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現代冒険者のすゝめ ~高校受験に落ちた僕、冒険者になってみた!~  作者: あっかんべー


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第34話 お姉ちゃん受付嬢の溜息 

すみません…。

私の作品にしては、凄く長くなってしまいました…。

長いのを読むのが苦手な方は読み飛ばしてください。

メインストーリーには影響しないので…。

※佐藤エリナ視点


皆さんこんにちは。

渋谷区役所 冒険者専用カウンター職員の佐藤エリナです。


最近冒険者登録数のノルマが設定されてしまって仕事も大変になってしまいました。

それなのに、渋谷区役所に訪れる冒険者は文句ばっかで碌に探索もしない人ばかりでせっかく公務員なれたのに辞職しようかと考えていました。


そんな時初めて彼と出会いました。


「佐藤さ~ん、3番窓口の冒険者様の対応をお願いします。」


「…分かりました。」


3番カウンターを使用されるのはとても久しぶりだった。


そのカウンターは冒険者登録専用窓口で最後に使われたのは数か月前だった。


カウンターに来たのは、10代の少年少女でとても初々しい人たちだった。


若干少年の方は女の子のことを煙たがって見えたけど…。


「本日はどのようなご用件でしょうか?」


これは定型文だ、この窓口に来るってことは目的は分かっているけど、最初は「本日はどのようなご用件でしょうか?」で始めなければならないらしい。


「えっと、冒険者登録を行いたくて…」


「承知いたしました。こちらの紙にご記入お願いします。」


私は男の子に登録用紙を渡し記入が終わるのを待つ。

女の子の方は登録ではなく男の子の付き添いのようだ。

暇そうにしていると思いきや記入している男の子の横顔をじっと見ていた。


あぁ~、なんか甘酸っぱい!こんな青春してみたかったなぁ…。


「すみません。書き終わりました。」


男の子は書き終わった用紙を渡してきたので記入漏れがないかチェックを行う。


「……はい。問題なさそうですね。次に、マイナンバーカードの提出をお願いします。」


名前は…田中アルト君、か。歳は私の妹と同い年で16歳みたい…。

長い髪の毛のせいで顔が見えなくて幼く感じてしまった。


次の手順であるマイナンバーカードを受け取り、私は凍り付いてしまった。


写真に写る男の子の目が紫紺しこんの瞳だった…つまりDサバイバーだ。

それに気づき田中君を見てしまった。


これは受付嬢として…失格の行為だと気づく頃にはもう後の祭りだった。

田中君は私の視線に気づき肩をびくっと揺らした。


しまった…。

きっとこの子は今までDサバイバーということで色々苦労してきたんだと思う。

謂れのない悪評に人間関係からの隔離…Dサバイバーにはそれが付きまとってくる。

でも、私たち冒険者専用公務員はその噂が事実無根であることは知っている。


「……もういいですか?」


「…!失礼いたしました。」


「いえ大丈夫です。慣れていますから。」


本当にもうっ!気を遣わせてどうするのよ私…!こんな少年に気を遣わせてしまって…。

これ以上の失態が無いように話をそらすように私は明るく話した。


これが私と田中君の最悪な出会いだった。



その後、田中君は逃げるように去ってしまったから、もうこのカウンターに来てくれないかなぁって思っていたが、なんとちゃんと来てくれるではないか。


思いのほかダンジョンが楽しかったのかな?

私も冒険者上がりの受付嬢だから気持ちはわかる。ダンジョンは過酷で残酷だけどその分得られるものが多い。私は、戦闘が得意でなかったがために辞めてしまったけど…。


今回来た理由は、冒険者カードの更新だった。

えっ?こんな早く更新しても意味ないと思うのだけど…。


そう思っていた時が私にもありました。

カードに記録された階層記録を確認すると、田中君は既に渋谷ダンジョン第四層まで潜っているではないか。


しかも討伐記録も凄まじい。


アシッドスライムに、ゴブリンナイト、ゴーレム、フレイムリザード、それに、第四層のマグマトードまで?…初心者での討伐はまずありえないものだった。

この子はまだFランクの上、スキル無し、難度審査すらしてないような子なのに…。


だから私はこの子をしっかり叱らないといけない。


「アシッドスライムに、ゴブリンナイト、ゴーレム、フレイムリザード、マグマトード…。田中君!あなたはまだFランクなんですよ!こんな危ないモンスターは推奨範囲にありません!無理しないでください!」


つい妹に言うように叱ってしまった…。

でも、目の前の男の子は反省した様子もなく前回も来ていた隣の女の子と話していた。


これが、若さゆえの無謀ってやつか…。


「職員さん今申請の手続きできますか?」


「え?今されるんですか?」


「冒険者学校に行きたくて…。」


なるほど、だから急いでいたのか。

これ以上の記録となるとおそらく田中君は特待生制度を狙っているのだと思う。

でも冒険者は焦ると焦るだけ危険が増す職業…もうちょっと余裕をもって行動を取って欲しい。


「一番早くていつ頃いけますか?」


だめだぁ…すごく急いでいるみたいだ…。


「少々お待ちください…空いてる職員は、と…。半年後に実施可能な職員を見つけましたが、いかがでしょうか?」


周りの職員とタブレットで秋のある職員を確認する。

ここにいる皆は首を横に振り行きたくないと言っている。


そりゃそうだ、渋谷ダンジョン第三層は難易度がほかのダンジョンとは桁違いに跳ね上がる。それを、こんな小さな少年と潜りたくないのだ。

でも、なんかこの子を見ていると――


「…私でよければ、明日にでも可能ですよ。」


つい口から言葉がこぼれてしまった。

私はこの子に妹を重ねてしまったのだ。

ゆえに普段は難度審査なんて行かないのに提案をしてしまった。


案の定田中君の顔は眩しいくらいに明るくなりお礼を言われてしまった。


やってしまった…。

戦闘向けの冒険者じゃなかったのに、私でも大丈夫だろうか…とても不安だ…。

でも、約束してしまったんだ!業務は全うしよう!



次の日約束通り田中君は来てくれた。


あれ?昨日より幾分か落ち着いている気がする。

何かあったのかな?


でも、私が聞いてしまってもいいものだろうか?

…いや、辞めておこう…何が起こるか分からないし…。


そうして私たちはダンジョンに潜っていった。


ダンジョン内での田中君はとても優秀でした。

洞窟型のフロアを上手く活かした戦い方でとても新人とは思えないものだった。

それに何あのナイフ…っ!輝き方からしておそらくミスリルだと思うんだけど、いやいや田中君は新人だよ?買えるものではないだろうし…。


そんな平穏も第三層までだった…。


マグマトードの群れだ…。

ありえない…っ!マグマトードは群れたとしても2~3匹程度の筈、それなのに目の前に広がる光景では、少なくとも30匹はいるように見える…。


これはマズい…。

いや、マズいなんて言葉だけで済む問題じゃない…っ!


こちらは新人の男の子に、手負いの冒険者たち、それに非戦闘系の私…どう考えても助かる布陣ではない。


でも、頭を回し何とか私は作戦を練り唯一まともに動ける田中君に頼った。

それでも、やはり上手くいくものではなかった…。


軍隊アントの群れが前方から現れ挟まれてしまったのだ。


詰んだ…。


そう頭に過ってしまったのだ。

私の隣には私以上に絶望的な表情を浮かべる田中君がいた。


私が…しっかりしなくちゃいけないんだ…っ!


「田中様がイレギュラーが初めてなのは承知しています、でも今は無理にでも落ち着いてください!でないと、私たちは全滅します!」


まずは、田中君を落ち着かせる。

そうしなければ、本当に全滅してしまうから。


田中君は思いのほかすぐに冷静になれた。


この子、凄い…っ!

こんなイレギュラーな状態で自分を取り戻せるなんて…っ!


そこから、広場に一回留まり第四層に進攻しようと提案をした。

第四層のマグマエリアなら軍隊アントを先にフロアトラップを利用して仕留められると思ったから。



何故こういう時に限って上手くいかないのだろうか。


軍隊アントが集まるところまでは良かった。

だが、マグマトードたちが通路で固まり第四層に進めそうになかったのだ。


先程落ち着かせたはずの田中君がまた焦りだし注意が散漫になってきていた。

そんな時だった――


「田中様っ!」


通路の奥から田中君を見ているマグマトードが目に付き灼熱の唾液を田中君に飛ばすのが見えてしまった。


気づけば体が動いていた。

戸惑っている姿が、小さかった頃の妹に似ていたから――


唾液によって私の半身が焼き爛れていくのを感じる。

目の前に立ち上がりこちらに駆けてくる田中君が見えた。


「佐藤さんっ!」


「……田中様、無事ですか?」


私の口から最初に出た言葉はこれだった。

他にも色々言いたいことはあったけど、やっぱり妹みたいな君への心配が勝ってしまいました…。


田中君はそのまま、立って目を瞑ったまま動かなくなってしまいました。

16歳の少年には今の状況は重いのだろう、頼れる大人がいないのだから。


ごめんね…不甲斐なくて…私が戦えたら状況は違ったのかもしれない…。



私は何を見ているのでしょうか、現状が理解できず混乱してしまいます…。


先程まで立ったまま動かないでいた田中君がいきなり迅速に動き始めました。

しかも状況把握もしっかり出来ており私の持っていたポーションにまで気づいていた。


一体何が…っ?


一番気になったのは、田中君の目が紫色に発光していたことでした。

普通のスキルでは、こうは光りません。


まさか、魔眼っ!?

でも、田中君のカードには記載はされていなかったのは確認をしているし…。

いけない、今は悩んでいる暇はない。


急いで避難をしたいところでしたが、1本のポーションだけでは回復しきらずやはり私は足手まといにしかなれませんでした…。


残っていたポーションを渡し田中君は冒険者たちの方に行ってしまいどうしようかと考えていると――


私の方に魔物達が来ない…?


よく見ると田中君が私の方へと向かってくる魔物達をあの小さなナイフで全部切り伏せていました。


さっきまでの動きと違う…?


正直疑問だらけでしたが今はそんなことをしている暇はありません。

出来るだけ身を小さく丸め魔物の標的にならないようにしなくては…。


そこからは、田中君の独壇場で魔法は使えないはずなのに離れたところにいる魔物を何らかの方法で倒したり、途轍もない斬撃でしょうか?そのようなもので通路に残った魔物を吹き飛ばしてしまったのです。


田中君は本当に新人なのでしょうか…?


挙句の果てにはダンジョンの天井に先程と同様の斬撃を繰り出し崩落させているではありませんか…。普通ダンジョンの壁や天井は壊せるものではありません。ちょっと崩すことはできるかもしれませんが、あんな崩落は聞いたことがありません。


でも、崩落を起こしてくれたおかげで私たちと魔物たちの間に壁を作ることに成功し私たちは難を逃れることが出来ました。



そこから私たちは地上を目指しとにかく必死に走り続けました。

出口が見えたころ田中君が膝から倒れた時はびっくりしてしまいました。


区役所に急ぎ連絡し近くの冒険者専用病棟に移送しました。

他の冒険者たちは田中君に比べると比較的に軽傷だったためその日のうちに帰ることが出来ました。


私も少し休みたかったのですが、今日の出来事をある程度まとめる必要がありレポート作成をしてから休むことが出来ました。


これを提出して今日の田中君の頑張りを難度審査合格通知として渡してあげたい…っ!


家に帰ると妹のエミリが私を心配してとにかく大変でした…。



田中君が目を覚ましました!

特に外傷とかも無くもう少し入院したら退院できるそうでひとまず安心です。


ですが、ここで一つ問題がありました。

それは、田中君の武器についてです。


ダンジョンから出るとき、最後の斬撃を放った時にナイフの限界を超えていたみたいでナイフがバラバラに砕けてしまったのです…。


田中君がいつ起きてもいいようにお見舞いしたときに出くわした以前も一緒にいた女の子にナイフの残骸を渡していたのですが、私もいる状態での報告となってしまいました。


田中君はとてもショックだったようで今日は解散となってしまいました…。


次の日の朝

出勤したら田中君の合格通知書が私の机の上に置いてありました。

上司が私のレポートを読んでここまで本当に出来るのなら合格でいいだろうとのことでした。しかし、冒険者歴、判断能力が少々不足と考えたようで難度証明書所持者との同行を義務付けるとのことでした…。


少々条件は付けくわえられてしまいましたが、それでも喜ばしい報告が出来ると仕事を少し抜け田中君の病室に急ぎました。


「田中様!朗報ですよ…!」


私は扉を勢いよく開き田中君に伝えました。


そして、気づいてしまったのです…。

場がしんみりしていることに…。


しっかり大人として言い直しておきましょう。


「…失礼しました。…田中様!難度審査無事に通過しましたよ!」


全然言い直せませんでした…。

でも、妹が学校で主席合格したときみたいに嬉しかったんです!

やっぱり、頑張った人は報われてほしいですしね。


田中君に難度証明の説明をした後は、ご家族を残し私は退散させていただき仕事に復帰しました。



田中君は退院した後、入学を目指し頑張って特訓をしている様でした。

あの時の後遺症か体は不調なようでしたが、合格できるように離れながらも応援させていただきますね!


数日後、内閣府ダンジョン対策室を名乗る方から、田中君について情報を求められる珍事が起きました。


こんなことは滅多にありません。

ていうか、初めてでした…。


田中君が不利益になりそうなことを全て伏せてお伝えはしましたが…悪いようにならないと良いのですが…。



田中君は冒険者学校に特待生として合格したようです!

私としても、とても喜ばしい出来事でした。


身体が不調だと見受けられたので試験がとても心配でした…。

でも、これで楽しい高校生活が待っていますよ?


「そういえば、私の妹も冒険者学校に通っていますので会った時は仲良くしてあげてくださいね?」


と、伝えたらとても驚かれた。


…私はそんなに年増に見えましたか?そうなんですか?

…っと、いけないいけない、今は田中君を祝ってあげないと!


しばらく話し込んでいるとどんな人か聞かれたので私はこう言いました!


「妹には私が色々教えたんです、とても優秀な子ですよ!」


そう、私の冒険者としての知識をすべて叩き込んであげました。

そのおかげか1年前の入学試験では、なんと主席だったんですよ?


……まぁ、勉強だけは昔から得意でしたから!



今頃エミリも田中君も学校かなぁ。

いいなぁ、高校生…。


私は高校に入っていない。

諸事情により中学卒業後に冒険者として活動を始めたから。

あの日々には、後悔はないけど…でもやっぱり高校生は羨ましい…。


でも、そのおかげで今の仕事にありつけたのだから出来ることは頑張ってやっていきたい。


午後になると、なんと田中君が来てくれた。

今日は学校初日だったのでは?


えっ、冒険者カードの更新?そういえば、難度審査前が最後でしたね。

よく見たら、エミリがいるじゃないですか!


もう仲良くなったんですか?

仲良くなるのは良いですけど、ほどほどにですよ?


ちょ、やめて!私のことを語らないでよ!職場なんだから!

田中君も笑ってないで止めてください!


最初私は辞職しようかと思っていましたが、今のこの日常は悪く思いません。

もうちょっと続けてもいいのかなって思えるくらいには、ね。


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