第3話 冒険者制度と僕のカード
「では、冒険者制度について説明させて頂きますね。」
「お願いします」
まず、冒険者にはランクがあります。
一番下がFランクから一番上がSランクになります。
一番最初は絶対にFランクから始まります。特例等はございません。
ランクの上げると斡旋の報酬額が上がったり、納税額を減税できたりします。凄い人だと国から依頼が来る冒険者もおります。
頑張って、ランクを上げましょう!
次に、ダンジョンの階層によっては、冒険者の安全を最低限守るために難度証明書の証明が必要になる場合がございます。
こちらは、ランクと試験官との模擬戦で判断を下します。
ここから一番近いダンジョン、渋谷ダンジョンでは3階層から難度証明書が必要になります。
難度証明書がない場合、区域内の怪我は保険の適応外となってしまいますのでご注意ください。
次に、スキルについての説明を行わせて頂きます。
冒険者登録を行ってからすぐに自分のスキルの確認を行うことができるようになります。
確認のやり方は、これから発行されます冒険者カードに血を一滴たらしますとカードが田中様専用のものとなります。
カードには、田中様のスキルが表示されるようになりましたら完了です。
「では、これからカードの方発行いたしますので、もう少々お待ちください。」
「あ、はい」
そういって受付嬢は席を立ち、奥の方へ消えていった。
彼女が消えた後に隣に座っていたヒナがアルトに話しかけてきた。
「…で、なんで昨日、難度証明書が必要な3層にいたの?」
気を使っているのか、ヒナの声は小声で耳打ちするように話しかけてくる。
「…思いの他探索が捗ってしまって…そしたら、悲鳴が聞こえてきて、気付いたら走ってました…。」
「ふーん。…これから、難度証明書を取得するんだよね?」
「…その予定です」
確か難度証明書に必要になるのは、ランクと実技試験だっけ。
渋谷ダンジョンのはランクいくつまでが必要になるのだろうか。
「そういえば、ヒナさんはランクいくつなんですか?」
「私はねぇ、なんとDランクです!」
ヒナは自分でドラムロールを言いながらランクを教えてくれた。
実際、先程の説明でもそうだがランクによって強さがどれほど違うのかは現在は分からない。でも、昨日の魔物位ならば問題ない気もしている。
「田中様、お待たせしました。カードを発行してまいりました。」
受付嬢がカウンターに戻ってきた。
彼女の手にはトレイがあり、トレイの上に自分のものになると考えられるカードが置かれていた。
これから、これに血を垂らすのか……。
「では、こちらのカードに血を一滴いただきますね。」
「…はい。」
彼女は袋に梱包されていた待針ほどの大きさの針を開け取り出した。
血か……。痛いのだろうか……。
「……自分でやるのと、私の方でやるのどちらがいいですか?」
受付嬢がこちらの状況を察して提案をしてくれた。
「い、いえ、自分でやります。」
「フフフ、はい、こちらをどうぞ。」
「……。」
僕は渡された針をゆっくり自分の指に近づけ……刺した。
指したところからは、ゆっくりと血が滲んでくる。
そのまま指をカードに押し付けた。
「……はい、大丈夫そうですね。このまま1分程お待ちください。」
僕は手渡されたティッシュで指を抑え時間を待つ。
でも、これで僕も冒険者だ……。
中学生の時、周りの奴らは将来冒険者になって一攫千金を狙う!、って言ってたっけな…。まさか自分の方が早く冒険者になっているとは思わないだろう。
「…問題なくカードに記載が行われたようです。おめでとうございます、これで田中様も本日より冒険者となります。」
「ありがとうございます。…カード見てみてもいいですか?」
「はい、問題ございません。是非スキルを確認してみてください。運がいいと元々持っている人もいるそうですよ?」
そうなのか、まぁ、僕は1回ダンジョンに入っているし、もしかしたら何かあるかもしれないな。
「アルト君おめでとう!カード私にも見せて~!」
「……。」
僕はカードの個人情報欄にあったスキルの欄を見て固まる。
「どうしたの?あっ、もしかして何もなかったのかな~?でも、これからだと思うよ?」
「……。」
そう言って、ヒナが僕のカードをのぞき込んでくる。
「…ナニコレ?」
ヒナも見るのが初めてだったのか言葉が片言になっている。
~田中 アルト 16歳~
加護 :天照大御神
スキル:?????の記憶(解放率5%)
…加護とは?…スキル欄の?は何だろうか?
解放率が書かれていることからこれから成長するんだと思うんだけど。
ヒナも硬直しているから、きっと知らないのだろう。
こうなると、目の前にいる受付嬢に聞くしかないんだろうけど、これは、聞いても問題ないんだろうか?黙っているべきだろうか……?
「……。」
「…いかがいたしましたか?何か問題でも?」
考えていたら彼女が話しかけてくる。
…話そう、正直にでないときっと何も分からないだろう。
「あの、なんかカードが変な記載があるんですけど……。」
「…?カードをお借りしてもよろしいでしょうか?」
「どうぞ」
「……!これはっ」
受付嬢の彼女も硬直してしまった。
僕はあまり大きな騒ぎにしたくなかったので少し慌ててしまう。
「加護はとても凄いことですよ!冒険者の中でも1割もいないとても希少なものとなっています!…"スキル無し"でもこれなら全然やっていける可能性があります!」
なるほど……。加護はそういった類のものらしい。効果までは、分からないみたいだが、邪神でもない限り悪い効果はないそうだ。
でも、彼女は気になることを口にしていた。
スキル無し、って言われた?カードに書いてあるのに?
…ここは1回引き下がった方がいいかもしれない。
他者に見えないスキル何てもの拘束されて時間を取られてしまうかもしれない。
「…なるほど、最初の説明で言われなかったので分かりませんでした。理解しました。ありがとうございます。」
「いえいえ!加護持ちの方をを見るのは初めてでしたが、きっとこれから凄いことになるかもしれませんね!では、いい冒険を!」
「…ありがとうございます。」
若干の後ろめたさはあったが、僕は未だに固まっているヒナを引きずり役所を後にした。
◇
「ヒナさんそろそろ、しっかりしてください。」
「…あっごめんね。」
「いえ大丈夫ですけど……。」
彼女は何でここまで固まっていたのだろうか?
スキルが見えていたのだろうか?
「…なんでカードを見て固まっていたんですか?」
「そんなの加護持ちだからだよ!」
どうやら、彼女にもスキルは見えていなかったらしい。
「加護持ちは特別なの!今まで発見されている加護持ち冒険者は皆大物ばかりで、実際加護を持っているだけでSランクが約束されているようなものなの。…やっぱり、この子は原石だわ!これから、一緒に配信者としてやっていきましょう!」
「…いえ、配信者はやりません。」
「なぜ!?」
「配信をしていると万が一怪我したときに今の保護者にそれを見られて心配を掛けてしまうから…。」
「…。」
そう僕は、あの叔父夫婦は僕を8歳から引き取ってここまで育ててくれた。
それなのに、僕は高校受験を失敗してニートを1年間やっていた。
それなのに、嫌な顔もせずご飯を出してくれて、生活費もくれて、しまいには冒険者になるための装備の費用も工面してくれた。
そんな叔父夫婦は僕が怪我をする可能性がある冒険者という職業に反対をしていた。
それなのに、怪我を負うシーンをわざわざ配信して見られでもしたら、傷つけてしまうかもしれない。
だから、僕は配信者はやらない。
「……分かったよ。私が配信する分なら問題ない?」
「…そこは好きにしてください。」
「ありがと!じゃあ、早速ダンジョンへ――」
「いえ、これから武具を見にショップへ行こうと思います。」
「……そうでした。……君マイペースだって言われない?」
……周りに合わせらる人だったら、きっと今頃友達に囲まれているだろう。
そんなことを考えながら、僕の足は武具ショップに向いていた。
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