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現代冒険者のすゝめ ~高校受験に落ちた僕、冒険者になってみた!~  作者: あっかんべー


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第26話 ヒナから見た景色 後

試験最終話!

ひなちゃぁん!!!

※引き続きヒナ視点



アルト君が退院するって聞いたから迎えに来ました!

アルト君は、ナイフの件をまだ引きずっていてとても表情が暗かった。


退院したばっかりだから体をほぐす為に訓練場に向かっている道中も、ずっと暗いまま…。

こんな時うちは、どんな風にしてあげたらいいんだろう…?


そんな風に悩みながらも訓練場についてしまい正面で向き合っていたらいきなり謝られてしまった。


「…ヒナさん、この間もそうでしたけど、前回訓練していただいた時の僕の態度が最後悪くなってしまい申し訳ありません。」


えっ、アルト君が謝るの?もしかして、ナイフのことじゃなくて、そっちで悩んでた感じなの?


冒険者は簡単には謝らない。

理由は単純明快、弱みを見せれば、そこにつけ込まれる世界だからだ。

優しい人ほど利用され淘汰されていく。


冒険者学校の同級生たちも基本的にはプライドが高く周りを見下した感じの人が多い傾向にある。

だから、大きな失敗や挫折した人たちは冒険者を諦めやすいのだ。


アルト君は、直近で大きな怪我や武器破損してしまっている。

最近の冒険者だったら、辞めると言ってもおかしくない。


だから、うちは正直驚いた。

冒険者でなくても男の子がこんな素直に謝ってきたことに。


「…うちは別に怒ってないよ?」


「ヒナさん、ありがとうございます。」


素直過ぎる…。

それが悪いと言っているんじゃなくて、冒険者にこんなピュアピュアハートちゃんがいていいのか?

冒険者としてやっていけるんだろうか?


待て待て、そんなことうちが考えることじゃない、アルト君が決めることだ。

反応に困り――


「ん~?どういたしまして?」


…あぁ、うちは困った時におちゃらけてしまう悪癖がある。

バカ野郎もっと愛想よくしてやれよ、うち…。

アルト君は傷ついているんだから。


そんなこんなで模擬戦が始まってしまった。

とりあえず、魔法から始めた。


火球ファイアボール


多分一番オーソドックスな魔法スキルだと思う。

アルト君なら――


「すみません。魔法を…魔法をもう一度使ってくれませんか?」


あれ?いつもなら、魔力を見て行動を起こすところだと思っていた。

アルト君に催促されもう一度魔法を行使する。


「…なんで、見えないの…?」


訓練場に来た時よりも更に深い絶望がアルト君の顔に浮かんでいる。


えっ?見えない?魔力が?

アルト君の一番の武器が…。


いや、うちが動揺してどうする。

一番衝撃を受けているのは、アルト君だ。うちは動揺するな。


「…プラスで考えよ?学校は学ぶ場所なんだから今は基礎を鍛えていけばいいよ!」


そもそも、これは学校に入学するための訓練だ。

それなら、別に完ぺきを求める必要はない。

強さなんて後からでもついてくはずだし。



その日から、アルト君は特殊能力アビリティの魔力視に頼らない訓練を開始した。


どうやら、魔力視以外にも身体能力が低下しているようだった。加護の力で能力が底上げされているものだと思ってたけど、どうやら違うらしい。


基本的に冒険者は、冒険者カードに記載された内容で自分強さを測る。アルト君の場合、加護はあったもののスキル欄が空欄だったのを覚えている。


そういえば、なんでスキル欄が空欄だったのに魔力視出来ていたんだろう?

でもスキルの詮索は、タブーだからなぁ…。

言ってくれるの待つしかないか。


訓練には、サクラと…あのリオさんって人も来てくれていた。


サクラは分かる。私の幼馴染だし、一緒に冒険学校に通っているから。

でも、リオさん貴女は関係なくないですか?

アルト君が入院していた時も来ていなかったし…。


えっ、失踪したお父さんを探してる?


新宿ダンジョンのだけど碑文がヒントになるかもしれないからアルト君の協力をしていたらしい。


なるほど…それなら、アルト君と一緒にいても不思議ではないのかなぁ…。



アルト君はとても素直な男の子で、入学試験までの期間でうち達の指導で得た知識をスポンジのように吸収していった。

この短期間で2種類も魔法スキルを覚えられるのは、正直異常だよ、い・じょ・う!


しかも反属性の炎と氷だよ?

近しい属性ならいけそうだけど、反属性は絶対こんな短期間じゃ無理だと思ってた。


ただ、必死なアルト君を見ていると応援したくなっちゃうんだ…。

教えてほしいと言われたら、断れる気がしないし…。


そんなこんなで試験会場に到着したうち達は、校庭に向かっていたんだ。


体育科の先生がうちの時の試験官だったから、今回も同じかなって思っていたのに…なんで…武田先生が…。


ありえない…普段は、日本にいるのかも怪しいのにアルト君が試験って時に居合わせるなんて…っ!


アルト君は、武田先生のことを知らないみたいだった。


えっ、何で知らないの?冒険者志望なんだよね?日本一有名な人なんだよ?


武田ソウカク先生…日本で最強と名高い冒険者の一人。昔に東日本大氾濫ギガスタンピートを攻略した1つのパーティーがあって、そのパーティーのリーダーが武田先生だったらしい。


東日本大氾濫ギガスタンピートはそのまま放置していたら、関東圏が人類不可侵領域になると言われるほどの規模だった。


有志が立ち上がりそれを鎮めたとテレビで放送されていたのを今でも覚えている。


そんな人が冒険者学校の試験官をしていていいの?

ましてや、アルト君はよくわからないけど能力を十全に扱うことのできない状態なのに…。


あっ…先生と目が合ってしまった。


「――開始の掛け声をお願いしてもいいかい?」


えっ、うちがアルト君の開始合図《死刑宣告》をするの!?


アルト君も気まずそうにこっちを見てるよぉ…。

でも先生に言われた、断るわけにもいかず開始合図《死刑宣告》を行った。



凄い…。


アルト君はうち達との特訓を最大限まで活かして試験に臨めている。

魔法も覚えたばっかりなのに既に応用の域にまで達している。うちだって応用に入ったのは最近なのに…。


凄いよ…本当に凄い…だけど――


武田先生には、全く効いていなかった…。

それは、うちにだって分かってしまう。


だって、先生はさっきから一歩も動いていなかったから。


時間が経つごとにアルト君がどんどん焦っているのが分かる…。


アルト君が一気に攻めに掛かった!

入った――!

しかも、氷柱アイスピラー!?

誰も教えてないのにっ!


攻撃が当たった先生しばらく俯いていた。

それが、うちにはとても不穏に見えた。


「ふ、ふふ、ふふふ。」


先生から発する不穏なオーラに気押されてうちは立ちすくんでしまう。


怖い――


日本の英雄のはずなのに、うちは先生にそんな感想を抱いてしまった。

いや、それしか感じなかった。


そう思えたのもつかの間、アルト君が受け身も取れず吹き飛ばされてしまった。


――な、に…あれ…。


先生は何もしていないはずなのに、アルト君が…アルト君が…っ!


2人が何か話しているけど、うちからは何を話しているのかは聞こえない。

でも、先生の顔が、雰囲気がどんどん暗く、怖くなっていく。


そこからは、もう目も当てられなかった。

アルト君が、一方的に痛めつけられていく――


やめてよ…。


アルト君をこれ以上傷つけないで――


うちの想いとは反比例するようにどんどん…どんどん攻撃の手は苛烈になっていく。


でも、もう見てられないっ!


「武田先生!いったいどうしたんですか!?」


うちは何とかそれだけ口にできた。

逆に言えば、それしかできなかった…。


先生はうちの言葉を無視するようにアルト君のもとに戻っていく。


うちは…無力だ…。見ていることしかできない…。



離れていて聞こえないはずなのに…。

うちの耳にははっきり聞こえた。


――神威解放【武御雷之男神タケミカヅチオカミ

と。


世界が止まった。

比喩でもなく誇張でもなく、校庭の空気が凍った。


先生の身体からは雷が溢れており魔力は感じられなかった。


魔力を使っていないのに雷を生み出している…?

どうやって?もう…意味が分からない。


ただ分かるのは、アルト君が必要のないくらいに追い詰められているってことだけ。


先生の動きは、うちには完全に捕らえられなくなっていた。


あっ、また…。


アルト君がまるでボールかのように投げ飛ばされてしまった。助けに行きたい…助けに行きたいのに体が動かない…。


頭より先に体が気づいていた。

この戦いの場に足を踏み込めば、うちは何もすることができないままやられるってことを。


アルト君が助けを求めるようにこっちを見ている。


動いてよ…今すぐに動いて…アルト君のもとに駆け付けたいのに…っ!


その時、うちは蛇ににらまれた鼠のように体が動かなくなった。

視線をずらすと武田先生と目が合ってしまった。

視線が合った、それだけで体中が金縛りにあったかのように動かなくなる。


先生がこちらに歩いてくる。

ゆっくり…ゆっくりと


なんで…先生がこっちに…


やはりどこか他人事だったのだろう。

自分は安全圏にいると思い込んでいた。

先生の目はアルト君を見ていた目と同じ目をしていた。


「ひっ…」


喉が押しつぶされそれしか声が出てこなかった。

怖い…なんで…逃げなきゃ…


それなのに体が動かない…。


助けて…誰か助けて…


幼少期の頃魔物に襲われたときと同じように情けない声を上げることしかできなかった。


そして、言ってはいけないことを言ってしまった。


「…あ、アルト君…たすけて――」


言ってしまったんだ。

自分よりも年下で、自分よりも傷つき地面に倒れている相手に。


「――嫌だ!やめろぉぉぉ!」


やめて…アルト君…こんな醜いうちのことなんて助けないで…。

さっきの言葉は気の迷いだから。

こんな醜いうちを見捨てて――


「お前は、叫ぶことしかできないのか!」


うちの近くにまで近づいてきた先生が唐突に怒鳴り始めた。

この人は何がしたいのか、うちには分からなかった。

分からなかったけど、さっきまで死んだ目をしていたアルト君の目に命の灯が宿ったかのようにまっすぐこちらを向き始めた。


――神威解放【天照大御神あまてらすおおみかみ


アルト君もっ!?

先生と同じようにアルト君も何かを唱えた。

うちにはそれが何を意味するかは分からない。

でも、今わかるのはアルト君は諦めずうちを助けようとしているってことだけ――


うちに助けられるだけの価値なんてないのに――


隣にいる先生の右手に雷が集約していく。

これは本当にヤバい、見なくても分かるほどに空気間で伝わってくる。


「雷撃【ミヅチ】」


あっ…死んだ。

アルト君ごめんね…。こんな情けない先輩で…。


これまでの人生が、走馬灯のように脳裏を流れていく。


「陽光【ヴェール】」


もう遅いよ…。あ~あ、アルト君と学校に通いたかったなぁ…。


勝手に期待して、勝手に諦めるそんな自分に嫌気を差しながらも最後には本音が出てきてしまう。


目を固く瞑って攻撃を受け入れようとした。


だけど、その攻撃は待てども待てどもやってこない。


目を開くとアルト君から発せられた日向色の御業みわざが、うちを守るように包み込んでいて先生の手刀がうちにまで届いてこなかった。


うちがアルト君の方を見ると心底安心したように地面に倒れこむ瞬間だった。


倒れこむ瞬間なのに、アルト君は優しくうちに微笑みかけてくる。


あっ…


心臓がトクンっと跳ね上がる。


先生が何かアルト君に向かって話しかけている。

でも、うちには話の内容が頭に入ってこない。


正直それどころではなかったから。


自己嫌悪と戸惑いに包まれなが思ってしまう――


――あぁ、こんな醜いうちの胸の高鳴りはどうすればいいですか?

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