第14話 難度審査とあの日の仕返し
朝目を覚まし僕はベッドから立ち上がりリビングへ向かう。
「おはようございます。」
「「アルト、おはよう」」
リビングには、義父さんがおり義母さんはキッチンに立っていた。
「今日は早いのね、何かあるの?」
「今日はダンジョンの奥に潜るための難度証明書を取得するために審査があるんですよ。」
「おぉ!頑張っててね!」
「…ありがとうございます。」
僕は朝食を食べて家を出る。
「…行ってきます。」
◇
正午渋谷ダンジョン入口に行くと受付嬢さんが既にいて僕を待っていた。
「おはようございます、今日はお願いします。」
「あっ、田中様おはようございます。今日は審査頑張りましょう!」
受付嬢さんはいつも通りの服装で区役所の制服を着ており、いつもそのまま流している髪はポニーテイルにしている様だった。
腰には鞭を持っていて一応戦えるようにしていた。
その視線僕のに気づいたようで受付嬢さんは声を掛けてくる。
「…戦闘面はあまり期待しないでくださいね?それに審査なので基本一人で戦ってもらいます。」
「あっはい、問題ありません。」
昨日のヒナさんの訓練で少し自信がないけど、第三層には何回か言っているから大丈夫だと思う。
「それでは、行きましょうか。」
「分かりました、受付嬢さん」
「あっ、名前教えていませんでしたね、佐藤エリナって言います。」
「…分かりました、佐藤さん。」
「では、今度こそ行きましょうか。」
「はい!」
そうして、僕たちはダンジョンへ入っていった。
◇
いつもと同じく渋谷ダンジョン第一層にはスライムしかおらず難なく突破する。
「この辺りは問題なさそうですね。」
「…まぁ、スライムなので。」
「スライム相手でも油断しちゃだめですよ?窒息攻撃に溶解液を飛ばしって来ますからね。」
「ありがとうございます。気を付けます。」
そんなに警戒する意味あるのかな…?
スライムは一撃で倒せるし、小さな子供より移動速度は遅い。
でも、佐藤さんが言うんだから注意するべきだろうか。
いや、昨日ヒナさんに油断を指摘されたばかりなのだ、しっかり注意しよう。
そのまま第二層の階段を下りる。
第二層からはスライム以外が出てくるようになる。
ゴブリン、シャドウ、角ウサギが出てくる。
でも、メインはスライムとゴブリンらしい。
「田中様ここからは魔物の種類が多くなりますので注意して進んでくださいね?」
「分かりました。」
最初に現れたのはやはりゴブリンだった。
僕は近くに落ちていた石を拾いゴブリンへ投擲した。
昨日のヒナさんとの模擬戦で、ヒナさんは環境をうまく使って戦っていた。
なら僕もあの悔しさを利用してバネにしなくてはヒナさんに申し訳が立たない。
「ふっ!」
石は真っすぐにゴブリンの頭を打ちぬく。
石がゴブリンを貫通した?…力が上がっている?
「おぉ、凄いですね!もしかして、昇華してますか?」
「昇華?」
「知りませんでした?モンスターを倒すと倒した個体から精神エネルギーが抜けて討伐者にそのエネルギーが移ります。そのエネルギーを経験値と呼びます。冒険者はその経験値を貯めることにより昇華することがあるんですよ。」
「なるほど…。」
やっぱり僕は知らないことが多い。
ヒナさんと佐藤さんからも学ぶことが一杯ありそうだ。
「じゃあ、モンスターを見かけたら討伐した方がいいんですかね?」
「そうですね、見逃しても後続の人が苦労するだけなので出来るだけ討伐した方がいいですね。」
…この間マグマトードを見逃しちゃったけど、討伐した方がよかったかな。
まぁ、過ぎた話は仕方ないし今は審査に集中しよう。
次に現れたのは、第二層ではレアモンスターのシャドウだった。
大きさはゴブリンと変わらないが、身体が魔力で出来ており物理攻撃が効きづらいらしい。さっきのように石を投げるのは効かなそうだ。
だけど、僕にはアクリさんから買ったミスリルナイフがある。
ミスリルは魔力伝導率が高いと言っていたし、魔力体にもきっと効果はあるだろう。
それに僕には魔力の流れを見ることが出来る、これで弱点をつけばきっと討伐ができるはずだ。
シャドウは影の身体を揺らしながらこちらに迫ってくる。
ゆらゆらと体の輪郭がぼやけており距離感が掴みづらいが、僕は今持てる限りのスピードを持ってシャドウに迫る。
「ここだっ!」
首元の下に微弱だが魔力溜まりが見えた。
僕はそこにミスリルナイフをねじ込む。
「uuuu!」
シャドウは声にならない音を鳴きながら消えた。
シャドウは身体が消えるのか…。
「シャドウも問題なしっと」
佐藤さんは今の戦闘の記録を取っていた。
…今のところは問題なさそうだ。
「佐藤さん、シャドウの討伐証明部位ってあるんですか?」
「シャドウは討伐後、僅かな時間でのみ身体から鱗粉を散らしますのでそれが討伐部位証明になりますね。魔力媒体としては結構人気の品なんですよ?」
なるほど。
魔力媒体は今まで関わったことがないからないから分かないな。
サクラさんあたりなら何か知ってそうな気がする…今度聞いてみようかな。
「角ウサギはまだ出会っていませんが、見た感じ問題なさそうなので第三層に進みましょうか。」
「分かりました。」
二層の合格サインが出たので三層の階段の方に向かう。
◇
一時間ほど掛けて第三層への階段につき先へ向かう。
「…今回は田中様のお仲間いませんが、本当に問題ありませんか?」
「はい、問題ありません、進みましょう。」
「…分かりました、進みましょう。」
そして、僕たちは三層への階段を下る。
「第三層からは、素早いシャドウウルフが出てくるので気を付けてください。」
前に来た時に倒したことがある魔物である。
「その他に気を付ける魔物はいますか?」
「シャドウウルフの他だとアントですかね?大群で襲ってくるモンスターなのでかなり危険なモンスターになります。」
「…大群ですか?」
「大体20~30体で一つの群れを形成していていますので、今回は二人だけですし審査の対象外ですので気配を感じたら避けるようにしましょう。」
「…分かりました。」
確かにここまで来たことはあるけど、30体なんて数に襲われたら…僕だけだったら何とかなるかもしれないけど、今回は佐藤さんがいるからそうもいかない。
出来るだけ、気配に注意するようにしよう。
注意しようと思っていた、思っていたけど魔物が現れない。
さっきの会話からしばらくたったが、魔物がどこにも現れなかった。
おおよそ1時間程たっているのにだ。
「…モンスター出ませんね。」
「…何かのイレギュラーでしょうか?」
「大きなイレギュラーでなければ、我々職員の方でも把握できませんので小規模なものかと思います…。」
小規模なイレギュラー、か。
退散するか、進行するか、どうしようかと考えていたら通路の奥から足音が聞こえてきた。
「佐藤さん奥の方から足音が聞こえますっ。」
「…足音ですか?」
足音から察するに4人くらいの人間かと思われる。
前にヒナさんが言っていた、ダンジョン賊がいるということを。
だから、僕はナイフを構え前方に注意した。
そして、その姿を現した。
その姿を見て僕はその人たちに急いで近づいた。
なぜなら、その人たちは全身傷だらけの上火傷をしていたから。
20代後半くらいの男女のグループだった。
「大丈夫ですか!」
「…に、逃げろ!」
「えっ?」
僕はいきなり怒鳴られ一瞬止まってしまう。
その瞬間、グループを頭上を越えて僕に向かって赤い液体が飛んでくる。
止まってしまった僕は反応が間に合わず左腕に液体を浴びてしまう。
「っ!熱いっ!」
「田中様っ!」
佐藤さんが僕の方に駆けてくる。
僕は左腕を庇いながら、攻撃が飛んできた奥の通路見た。
ぬちゃ…ぬちゃ…と湿った音が通路の奥から響く。
「…ま、マグマトード?」
そこに見えるのはあの日見逃した魔物だった。
しかも、数匹ではなく30匹超える大群で。
「…か、カエルの仕返し。」
青い顔をした佐藤さんがボソッと呟く。
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