていたかもしれない。
だが――
「…いいお店も見つからなかったのでついて行ってみませんか?」
「えぇ~、まぁ、アルト君が言うなら……。」
そういって、僕たちは男の後についていき階段を下りた。
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