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現代冒険者のすゝめ ~高校受験に落ちた僕、冒険者になってみた!~  作者: あっかんべー


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第30話 田中アルトは好敵手?《ライバル》

佐藤さんのおかげか、転入の挨拶は意外とそつなく終わった。

というより朝の一件のインパクトが強すぎて、変に緊張している余裕がなかったのだ。


「というわけで、こいつは田中アルトだ。今日から同じクラスになる。仲良くしてやってくれ~。」


伊藤先生は気怠そうにそう言うと、そのまま教卓に突っ伏した。


…やっぱり自由すぎるな、この先生…。


軽く教室を見渡すと、何人かの生徒がこちらに興味深そうな視線を向けてきていた。

転入生という言葉が珍しいのか、それとも――。


ちらりと隣を見る。


「…………。」


佐藤さんは露骨にプイッと顔を背けた。


……僕、佐藤さんに何もしてないんだけどなぁ。

確かに、難度審査の件で迷惑をかけた自覚はあるけど…ここまで露骨だと流石に僕も傷ついてしまう…。


朝礼が終わり1限まで休憩時間となり僕の周りに人だかりが出来始めた。

こんなに同世代に囲まれた経験がなかったため対応に困ってしまった…。


「なんでこの時期に転入したんだ?」


「もう冒険者登録しているの?」


「彼女いるの?」


「配信とかはする予定はあるの?」


とか色々聞かれてしまい困っていると、隣の席から一声。


「……そんなに一気に聞かれても彼が困るでしょう。」


静かだった。

だけど、不思議と教室の空気が止まるくらいには通る声だった。


「特に貴方達、初対面で彼女の有無を聞くのはどうかと思います。」


「いや佐藤、お前さっきまで敵視して――」


「うるさいです。」


ぴしゃりと言い切られ、クラスメイトたちが苦笑する。


……あれ?


もしかして佐藤さん、怒ってはいるけど根はいい人なんだろうか?


「何見ているんですか、ウジ虫!こっち見ないでください!」


やっぱり優しくはないのかもしれない…。

でも、僕を庇ってくれたんだよね?


「…ありがとうございます。」


僕はボソッと呟くようにお礼を述べると彼女はまた、プイっと顔を背けてしまう。

そうこうしているうちに休憩時間はあっという間に終わり、一限目が始まった。


1限目は普通に現国だった。

冒険者学校なのに?と思うだろう。

でも、冒険者にも学は必要と国の方針で午前中の授業は普通の授業が行われているそうだ。


しかし、ここで問題が発生してしまった。

僕は今日転入してきたのだ。

そう、僕にはまだ教科書が支給されていない…。

普通だったら隣の彼女に見せてもらうのだろうけど、彼女《佐藤さん》は僕のことを毛嫌いしているようだから正直声が掛けづらい…。

一人机に向かって戸惑っていると佐藤さんが声を掛けてくる。


「…教科書がないのなら最初から声を掛けてください。」


「いいんですか?」


「…貴方は敵ですが、別に意地悪をしたいわけではないので。」


そう言って彼女の机に机をくっつけて教科書を真ん中に寄せてきてくれた。


…よかった、本気で嫌っているわけではなさそうだ。


でも、ここで更なる問題が発生してしまった。

僕が何で高校受験に落ちてしまったかって問題…。

そう、僕は頭があまりよくない。


授業内容は、どうやら普通高校とほとんど同じレベルらしい。

正直、今の僕に付いていけるものではなかった。

とりあえず、持ってきたノートに板書はするけど…。


…難しい…。


「…そこ漢字が違いますよ?」


「えっ?あっ、ありがとうございます…。」


恥ずかしい…馬鹿なやつって思われてしまったかな…。

いや、実際勉強はできないんだけど…。


佐藤さんのノートを覗き見ると綺麗に整頓されていた。


学年主席って凄いなぁ…。


「…まったく。少しはちゃんと勉強した方がいいですよ?字も汚いし。」


「うっ、すみません。ちゃんと勉強します…。」


「……別に、謝らなくてもいいです。」


佐藤さんはそう言うと、視線を逸らし板書を続けた。

久しぶりの授業ということもあり時間はあっという間に過ぎて授業は終わり、僕は机に突っ伏してしまった。


…ちゃんと頑張らないと…。


「…田中アルト。ほら、これ貴方の分のノートです。貴方のノートだと後で見返せないでしょ?」


佐藤さんはどうやら僕の分までノートを取ってくれていたようだ。

……僕のために、わざわざ?


「ありがとうございます、佐藤さん!」


「…勘違いしないでください!見返せないノートはノートじゃありません、クラスメイトとして最低限の対応です!」


「それでも、ありがとうございます。」


「いえ、いいんです。これからお楽しみタイムが始まりますので。」


彼女はそう言ってどこかに立ち去ってしまった。

そして去り際、佐藤さんはなぜか少しだけ口元を吊り上げていた。

お楽しみタイム?何のことだろうか?嫌な予感しかしない…。


「おーいアルトって言ったか?」


男子生徒が僕に話しかけてくる。


「あっはい。アルトです…。」


やはりまだ緊張してしまう。

男子生徒は苦笑しながらまた話しかけてくる。


「固い奴だなぁ、まぁいいや。これから2、3限目は体育実習で校庭に集合だぞ?ほら、更衣室に行くぞ。」


「…ありがとうございます。えっと…」


「あぁ、俺は竜ケ崎マサトって言うんだ、マサトでいいぞ!」


「よろしく…マサト君。」


「まだ固いなぁ、マサトでいいって。」


「ありがとう、ま、マサト!」


「おう、よろしくな!っと、そろそろ更衣室行くぞ。」



更衣室で着替え終わった後、校庭に向かう。

校庭に向かう生徒を見ているとどうやら1クラスだけではなく学年全体で行う授業のようだ。


「マサト…これからやる授業ってどんなことするの?人数が多い気がするんだけど。」


「体育ってゆーか、実戦形式の実習だな。」


実戦形式…。あぁ、だから彼女はお楽しみタイムと言ったのか…。

僕をボコボコにするって言っていたし。


「アルトも可哀そうな奴だな、佐藤さんに目を付けられるなんてよ。」


「可哀そう?なんで?」


「だって、あの学年主席の佐藤さんだぞ?文武両道で入試の威力審査で歴代2位の実績を叩き出したんだぞ?」


威力審査…あぁ、そんなものもあるのか。

威力審査とは、物理攻撃・魔法・スキル問わず的に攻撃を行いその攻撃の威力を点数化したものらしい。


歴代2位かぁ、凄いな…。


「…ちなみに歴代1位は?」


「そんなもの決まってるじゃん、武田先生だよ。凄いよなニコニコしながら的に軽くパンチしただけで誰も越えられない点数を叩き出したらしいぞ。」


…武田先生何してんの。でも、多分神威開放はしてないよね?してたら、校舎全壊してそうだし。


「1位は別として、2位でも十分ヤバいってお前本当に気をつけろよ?」


「ありがとう、でも、佐藤さんと戦うことになっても出来るところまでやってみるよ!」


「おぉ~、でも無理はすんなよ?」


校庭に列が出来ており僕とマサトは自分のクラスの列に並び始めた。



授業開始と同時に、先生たちによる模擬戦のルール説明が始まった。


=模擬戦ルール=

武器は木刀・木のスタッフに限る

魔法・スキルの使用に制限は掛けないものとする。

試合時間は、最長15分までとする。

判定は、戦闘不能と判断するか、降参のコールによるものとする。


説明されたルールは大体こんなものだった。

対戦相手は自分で見つけるかくじ引きによるランダム戦になるようだ。


ランダム対戦くじの列にマサトと並んでいたら後ろから声を掛けられた。

やっぱり僕に声を掛けてきたか…。


もう相手は分かるだろう。

そう相手は――


「田中アルトぉ!ここで会ったが100年目!お姉ちゃんを誑かす悪鬼め!公正に勝負しろ!」


…そう、佐藤さんが僕の後ろで仁王立ちして宣言した。


「…分かりました、やりましょうか。模擬戦。」


「それでこそ私の好敵手ライバル!」


そう言って中央のステージに佐藤さんは上っていった。


…口調が変わり過ぎでは?

それに、悪鬼でも好敵手ライバルでもない気がするんですが…。

今日初めて会ったんですだから…。


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