第110話 天照大御神様《アマテラスさん》
えんあに促され僕は、再び未来の【僕】と向き合うこととなりましたよ…。
しかし、人数が増えたと言っても僕には武器がない。
素手で戦うことを余儀なくされ無手のまま【僕】に突撃をかますことにした。
拳を繰り出したけど、
【僕】に、それを掌で軽く受け止められてしまう。
「……っ。」
分かっていたことだけど、やっぱり…強い。
前に戦ったときよりも、更に目の前の【僕】は強い気がする。
クロノリアによると僕の記憶から召喚したと言っていたので、間違いなく東京ダンジョンの【僕】だとは思うけど…しかも目の前の【僕】は、
「……当然だよ。【僕】もアルト自身なんだから。」
何で喋れる…?
いや、前も最後の方喋ってはいたけど…いやいや、武田先生は喋っていなかったし、魔物化しているヒナさんも何も言わず未だにルージュが抑えられてる…。
クロノリアは見ているだけで何も教えてくれはしない…。
「……なんで、喋れるの?」
なので、本人に聞くしかなかった。
戦闘中に聞くことではないけど、もしかしたら何か特別仕様なのか?
「さっきだって【僕】と話してたじゃないか。」
「……さっき?」
「過去の夢の試練一緒に見てたし、最後【僕】と話していたよね?」
中身と外身がもしかして違うのか?
いや、元々中身がない器に【僕】の意識を注いだ?
ていうことは…。
って僕が考えている隙に【僕】が、こちらに踏み込んできたっ!?
拳が飛んできたので、躱したがその流れのまま今度は肘がっ。
僕はその肘打ちを受けたけど、受けた腕が痺れる。
この威力…間違いなく東京ダンジョンの【僕】のはず…。
でも、言動が、その行動があの時の【僕】とはまるで違う…。
それに、さっき【僕】が言っていた、
――過去の夢の試練一緒に見てたし、最後【僕】と話していたよね?
この言動だ。
つまり、少なくとも中身は、子供の頃?…いや、僕を夢の世界に閉じ込めた【僕】なのだろう。
こんなに戦えたのか…っ、まだ、腕がじんじんする…。
「……っ。」
「無理をしない方がいいよ?僕には、【僕】をまだ戦えないと思うよ?」
言動にやや、無邪気さと言うか、僕よりも子供っぽさが滲み出ている気がする…。【僕】はどういう状態の僕なんだ…?
分からない…でも――
「……たとえ、今の僕では勝てなくてもここで膝を折るわけにはいかないんだ…っ。」
「……どうして?」
若干の苛立ちを覚えたのか【僕】の口調が強くなる。
「……僕はここから、抜け出さないといけないから。」
「ここから出たとして、現実に戻って何があるだよっ。」
「……家族と友達が…そう、家族と友達が僕の帰りを待っているんだよっ。」
「……ふ~ん、そっか、そっかそっか。」
【僕】の目付きが、少し変わる。
元々好意的ではなかったけど、目を細め怒ってる?いや、これは――
「……お前には、家族友達がいるんだぁ。」
「……いるよ。」
「……妬ましいなぁ…。」
その言葉が、僕には引っかかる。
少なくとも【僕】は未来の僕ではない、のか?
だって、今の僕には義父さん達がいる、でも、目の前の【僕】はそれが妬ましいと言う…いや、落ち着け、だから何だって話だ…っ。
「…妬ましい、って?」
「……いや、何でもないっ!来てよっ!」
話を途中で切られ癇癪を起こしたかのように猛威を振るう【僕】。
今度は、さっきより速かく殴打が僕のお腹を穿つ。
「……っ、がっ。」
膝をついた僕に何か憎しみを込めた声で【僕】が語り掛けてくる。
「……お前には【僕】と違ってあともう一歩、足りないんだよっ。」
【僕】が膝をついている僕の前に立って再度お腹に蹴りを入れてくる。
「……ぐぇっ。」
「お前にはっ足りないんだよっ、全てがっ、殺す覚悟がっ、憎しむ心がっ!」
「……っ。」
何度も何度も何度も何度も何度も【僕】は無抵抗の僕を蹴り込んでくる。
な、んで?【僕】は、なんで、こんなに、何かを、恨んで、いるんだ、?
分からない、よ…。
「……っ!」
ここまで来ると、これ感情の嵐は【覇気】と言って差し支えないだろう。
僕はその【覇気】に気押されてしまい竦んでしまう。
「お前、何も出来ないんだね、僕なのに。」
こ、れは、心威、なの?
【僕】の感情を表すかの如く魔力がこの空間を歪ませビキビキと音を鳴らす。
「主っ!」
えんあ…?ダメだ、ここに来たら【僕】に殺されてしまうかもしれない。
「……今助けに行くっ。」
えんあが、ヘカトンケイルを溶岩で抑え、こちらへ向かってきてくれる。
えんあの身体が発光し武器化し宝魔短槍になり僕の手の中に収まった。
武器化っ!ここでも出来るのっ!?元の武器も無いのにっ!?
いや、ならば、まだ、ぎりぎり勝機が出てきたかもしれない。
大技を使って
「……こ、これならっ。」
踏み込み槍を構え紫煌を発動の予備動作に入ろうとすると――
――……待て、主
えんあの声が頭の中で響き渡る。
――あのピカピカの斬撃は使うな。ピカピカ斬撃だと我に負担が掛かって、穂先が持たない、砕けてしまうかもしれない。それは得策ではない。
「……っ。」
――神威解放は出来ないのか?
「……今の状況だと、時間がかかり過ぎて、【僕】相手に、そんな余裕なんて、ないよっ。」
――……。
「……えんあ?」
えんあの返答がないことに戸惑い槍を構えたまま、僕は固まってしまう。
そんな僕を見て【僕】は、砕かれた地面の破片を使い距離を保ちながら攻撃を加えてくる。
確かにそこには、力の差があり、明確な技の差があった。
僕は物を投げつけたことなんてないから。
「……僕と、何が、違うんだろう?」
――心の強さ…願う力の差が出ていると考えられる。
「……僕と、【僕】の願いの差?」
――そう
僕の皆の所に帰りたいと思う力が【僕】に負けている?
……看過できないっ!
例え、えんあだとしても、その言葉だけは認めるわけにはいかないっ。
――……経験値の差は、今はどうしようもない。
ならば違うところで勝負をしなくてはいけない。
「……。」
――よく考えろ。
絶対に何かしらに違い…主の方が秀でているところもあるはずだ。
槍を力づくで払い僕と【僕】の間に物理的に距離を空けさせる。
「……えんあ、さっき武田先生と戦っていた時、気づいたことがあるんだ。」
――それは何?
「……先生は、加護を持っていなかった。クロノリアが召喚したものだから、加護の力まで再現されていないのかもしれない。」
――時の大精霊さんって怖いんだね…。
――そうだな、俺たち人間じゃあ逆立ちしても勝てやしないよ。
――アルト君このまま戦っちゃいそうな勢いなんだけど…?
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