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現代冒険者のすゝめ ~高校受験に落ちた僕、冒険者になってみた!~  作者: あっかんべー


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第19話 吉報《リスタート》

深夜の苦しみを乗り越え僕は朝を迎える。


朝日が白いカーテンを透かし、病室の床に淡い橙色を落としていた。

僕は昨日より落ち着いてヒナさんの置いて行ったナイフの包みを見る。


壊れちゃったなぁ…。義父さんになんて顔して合えばいいんだ…。


やはり気になるのは、工面してくれたお金を無駄にしてしまったことだ。

このナイフは格安で購入して5000円だったけど、初めての武器ということもあって思い入れがあった。


アクリさんにもせっかく割引きして貰ったのに…。

これも僕の判断が甘かったからかぁ…。


朝食を食べ、ただ空を眺めていたら扉がノックされる。


コンコンコン


誰だろうか。ヒナさん?佐藤さんか?それとも、リオさんかな。


「アルト、起きてる?」


「アルト大丈夫かい?」


「義父さん…母さん…」


扉が開きそこにいたのは義父母であった。


「義父さん…義母さん…」


義父さんが目を赤くしながら言ってくる。


「…心配したんだぞ…。」


「…ごめんなさい。」


僕にはそれしか口に出来なかった。


そうだ…。僕は義父さん達と約束をしていたんだ…。

必ず、家に帰るって…。


「…話はある程度来たんだ。アルトが人のために戦ったって…。」


「…。」


「正直…俺は怖いよ。人助けは良いことだけど、それでアルトが帰らない人になったりすることを考えると…。でも、頑張ったんだな、アルト。」


義父さん…。


「私たちは、無茶をした貴方を叱らないといけないの。人助けもいいけど…自分を大切にして…アルト。」


義母さん、ごめんなさい。

僕も別に無茶をしないでよかったなら無茶はしないよ…。

でも、あのイレギュラーは僕のせいで起きたものだったから…責任を取りたかったんだ…。


「…ごめんなさい。」


バンっ!


扉が勢いよく開かれる。


「田中様!朗報ですよ…!」


「あ…佐藤さん。」


しんみりしているところに佐藤さんが勢いよく現れた。


「審査は無事通過しま――」


佐藤さんはそこでようやく場の空気に気づいたらしく、気まずそうに咳払いをした。


「…失礼しました。…田中様!難度審査無事に通過しましたよ!」


言い直してもなお、口調は明るいものでやや湿っていた空気感を吹き飛ばしていく。


それを伝えに来てくれたのか…。

佐藤さんはとてもやさしい人だなぁ。


「…わざわざ、知らせに来てくれたんですか?」


「…あんな大事になってしまったので、お知らせしておくべきかと思いまして…。」


「佐藤さん…ありがとうございます。」


「いえいえ……それに一部条件がありますし。」


「えっ……?」


一部条件……?

何だろうか。


「えっと……その…申し上げにくいのですが、田中様は今回のイレギュラーの原因の元として、上層部の方々は判断能力に疑問の声がありまして。」


「……。」


それはそうだ。だって、今回のイレギュラーは僕がマグマトードを逃がすと判断をしたせいで起こってしまったのだから。


犯罪行為になるのかと僕はヒヤヒヤしていると佐藤さんは首を横に振りながら説明をしてくれた。


「いえ、犯罪にはなりませんよ?そんなことで犯罪になってしまったら、日本各地のダンジョンが犯罪だらけになってしまいますし。……話を戻しますね、難度申請は許可するけど、一定期間申請許可持ち冒険者と同行することで経過観測を行うものとして申請認定が決まりました…。」


「…つまり、一人じゃなくて複数人と入ればいいと?」


「そういうことになります。田中様の場合、白川様達と一緒に入れば認定済みという扱いになります。」


「…なるほど。」


「でも!でも気を落とさないでください!一定期間問題がなかった場合、申請が認められますので!諦めずにどんどんダンジョンに潜っていってください!」


佐藤さんは僕を励ますように言ってくれているが、状況が悪かった。

僕は、そばにいる義父さん達の顔を見る。


とても複雑そうな顔をしていた。

そりゃそうだ、こんな怪我をしているのだから。


「…ありがとうございます。」


とりあえず、お礼を伝え佐藤さんは病室から出て行った。


「…とりあえず、おめでとう。」


義父さんがそう口を開く。


「ありがとうございます、義父さん。」


「アルトは、知らないうちに誰かに応援されるくらい人間関係が築けるようになっていたんだね。」


「……?」


「ハハハ、分からないか。前のアルトだったら人と関わらないようにしていたから、誰にも応援もされなかったよな。」


仮にも保護者にそんなこと言われてしまうと反応に困ってしまう。


「……。」


「いや、このご時世それが悪いとは言わないよ?でもね、冒険者を始めてからアルトは明るくなっって人と関わるようになった。……冒険は楽しいかい、アルト?」


何を問われているのかは僕には良く分からなかったけど、冒険は未知との遭遇みたいでとても楽しいと思える。

だから、僕の答えは決まっている。


「はい…!とても、やりがいがあって楽しいです。」


そう、冒険はとても楽しかった。

怪我をしたり怖い思いをしたりしたけど、これだけは言える。

それに、僕はダンジョンに呼ばれている感覚がある。

その謎を解き明かしたいと考えている。


「そうか。……そうかぁ、ん~じゃあ俺からいえることは特にないかな。」


「えっ?」


「子供のやりたいことを潰す親がどこにいるんだい?」


僕はてっきり冒険はもうやめろと言われるものだと思っていた。

それなのに正反対のことを言われてしまって戸惑ってしまっている。


「母さんは分からないよ?でもね、俺はアルトの楽しいって気持ちの邪魔をしたくないんだ。母さんはどうかな?」


「……アルトが怪我をするのが怖いわ。」


「…。」


「でも、それ以上にアルトの顔を見ていると私にもアルトの冒険を邪魔をしたくないわ。」


「ごめん、義母さん。」


「アルトを責めているわけじゃないわよ?でも、私もお父さんと一緒、アルトの楽しいことを邪魔したくないの…。だから、アルト、怪我はしてもいい、誰かを守りたいのなら守ってもいい、だけど、絶対帰ってくることを約束してほしいの。出来るかしら?」


「…絶対なんて約束はできません。…でも、帰れるよう最大限の努力は約束できます。」


「分かったわ、それなら、この約束は絶対に守ってもらうわよ?」


「……はい。」


僕は新たに約束をしてしまった。

でも、この約束は僕にとってもとても、そう、とても大切なものなんだと思う。



そして、月日は流れるのは早いもので、僕の退院の日がやってきた。

月日と言っても、2日程度だけど。


「退院おめでとう、アルト君!」


「ありがとうございます、ヒナさん」


退院の日は、ヒナさんが来てくれて鈍った身体の調子を見てくれるとのことだった。だから、このまま荷物は義父さん達に預け僕たちは渋谷区役所に向かうのだった。


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