第25話 ヒナから見た景色 前
イントネーションに気をつけてください。
う→ち→ ではありません。
う↑ち↓ って感じの一人称です。
※ヒナ視点
出会ったのは、うちが配信者としてダンジョンに潜っていた時だった。
憧れの配信者がいて、それに追いつくために渋谷ダンジョン第三層から撤退していた時、うちはアシッドスライムとゴブリンナイトに襲われてしまった。
普段なら、このくらいの数だったら撃退できていた、だけど、襲われたのは撤退していた時だったため、うちはじわじわと追い詰められていった。
正直もうだめだと思ったときに彼は現れてくれたのだ。
彼の名前は、田中アルト君というらしい。
帰り路一人だと不安ということもあり、同行してくれないかと頼むと、少しだけ嫌な顔をされたけどアルト君は、引き受けてくれた。
話を聞くとまだ冒険者じゃないという。
えっ!ここ何度申請が必要な区域なんだけどっ!
彼はお試しで入っただけだと言っていて、私は思ったんだ、この子多分これからとても強くなるって。
だから、思わず口に出してしまったのだ。
「…これは、原石!」
ヤバっ変な顔されたっ!
そりゃそうだよね、うちたちは初対面なわけだし。
明日冒険者登録をするって言っているし、ついていきたい…。
この子の動きは、正直力任せで大雑把だったけど、普通ではありえないものだった。
たまに、昇華する人がいることは知っていたけど、この子ほどではなかった気がする。
だから、無理やりにでも、うちは約束をこじつけた。
家に帰ったら、急激に疲れてしまってお風呂にも入らずベッドに倒れこむ。
歳はうちの一つ下の16歳だと言っていた。
男の子にしては長い黒髪にうちよりは高いけど、やや低い背丈。
そして――
アルト君は紫の瞳をしていた。
日本人で紫の瞳と言ったら、Dサバイバーだとすぐに分かった。
D災害ほどではないけどうちも魔物氾濫に巻き込まれたことがある。
幼馴染のサクラと一緒に公園で遊んでいるときに巻き込まれてしまい幼いながらも、自分はもう助からないと思った。
だけど、うちは救われた。冒険者に。
だから、うちも人を助けられる冒険者になりたくて活動をしていた。
アルト君の目が寂しそうにうちには見えた。
だから、今度はうちが助ける番かと思って付きまとってしまった。
◇
驚いた。
まさか、加護持ちだったとは…。
そう思えるほどには加護持ちは特別なのだ。
受付嬢さんなんて、目をギラギラさせちゃってるし。
でも、意外なのはスキルが一つもなかったことだ。
何かしらは芽生えているかと思ったのに1つもスキルも魔法も無かった。
まぁ、スキルなんて後から覚える人も多いし!
これからのアルト君の頑張り次第かな?
◇
ずるい…。
滅多なことでしかお目にかかれないミスリル武器を手に入れるなんて。
うちだって触ったことすらないのに。
まぁ、この武器屋?…ショップは怪しいから入らない方がいいといったのは私なんだけど。
でも、まさかこんな凄腕が原宿のすみっこにお店を構えているなんて誰が思うのっ?
あぁ、うちもいつかミスリル系統の武器欲しいなぁ。
◇
幼馴染のサクラを紹介した。
サクラはアルト君のことを観察対象として見ていた。
サクラの専攻がダンジョン研究科だから仕方がないんだけど…。
それにしても、なんだか近すぎない?
もっと離れて話しなよ!
さりげなく二人の間に割り込みダンジョンに潜っていった。
◇
ダレソノオンナ…?
アルト君と似たように髪の毛の一部が紫色女性がダンジョンに一緒に行くと申し出てきてびっくりした。
なに?アルト君と一緒でD災害被災者?それでシンパシーでも感じたの?
アルト君…世の中の女性はオオカミなんだよ?
そんなほいほいついって行ったら危ないよ?
しかも、喫茶店デートも既に行われているようだ…。
うちも喫茶店デートしたい…。
べ、別にアルト君が好きってわけじゃないもん。
うちだってモテるし?
こんな可愛い女の子と一緒にいるのに他の女の子を誘わなくても良いんじゃないかな?
◇
どうやらダンジョンの謎の碑文関連で政府に目をつけられたそうだ。
アルト君の話によると御両親が話を付けてくれたようだ。
いいなぁ、優しい家族で…。
うちの家族は…。
いやいや、人様の家族を羨んでも仕方ないし!
えっ?アルト君うちと一緒に学校行きたいの!?
めっちゃ嬉しんだけど!これは、うちにも春が来たのかな?
期待しちゃおっかなぁ?ぐへへぇ~
おっと汚い笑みが出ちまったぜぃ。
◇
緊急事態です。
なんか、アルト君のお母様に家にお呼ばれされてしまった…。
アルト君には、おちゃらけて誤魔化したけど心臓がバクバクなんだが…?
ってか、男の子家に行くのも初めてなんだが?
…初めて行くのに、いきなりお母様面接と何ぞや?
玄関からリビングに通され入っていくとお母様が机に座っていた。
…若くない?アルト君の姉じゃないよね?お母さん?はい、そうなんですね。
人類ってこんなに若作り出来るんだ…。
秘訣とかあるのかな?
後で聞いてみよ。
◇
お母様めっちゃいい人だ…。
アルト君のこと大切にしているのが凄く伝わってくる。
家族愛って本当にあったんだね…。
えっ?途中入学の試験内容?
多分アルト君の場合、先生との模擬戦位じゃないかな?
なんか、アルト君余裕そうだけど、多分このまま普通に落ちるよ?
そう伝えるとアルト君はとても不服そうだった。
まぁ、真正面から言われたら誰だって嫌か…。
仕方ない、実戦形式で叩き込もう。
あっ、あと冒険者カード更新もついでに済ましちゃお!
◇
特別対応じゃん。
差別はいけないよ?
なんで貴方が難度申請審査行えるんですかねぇ?
いや、普通に行えるとは思うけど、即日対応は普通にあり得ないから!
アルト君もそんな普通に受け入れないで!
これを当たり前と思わないように!
◇
やり過ぎてしまった…。
アルト君普通に強すぎるから…。
うちも結構本気で対応してしまった。
魔物相手だったら、技術は多少誤魔化せるけど、対人戦だったらそうもいかない。
アルト君は完全に素人なのに、ボコボコにしてしまった。
帰りとか別々になっちゃったし、怒っちゃったのかな…。
こんなことで、最後じゃないよね…?
◇
心臓が止まるかと思った。
だって、アルト君が目の前で死んだように眠っているから。
受付嬢さんに連絡を貰いアルト君が入院した病院に急いだ。
話によると、怪我はないけど魔力を使い過ぎて魔力喪失になってしまっただとか。
魔力喪失はなり過ぎると廃人になるって言われるほど重い症状だ。
16歳のアルト君の身体が持つかとても不安だ。
安らかな寝顔のままそのまま植物状態になってしまうんじゃないかと思った。
昨日のこと謝れてないよ…。
あぁ、この不安感とても嫌だ…。
◇
いつ起きるんだろうと病院の扉を開くとアルト君が起きていた。
うちは驚き過ぎて、固まってしまう。
よかった…本当に良かった…。
一緒に冒険を始めたばっかなのにこんな形で終わらなくて良かった…。
でも、うちはアルト君に残念な報告をしなくてはいけない。
うちがアルト君に見せたのは、バラバラに砕けて持ち手だけになってしまったミスリルナイフだった。
アルト君の戦い方は、ナイフに魔力を乗せた戦術だったから、もうこの間まで通り戦うことはできないだろう。
ミスリル製品はとても高価で新人冒険者じゃあまず手が届かない。
案の定アルト君はとても落ち込んでしまいその日はお開きとなった。
アルト君…あまり落ち込まないで…武器がなくなったって君は一人で冒険をしているわけじゃないんだよ?
こんな時は仲間に頼ってほしいんだよ?
面白いと思ったら、コメント、フォロー、評価をお願いいたします!
とても、励みになります!




