第116話 エルフ族の歓迎と宴
んんん~…。
僕はぼやけている視点を徐々に合わせていく。
「……っ。」
えっ…。
なんで僕は立っているの?
「……アルト君、戻ってきた!?」
声がする方向を見ると小林さんが僕を羽交い絞めにしており僕は身動きが取れないようにされている。
えっ…本当に何で?
僕は小林さんに羽交い絞めにされているの?
「……小林さん、これは?」
「……アルト君が寝ぼけていたから、動きを止めていただけだよ、アハハっ。」
「……ああ、そういうことか。」
小林さんの目にはうっすらと涙が浮かんでおり、ここで何かがあったのは確かなのだろう。
でも、小林さんが事実を言わないってことは隠したいことなのかな?
詳しくは聞かない方がいいのかな…?
「アルト君っ大丈夫っ?意識はあるっ?」
「……あるよ?小林さんの声…聞こえていたよ…その、ありがとう、小林さん。」
「よかったっ!!」
小林さんが、腕を緩めた。
「……心配したんだよ?なかなか目を覚まさないからっ!」
「ごめんなさい…でも、小林さんとまたこうして会えてよかったよ…。」
「本当に?」
「本当に。小林さんの声があったからこそ、戻れたようなものだよ。」
小林さんが、少し目を赤くし僕に抱き着いてくる。
女子って何かとあると抱き合っていたけど…。
男子にもこんな風に抱き着いてもいいものだろうか?
僕はどうすればいいのか分からずあたふたしてしまう。
「……泣かないで?」
「泣いてないよっ!…いや、泣いてるよっ!慰めてっ!」
「……。」
「ほらっ早くっ!目の前で女の子が泣いているんだよ?」
なんだなんだなんなのだ…。
今までの人生でここまで女子に言い寄られた経験がないよ?僕は。
小林さんの頭が僕の胸元にぐりぐりと押し付けらていたので、もしかしたら、頭をなでればいいのだろうか?
いや、でも中学時代にクラスの男子が女子の髪に触れてすごくキレられていたような…?
いいのか?頭を押し付けられているし、いいんだよね?触るよ?大丈夫?
僕は小林さんの頭に優しく手をのせゆっくりと動かした。
「……本当にありがとう、小林さん。」
「ぬふぅ…どういたしましてっ!」
よかった…どうやらこの行動は正解だったようだ。
女子の頭を触るなんて今後ないだろうなぁ。
ましてや、小林さんみたいな可愛い人になんて。
「……んんっ!」
石造りの扉の前に、族長がわざとらしく喉を鳴らす。
彼女は腕を組んで、こちらを見ており…ってか、そんなとこでずっと見ていたの??
とても、恥ずかしいのだけどっ!?
「……目が覚めたか。」
「……は、はい。」
「祠の外から見ていたぞ。目覚めるのが遅いのではないか?王の器よ。」
「……ずっと見られていたんですか…。」
「概ねはな。」
族長が、扉から離れて近づいてきた。
祠の中に不通に入ってこれるのか。
ってきり入ってこれないのかと思ったよ…。
「試練は完了した、よくやったっ!」
「……ありがとうございます。」
「今日からお前たちは、我らの友だっ!」
族長が、はっきりと集落中に聞こえるようにそう言った。
集落のエルフたちが、それを聞いてにこやかに頷いている。
「……友、ですか。」
「そうだ。試練を経た者だけが、我らの友となれるのだ。」
「……光栄です。」
言いながら、僕は内心では少しだけ憤慨する。
こんな試練をさせておいて、素直に、はい、僕たちは今日から友達ですっ!、なんて言えるものではないと僕はどうしても考えてしまう。いや、成長に繋がる貴重な体験であったことは認めるし僕の記憶にまつわることも知れたし大幅にプラスになったと言えるのだろう。
しかしだ、やはり自分の嫌な記憶を見るのは気分がいいものではないよ…。
でも、この閉じた集落で波を立てたくもなかったし、目の前の族長も、周囲のエルフたちも、良かれと思ってやってくれているのは分かる。
小林さんが試練を受ける前よりもなぜかいきいきとしているため、文句を言うことでもないか、と何とか思い直す。
「……友とやらになりましょう。」
いや、思ったよりとがった返答になってしまった…。
いや、悪気があるわけじゃないんですよ?でも、嫌なものは嫌だったんですっ!
「その顔は、不満があるな。」
「……少しだけ。」
「正直だな。」
「……嘘をついても仕方ないので。」
族長が、少し笑う。
良かった…気分を害したわけではなさそうだ。
ここで、グサッとやられるわけにもいかないし…。
「……気持ちは分かぞる。いきなり試練に放り込まれれば、誰でも不満を持つ。だが、これは必要なことだった。」
「……分かっています。」
きっとこれは、アルディスも受けた試練なのかな…?
みんな平等に受けているのなら、少しは溜飲が下がるというものだ。
「それが分かっているなら、十分だぞ。」
族長が、空を見る。
「……もう夜になった、か。」
見ると、窓の外が暗くなっていた。
「まぁ、試練の時間はそれだけかかる。今夜は、歓迎の宴を開くぞ。」
「……宴、ですか?」
「友を迎える時の、我らの習わしなんだ。」
「……ありがとうございます。ただ、その前にもう一度確認させてほしいことがあるんですが。」
試練を僕たちは乗り越えたんだ。
もう一度確認したって問題ないはずだ。
試練を受ける前に彼女がそう言ったんだからね。
「何だ?」
「……仲間とはぐれてしまっていて。それと、探している人がいます。」
「…神崎トシヒコ、だったか?」
よかった、一応はちゃんと話を聞いていてくれたようだ。
これなら話を進めることが出来そうだ。
「……はい。それと、仲間が4人、別の場所に転移してしまっていて。」
「……宴の席で、知人に確認を取ろう。この集落の者たちは、アルカディアの各地に繋がりを持っているから、何か分かるかもしれない。」
「……ありがとうございます。」
「礼はいい。まず、宴の準備だっ。」
族長が、踵を返した。
「……体を清めてから来い。服は用意させる。」
「……分かりました。」
「小林ナユタ、お前もだ。」
「……はい。」
僕は小林さんが族長さんの声に反応したことに反応してしまう。
驚き彼女顔を見るとニシシっといたずらに笑う彼女の顔がそこにあった。
どうやら本当に言葉が通じているようだ。
試練の副作用だろうか?まぁ、言葉が通じるようになったのなら、通訳はもう必要ない、か。
再度隣の彼女の顔を伺うと小林さんが、少し楽しそうな顔をしていた。
「アルト君、宴だってっ!」
「……そうみたいだね。」
「……異世界の…そ れ もっ!エルフの宴って、どんな感じかなっ!」
「……分からないけど、楽しいといいなぁ。」
小林さんは異世界ハイテンションに陥ってしまっているようだ…。
僕も少しだけだけど、異世界が気になっていたので…その、楽しみです。
――宴か…参加しようかな。
――ふふふ、いいこと聞いたのだわぁ?
――むむむ…まぁ、アルトに会えるのならこやつがいても我慢するかの…。
――あらぁ?殊勝なのだわぁ?
――我慢…我慢するのじゃ、妾…。
面白いと思ったら、レビュー、コメント、フォロー、評価をお願いするのだわぁ!
とても、励みになるのじゃっ!




