第114話 クリア報酬:僕の封印されし記憶の一部を開錠
光が、広がっていき現実世界へ、戻れる。
そう思った瞬間だった。
「……ちょっと待つのだわぁ。」
クロノリアの声が聞こえ足が、止まる。
って言うか、巨星的に光が止まった。
振り返るとクロノリアが至近距離に立っており僕慄き少しだけ下がってしまう。
クロノリアから何か仕掛けてくる様子は見られないけど、まだ僕に何かあるのかな?
僕も疲れたし早く戻りたいと思っているのだけど…。
「……何ですか。」
帰還を止められたことにより少しだけぶっきら棒に返事をしてしまう。
これだったら、僕悪くないよね?だって、帰れるって時に呼び止められたんだから。
しかもこの人?からの試練から。
「……その王鍵、現実世界には持っていけないわよぉ。」
「……いえ、それは分かってますよ。アマテラスさんも言っていましたし。」
「なら、いいのだわぁ。まぁあ、力が追いついた時に、自然と現れるから、心配しなくていいけどねぇ。」
「……それだけですか?」
手のひらの上の王鍵を見た。
ただ豪華な鍵だと思っていた、僕の心具。
まぁ、そんなに思いれもないし、また、使えるようになるのなら別に困ることもあるまい。
「……また使えるんですよね。」
「条件が揃えばねぇ。」
「……条件?」
「今は、それだけ言っておくのだわぁ。」
クロノリアが、また少し笑った。
この人も、アマテラスさん…いや、いちいちめんどくさいなぁ、本神もいないし、アマテラさんでいいか。
この人も、アマテラさんもどうしてこうも回りくどい言い回ししかしないのだろうか?
尊大というか…いや、一応存在的に偉いんだろうけどさ。
「……それより、もう一つ言うことがあるのよぉ。」
「……何ですか。」
「あなた、自分の記憶の一部が封印されていること、知ってた?」
「……えぇ。」
「そう。さっきの女神にでも聞いたのかしらぁ。」
この口調…あまり、神様たちと仲が良くないのだろうか?
……神様と精霊の関係性とは?
クロノリアが、ゆっくりと歩いてきた。
そして、僕の方に触られ少しだけ、ドキッとしてしまう。
「試練の時にも思ったのだけど、一部の記憶が、外部から封印されているのだわぁ。しかし、アルトちゃんは運がいいのだわぁ、この王鍵でその封印が解除できるのだからぁ。」
「……外部から?」
開錠自体はできるとは思っている。
だけど、あの場所で僕の記憶を封印する必要がある人物がいたとは思えない…いったい誰が?
「そう、外部から。自分で封印したのではなく、誰かが封印したのだわぁ。」
「……誰かが、僕の記憶を…。」
「そういうことよぉ。」
「……何のために。」
「それは、私には分からないわぁ。でも、褒美というわけではないけれど、特別に夢の世界の時間を少しだけ延長してあげるのだわぁ。その封印された記憶を、世界として見せてあげるわぁ。」
「……そんなことまでしていただけるんですか?」
正直裏があるんではないかと勘繰ってしまう。
この人?ではないんだろうけど、この人?の関係者が僕の記憶を封じたとか。
「せっかくここまで来たのだから、ねぇ。」
「……何がしたいのか、よく分からないですが。」
「深い意味はないのだわぁ?ただ、見るかどうかは、あなたが決めていいわぁ。」
「……。」
僕は迷わなかった。
本当に自分の記憶が封印されているなら、それを知りたかったのだ。
「……素直ねぇ。」
クロノリアが、指をぱちんと鳴らす。
「……記憶の封印、開錠。」
これ…僕じゃなくても強制的に発動することが出来るのか…。
クロノリアが何らかの手法で王鍵を強制発動すると白い空間に、映像が流れ始め世界が移り変わり始めた。
「……っ。」
映し出された世界に僕は見覚えがある光景だった。
夜の渋谷の街に車があり、横転していて車の付近の街は破壊の限りを尽くされていた。
そして――
小さな子供が、車の中に身を小さくして隠れていた。
「……これは、試練の最初に見たもの、ですね。」
そう、この世界はD災害の夜だった。
僕にとって…初めてのトラウマになったあの時間だ…。
お父さんとお母さんが、魔物に向かって外に出ていった。
「……また、これを、見せるんですか?」
クロノリアに向かって言った。
「……なんてものを見せつけてくるんですかっ!?わざわざ――」
「少し、待つのだわぁ。」
「……っ。」
なんて奴だ…多少乗り越えられたとしても僕にとってあまり気分がいいものではない…。
こんなものを見せるためにわざわざ僕の期間を止めたというのか?
僕がクロノリアに文句を言おうとしたけど、クロノリアにより開いた口をふさがれてしまった。
まったく何なんだよ…。
僕たちが問答している間も世界は動いていた。
最初に見た時と、同じ場面が流れており――
魔物がどしんどしんっと音を立てゆっくりお父さんに迫っていく。
そして、お父さんが、前に出て。
ここで、お父さんが食べられる。
そう思った。
だって、僕の記憶ではそうなっていたから。
でも、この世界では違った。
「……えっ。」
お父さんが、戦っていたのだ。
魔物を、蹴散らし一体、また一体と魔物を、次々と吹き飛ばしていく。
「……な、何で。」
「……ねぇ、これが封印されていた本当の記憶なのだわぁ。」
「……お父さんが、魔物を?」
僕の記憶では、お父さんは冒険者でもないし、戦えるような人ではなかった。
しかし、目の前の光景では、お父さんが刀をどこからか持ち出し魔物達を蹴散らしていた。
その間も、お母さんと僕を庇うようにしていたけど、一切の隙も無く完璧に【僕】たちを守り切っていた。
「蹂躙してたわぁ。」
「……な、何この記憶はっ!?」
――アルト…知ってしもうたか…。
――…アルトにはずっと隠し続けるのは無理でしょう。
――でも、会いに行けないんだ、ごめんよ…アルト。
――そうじゃな…妾の方で面倒は見るがお主らも頑張るのじゃぞ?
――……えぇ、ありがとうございます、天照大神様。
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