第21話 政府の思惑と試験《テスト》
ヒナさんとの模擬戦の翌日、僕は義父さん達に僕の現状を話そうと思っていたら、区役所の方から政府へ連絡が言った様で黒沢さんと早川さんが家に訪問があった。
「田中様の能力が消えてしまったと伺いました。もしかしたらと思い訪問させていただきました。」
「…そうですか。」
義父さんがぶっきら棒に黒沢さんに返答する。
「…田中さん、この文字が読めますか?」
早川さんからタブレットを渡され映されている画像は渋谷ダンジョン第二層の碑文だった。
僕は前と同じように読もうとしたけど――
「…読めない。」
そう、見えているものは同じなのに読めない。
認識できているはずなのに、文字が絵のように見えてしまっている。
「やはりそうでしたか…。」
やはり?黒沢さん達はこうなっていることを予想していた?
なんで?
「田中さんは本件のイレギュラーで能力を酷使してしまい一時的に封の状態になっているものかと思われます。」
「封ですか?」
「そうです。封は基本的にスキルを酷使した方に出るもので田中さんに当てはまるものではないと考えたのですが、症状は現状の田中さんと一致しています。」
そうか、僕はスキル無しって扱いになっているんだ。
僕は自分の冒険者カードをさりげなく確認してみる。
~田中アルト 16歳~ Ⅾランク
加護 :天照大御神
スキル:?????の記憶(封印)
解放率の欄が封印になっている…。
でもなんで、こっちのカードは僕に読めるんだろうか?
でも、スキルについてはまだ誰にも言っていないのに黒川さん達に言う気にはなれなかった。
「田中さんは冒険者学校に行かれるんですよね?」
「そのつもりではいます……試験に受ければ。」
「その試験、私たちに協力させていただけませんか?」
協力?なんのだろうか?
「入学試験ですが、私たちの方で免除するように声を掛けることが可能かと思います。」
試験免除…。
「私たちは田中さんにいち早く能力の回復を願い協力させていただく所存です。」
「…そういった協力でしたら、結構です。」
否定の声を上げたのは義父さんだった。
「……なぜですか?」
「…この子は貴方達にとってきっと特別なのでしょう。ですが、この子にその特別を押し付けないでください。」
「…でも、確実に冒険者学校に入学できるんですよ!」
「アルトは途中入学の資格は既に得ていると聞きました。でしたら、変な横やりは不要だと私は考えています。」
「…っ!田中さんはどうですか?確実に入れた方がいいですよね?」
僕は……
「アルト。俺の意見は俺の意見だ、アルトの考えを教えてごらん?」
ありがとう義父さん…僕の意見は決まったよ。
「…僕も特別扱いはいりません。」
「……。」
「それに今の僕は、まともに走るだけでも前より疲れるんです。特別に入学したとしても実技とかがあったら授業についていけなくなってしまいます。それなら、試験で落ちてしまったとしても自分のレベルに見合ったクラスに所属したいと考えています。」
「……分かりました。ただ、口添えだけでもさせて頂けたらと思います。」
「…それだけでしたら。」
「…承知しました。今回はこれで失礼します。」
黒沢さんはそう言った。
だけど、その目はどこか諦めていなかった。
ただ、そう言って黒沢さん達は去っていった。
◇
「アルト!よく言ったそれでこそ俺たちの息子だ!」
義父さんはそう言って僕の頭をガシガシ頭をなでてくる。
義父さんは顔をぐしゃぐしゃにしながら笑っていた。
少し恥ずかしいけど、僕は抵抗はしなかった。
「……ほんと、大きくなったなぁ。」
「そうね、特別なのは仕方ないとして、それを当たり前にしちゃいけないわ。」
僕も義母さんの言う通りだと思う。
ついこの間まで、ただのニートだったのに、いきなり特別扱いされても正直困ってしまう。
その特別を利用してこないこの義父さん達に本当に感謝をしなくちゃいけない。
「…義父さん達のおかげだよ。」
僕は聞こえないようにボソッと呟いたつもりだったけど、義父さん達には聞こえていたようで義父さん達がブワっと泣き始める。
「子供の成長は早いものだね、母さん」
「えぇえぇ、そうねお父さん」
◇
その日から僕はヒナさん、サクラさん、そして意外なことにリオさんが試験に向けて協力してくれた。リオさんは能力を無くした僕に興味はないと思ったから。
話を聞くと、能力のことは残念だけどかわいい後輩のために一肌脱ぐとのことだった。前は何か急いでいた気がするけど、そこまで緊急性が無いのかもしれない。
僕の方はというと、やはり、魔力視は使えず苦労はしている。
「違う違う!アルト君、足から力入りすぎ!」
「っ……!」
魔力視に頼れなくなった僕は、以前より遥かに動きが鈍かった。
「能力がなくても戦えるやつは戦えるよ?」
リオさんは木刀を肩に担ぎながら言った。
「逆に能力頼りのやつは、失った瞬間終わる。」
最初はまともに避けることすら出来なかった。
だけど、今は相手の重心や視線を少しだけ読めるようになってきた。
試験当日PM
僕はヒナさんと試験会場に入る。
冒険者学校はガラス張りの建物でどこか渋谷区役所に似ていた。
それに、校庭、体育館、プールも完備しており設備はとても充実している様だった。
「アルト君の試験会場は校庭でするようだからこっちだよ~!」
「ついて来て貰ってあれなんですけど、ヒナさんは授業はないんですか?」
「冒険者学校は午前中しか座学はなくて、午後からは冒険者稼業でもいいし、学校に残って部活動に励んでもいいんだよ。」
「なるほど。」
僕たちは、そんなたわいのない話をしながら試験会場に入った。
校庭に入ると一人の男性が校庭の真ん中に立っており、こちらを見てくる。
あの人が僕の試験官かな?
「…えっ?なんで…」
ヒナさんが驚いてその男の人を見ていたので改めてその人のことを見る。
校庭の中央には、やはり一人の男が立っていた。
黒いジャージ姿。
なのに、その場の空気だけが妙に張り詰めている。
「…武田先生」
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