第12話 試験内容と模擬戦
「おそらくなんですが、アルト君の場合渋谷ダンジョンの第三層のゴーレム、第四層のフレイムリザードを討伐しているので一部試験免除されると思います。残りの試験としては、対人試験があると思います。」
「対人試験?」
「学校の先生と決闘方式で試験を行うんですよ。」
「対人での試験があるんですか?」
人間同士の戦いに何に必要性があるのだろうか?
冒険者はダンジョンに潜って魔物を討伐するのが仕事だろうに…。
「アルト君、対人経験は大切なことだよ?」
「…何でですか?」
「まずまず、型なんてないけど人型の魔物だっているし、それにダンジョンで襲ってくるのはモンスターだけじゃないの…。」
「…人間が襲ってくるんですか?」
「…うん。ダンジョン荒らしやダンジョン賊って呼ばれたりしているよ。」
「……。」
「攻略情報を奪ったり、アイテムを横取りしたり。最悪、殺されることもある。」
ダンジョン荒らし、ダンジョン賊…。
なんで魔物に襲われているのに人間にも襲われるんだ…。
皆で助け合えばいいのに…。
「まぁ、でも、対人戦をする一番の理由は単純な戦闘力を見るためだよ?」
「…。」
あまり人と戦いたくないなぁ…。
最近冒険者を始めたけどどうやら僕は普通より強いみたいだし…。
怪我とかさせちゃうかもしれない。
「…お母様、アルト君をちょっとお借りしてもいいですか?」
「えぇ大丈夫だけど、どこかに行くのかしら?」
ヒナが少しだけ笑った。
「学校の対人試験対策とギルドに行ってランクの更新をしようと思います。」
「……対策?」
「はい。アルト君、多分このままだと試験落ちると思いますので。」
◇
義母さんを家に残し僕とヒナさんは渋谷区役所に向かった。
道中先程の話が気になり僕はヒナさんに声を掛ける。
「…ヒナさん、何で僕は試験に落ちるかもしれないんですか?」
「まだ、秘密だよ~、自分で気づかないと意味ないからね!」
「…後で教えてくださいね?」
「ふふん、任せなさい!そこを気づかせてあげるのが先輩冒険者の役目なのです!」
ヒナさんは胸を張り僕にそう言ってくる。
僕のダメなところかぁ…色々あると思うけど、冒険者としてはないと思うんだけどなぁ。
「とりあえず、カードの更新だけやって、区役所の訓練場に行こっか!」
「…?分かりました。」
前回は使用しなかったが、渋谷区役所の1Fには訓練場の設備があるらしい。
他の役所だと足元が砂場だったりするらしいけど、渋谷区役所は体育館とゴムチップで出来ているみたいだ。今回使用するのは体育館の方らしい。
そうこうしている内に区役所が見えてきた。
そのまま3Fに上っていき番号札を取る。
今日は人が少なくすぐに僕の番が来た。
【12番号札お持ちの方は冒険者カード更新カウンターまでお越しください。】
促されるままに冒険者カード更新窓口に向かう。
そこにいたのは、以前冒険者登録した時の受付嬢だった。
「あら、貴方は…この間振りですね、今回は、冒険者カードの更新ですね。」
「はい、冒険者カードの更新をお願いします。」
…なんで、ヒナさんが言うのだろうか…。
受付嬢は僕のカードを受け取るとそのまま読込機と思われるものにカードを入れた。
「え~と……は?もう渋谷ダンジョンの第四層までいかれたんですか⁉まだ、難度証明書持っていませんよね!?」
「その…難度証明書はその内取得しようと思っていたのですが、最近あまり時間が無くて…。」
「ルールというよりも冒険者の方々を守るための制度なので絶対に申請してください!…絶対ですよ?」
…係りのおじさんは通してくれたのに…。
こんなに言われるのならば近いうちに難度証明書を申請した方がいいのかもしれない…。
「もうっ!とりあえず、討伐記録を参照しますので、討伐証明部位の提出をお願いします。」
「あっ、サクラから預かっているから、うちの方から提出するね。」
そう言ってヒナさんは背負っていたリュックから一緒に潜ったときの取得物を並べていく。
「アシッドスライムに、ゴブリンナイト、ゴーレム、フレイムリザード、マグマトード…。田中君!あなたはまだFランクなんですよ!こんな危ないモンスターは推奨範囲にありません!無理しないでください!」
…怒られてしまった。
前にもヒナさんに注意されたことがあったことを思い出しヒナさんに声を掛ける。
「あの、ヒナさん。ヒナさんは渋谷ダンジョンの難度証明書を持っていましたよね?どうやって、取ったんですか?」
「あぁ、あれね。アルト君はまだ持っていなかったね。申請して職員さんと三層に潜って採取すればいいんだよ!その時は、私はついていけないんだよね。」
「…なるほど、分かりました。ありがとうございます。」
つまり、職員さんと1対1でダンジョンに行かないといけないのか…。
三層というとアシッドスライムとゴブリンナイトがメインのはず、うん、問題なさそうだ。今度取得しよう。
「職員さん今申請の手続きできますか?」
「え?今されるんですか?」
「冒険者学校に行きたくて…。」
「あぁ、特待生制度を狙っているんですね!承知しました、申請は私の方で行わせていただきますね。同行審査の日程はいつにされますか?」
「一番早くていつ頃いけますか?」
「少々お待ちください…空いてる職員は、と…。半年後に実施可能な職員を見つけましたが、いかがでしょうか?」
半年…。
そんなに待つものなのか…。どうしよう。
「…私でよければ、明日にでも可能ですよ。」
「えっいいんですか?」
受付嬢さんが僕の顔見て提案をしてくる。
どちらかと言えば、顔に出づらい方だと思っていたけど、そんなに顔に出ていたかな。
「私も職員ですし、一応数年前まで冒険者をしていましたので同行可能ですよ。ただ、私は戦闘要員ではなかったので本当に補助という形になりますよ?それで問題なければ。」
「元々一人で三層まで行けるので問題ないと思います。お願いしてもいいですか?」
「承知しました。でしたら、明日の正午から審査を行わせていただきますね。」
「ありがとうございます。とても助かります。」
思わぬ助けで明日審査を行ってもらえるようだ。
四層までは言ったことがあるので問題ないだろう。
「いえいえ。では、カードを更新しますね。」
「あっお願いします。」
受付嬢は読込機からカードを取り出し記入機の方へ席を立った。
すると、ヒナさんが声を掛けてきた。
「…大丈夫なの?戦闘を完全に一人でやらなきゃいけなくなるよ?」
「既に数回行っているので問題ありません。」
「ん~気を付けてね?」
「ありがとうございます。」
ヒナさんは何を不安視しているんだろう?
一緒に探索行ったときと同じじゃダメなのかな?
「お待たせしました。」
受付嬢さんが戻ってきたようだ。
「凄いですよ!FランクからDランクまで一気に上がりました!快挙ですよ、快挙!」
「…普通に探索していただけなんですけどね。」
受付嬢さんが大きく話していたせいで周りの人たちに聞こえていたようで少しざわめいた。
僕は少し恥ずかしく、そそくさとカードを受け取る。
カードが変わるわけではない様でこの間発行してもらったカードと同じものが返却された。一応カード内容を確認した。
~田中 アルト 16歳~ Dランク
加護 :天照大御神
スキル:?????の記憶(解放率15%)
…解放率が増えてる。
特に変わったところとかはないと思うのにスキルだけ成長している…。
「アルト君、おめでとう!」
「あっ、ありがとうございます、ヒナさん。」
ヒナさんはやっぱりスキル欄が見えていないようだった。
見えていたら、何かしら反応すると思うし。
「じゃあ、更新も済んだし訓練場の方に行こっか!」
「分かりました。」
「田中様!明日の正午渋谷ダンジョンで入り口でお待ちしていますね!」
「分かりました。明日はよろしくお願いします。」
◇
ヒナさんに連れられて1Fの訓練場についた僕はヒナさんに尋ねた。
「ヒナさんここで何をするんですか?」
ヒナさんは数歩前に歩いていき僕の正面に立ち僕を見てくる。
「これから、うちと模擬戦をしてもらいます。」
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