第115話 Huh, Dad? Mom? What on earth is this...?
「……な、何この記憶はっ!?」
「驚くわよねぇ。」
お父さんが、笑っている。
記憶の中のお父さんのように穏やかに笑っている姿が似ても似つかないほどに。
魔物を切り殺しながら、笑っていたのだ…。
その光景はどう考えても普通じゃなかった。
……普通に思えなかったんだ…。
「……お父さんが、強すぎるっ!?」
「……そうねぇ。」
おそらく…いや、間違いなく武田先生よりも強い…。
神様の加護を使っている様には見えないけど、明らかに動きが人間の限界を超えていた。
潜在解放をしている"僕"と同等程の速さを持っているのは確かだ。
あれっ?お母さんはっ?
お父さんが普通でないのは分かった、だが、お母さんはどうなのだろうか?
お母さんは…見つけたっ!
お母さんは、車のそばで子供の【僕】を守るように立っていた。
……お母さんも、普通じゃなかった。
魔物が近づこうとするたびに、何かを使って弾いていた。
薄いシルクのような光が【僕】とお母さんを完璧に守り抜いていた。
よく見るとその光の『質』に僕は見覚えがあった。
神威…。
明らかに神性を帯びている光をお母さんが宿しているっ!?なんで??
「……お母さんもっ!?」
「2人とも、普通の人間ではなかったのだわぁ。」
映像が、そこで止まってしまった。
「……つまり、お父さんとお母さんは、魔物に食べられていないっ!?」
「その可能性が高いのだわぁ。だって、あそこまで強いのにあのレベル帯の魔物に負けるわけなのだからぁ。」
「……でも、最初の試練で見た映像では、食べられていましたよっ!?」
「そうねぇ。つまり、どういうことかしらぁ?」
「……偽物の記憶を、植え付けられていたっ?」
「私もそう推測するのだわぁ。」
クロノリアはそう言ってニヤニヤ笑っていた。
この感じ初めから知っていたのか?
では、何のためにこの光景を僕に見せたのだろうか?
「……誰がっ。」
「誰かが、アルトちゃんの本当の記憶を封印して、偽物の記憶を植え付けたのだわぁ。」
「……何のためにっ!?」
クロノリアが、少し考えるような顔をした。
「……それは、私には分からないわぁ。でも、一つ言えることがあるのだわぁ。」
この口調はおそらく真実を知っている……。
しかし、素直に僕に教える気はないのだろう…。
くそっっ!
「……何ですか?」
「わざわざそんなことをする必要があったということは、あなたに本当の記憶を知られたくなかった何者かがいるということなのだわぁ。」
「……誰が、そんなことを。」
「私には分からないのだわぁ?」
くそっ!勿体ぶりやがって。
当てずっぽうで僕は答えてみる。
――いや、答えてしまった。
「……僕自身の親がやった、とか?」
「ふふふ、なのだわぁ。」
「……なんでっ。なんでっ、そんなことを。」
「知らないのだわぁ。でも、一つ疑問が残るわよねぇ。」
「……何ですか。」
「お父さんとお母さんが魔物に殺されていないとしたら、今まで何故姿を現さなかったのかしら。」
「……っ。」
この光景がショッキング過ぎて、そこまで考えが及んでいなかった。
そうだ僕の両親は生きているかもしれない…。
でも、それならなぜ、今まで一度も現れなかった?
「……8年以上、経ってます…。」
「そうよねぇ。」
「……義父さんと義母さんの家で、僕はずっと暮らしてきました。それを知っていたとしたら。」
「会いに来られない理由があった、かぁ。それともぉ?」
クロノリアが、続きを言わない。
「……それとも、何ですか。」
「私の口から言うことではないわぁ。それは、あなた自身が答えを見つけることよぉ。」
「……。」
王鍵を、もう一度見る。
手のひらの上で、静かに輝いていた。
この鍵が、封印を開いてくれたのだ。
しかし、今はこれ以上の答えは出てこないようで、何か必要なものが他にあるのだろうか…?
「……王鍵。」
「現実に戻ったら、そのことを考えなさいよぉ。答えは、きっとあなたの手の届く場所にあるのだからぁ。」
「……。」
「それと、一つだけ言っておくわぁ。」
「……何ですか。」
「偽物の記憶を植え付けるには、相当な力が必要よぉ。例え一人だとしても人間の記憶を書き換えるなんて、生半可な力ではできやしない。」
「……つまり?」
「あなたの親は、ただ者ではないし、それを実行した者も、ただ者ではないのだわぁ。」
「……っ。」
「……まあ、あなたもただ者ではなさそうだから、いいかしらねぇ。」
クロノリアが、また笑った。
今度は、少し柔らかい笑いだった。
いや、今はこれでいい。
これ以上に成果を求めるのは贅沢というものだ。
とりあえず、頭の隅にでも記憶はしておくけど、試練を乗り越えたことを喜ぼう。
「さあ、もう時間よぉ。現実に戻りなさい。」
「……はい。」
「あなたの試練は終わりよぉ。合格ぅ~。」
「ありがとうございました、クロノリア。」
「……ふふ、素直ねぇ。」
光が、また広がっていく。
今度こそ現実へ向かう光だと信じよう。
これ以上は流石に僕には耐えられないよ……?
あと――
「……お父さん、お母さん。…生きていたなら、いつか、会えますか?」
答えは、なかった。
一抹の疑問を残し光が、全てを包んだ。
――……【不在中】
――あらぁ?妾ちゃんいると思ったのだけど、いないのだわぁ?
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