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現代冒険者のすゝめ ~高校受験に落ちた僕、冒険者になってみた!~  作者: あっかんべー
第4部:異世界《アルカディア》

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第109話 スキル:十二円卓

僕の2つの光《希望》が、白い空間に揺らめいていた。


赤黒い光と、紫紺の光。


僕の胸元…心臓付近から――


「ルージュっ!えんあっ!」


とりあえず呼んでみたけど…。

しかし、2つ光は二人の形を成さない。

輪郭が現れかけて、消え現れかけて、また消える。


「……っ、なんで出てこれないの?」


――この空間、私たちが実体化するのを阻んでいるみたい。


ルージュの声がそう言う。

この空間が阻害している?

クロノリアを見ると先程と変わらずニマニマとしている…。


――大精霊の作った空間だから、召喚系の力が通りにくい、のかも?


「じゃあ、どうすれば…っ。」


――……スキルを使って。


「……?スキル?」


――主様のスキル。


「……僕のスキルって、魔法系とパリィ……あと謎スキルがいくつかあるけど。」


――その中に、あるはず。使ったことのないやつがあると思う。


「使ったことのないやつ?」


――フランベルジュを使って。


えんあの淡白とした声も聞こえてくる。


――十二円卓。そのスキルを使え。


「十二円卓?」


……っ!?

冒険者カードを更新した時、スキル欄に名前だけ載っていたやつだっ。

効果が分からなくて、ずっと気になっていたスキルで調べても何も出て来なかったんだ…。


「……十二円卓って、何ができるの?」


――使えば分かる。とにかく使って。


「そのスキルは、どうやって使えばいいの?」


――高らかに宙に名前を叫ぶだけでいい。


ヘカトンケイルが、腕を振り下ろしてきた。


「……っ!」


攻撃をギリギリのところで転がって、躱した。

躱した腕が地面を揺らし亀裂を作る。


その隙に閉門衆の男たちが、両側から僕を挟んでくる。


迷っている暇は、ない、か。


「……っ、十二円卓っっ!!」


えんあに言われた通りに僕は叫ぶ。

それも全力で、叫んださ。


なのに――


――返ってきたのは、静寂だった…。

  何も、起きなかったのだ。


「……っ、何も起きないよっ!」


――ごめん主。話を端折り過ぎた。


えんあの声が、少し焦っていた。

急いでくれっ!もう持ちそうにないんだ…っ。


――使い方が違う。


ルージュの声が、えんあの話から続く。


「……どう違うのっ!?」


――このスキルは、命令口調で使う必要がある。席次と、対象の名前を呼ぶ必要がある。


「席次?」


――呼び出す相手の順序、みたいなもの。


「……どういうこと?」


順序とは?

ルージュとえんあには順番があるのっ!?

つけた覚えはないよっ!?


――このスキルは、複数の存在を呼び出せる可能性を持っている。その中で、誰を何番目に呼ぶかを、指定する。


――私は、第一席、えんあは、第二席。だから、そう呼んで。


武田先生が、すぐそこまで迫ってきていた。

もう時間がない…っ!


「……もう時間がないよっ、全員来てるっ!?」


――大丈夫、我のちゃんと冷静に聞いて。


えんあはそう言うけど、本当にもう余裕がないんだ…。


――……言葉の形は決まってる。こう言って。


「どう言えばいいのっ!」


――席次と名前を、命令の形で呼ぶ。私たちを呼び出すことを、命じる形で。


「……分かった。」


未来の【僕】が、正面から迫ってきていた。


「……っ!」


氷の壁を張って時間を稼ごうとするけど、壁が砕けてしまい、未来の【僕】が、そのまま突っ込んできた。


「……がっ!」


殴り飛ばされた僕は、また白い空間の端まで、吹き飛ばされる。


――……主様っ!!

――主っ!!


ルージュとえんあの声が、焦っているようだ。

でも、これで召喚?までの時間は稼げると思うっ。


――今すぐ使って!!


「……っ、は、。」


立ち上がり前を見ると全員が、またすぐに迫ってきていた。


ヘカトンケイルは、腕を全部構え、アイアンゴーレムは、巨体を揺らしており、魔物化したヒナさんが、赤黒い目でこちらを観察してきていた。


「……もう一回言葉を教えて、ルージュ。」


――分かった。※※※※※※※※※※※※※※※※※が召喚の言葉。


「……覚えたよ、ありがとう。」


僕は息を吸った。

正直、中二病臭くて少し恥ずかしいけど、今はそんなことを言ってられない。


――私たちを呼んで。


「……うん。」


全員が、間合いを詰めてきていた。


後がないとはこのことだ。

文字通り、白い壁が背中にあるし。


僕は息を、思い切り吸って言い放つ。


「……第一席・兎騎士ラビットナイトルージュ、並びに――」


空間が、揺れ始める。


「……第二席・炎蛙闘士フレイムファイターえんあ――」


光が、膨らみ紫紺と赤黒、2つの光が、今度こそ解き放たれる――


「……円卓の主…田中アルトがここに召喚を命ず!!」


爆発するような光が、白い空間を満たしファンファーレが鳴り響く。


全員の動きが、止まり光を観察し始める。

光りが晴れるとそこには、二人の影が並び立っていた。


片方の影…ルージュの赤い瞳が、僕をじとっと見ていた。


「……遅い。前に、呼んでと私は言った。」


「……ご、ごめん。」


「……まあ、間に合ったから、いい。」


もう片方の影…えんあが、赤い髪を、揺らし僕に近づいて来る。

それでも炎のような瞳は、今か今かと迫ってくる敵を見ていた。


「……随分と、手酷くやられたな、主。」


「……武器がなくて。」


「知ってる、見えていたから。」


えんあが、腕まくり細い腕を露出させる。


「……主様は、後ろにいて。…今度は、私たちが前に出る番だから。」


「……でも。」


「後ろにいて。」


「……う、うん。」


言われた通り二人が、前に出ていく。


ヘカトンケイルが、腕を振り下すけど、なんとルージュが、それを受け止めた。

小さな体なのに、20本以上の腕を真正面から受け止めた。


「……っ! ルージュ、そんな力が!」


「……元々のちからに今は主様の力も加算されているから。」


ルージュが、ヘカトンケイルの腕を押し返した。

す、すごい…いや、兎騎士だったことを考えると普通なのか?


えんあも、アイアンゴーレムへ向かったけど……。


えんあは僕と同じで素手だった。

でも、えんあの拳が、アイアンゴーレムの胸に当たった瞬間、アイアンゴーレムが内側から熱分解されてドロドロに溶け落ちていく。


「……っ! えんあ、どうやってっ。」


「……炎蛙マグマトードの本質は、熱を操ることだ。内側から燃やしてやった。」


えんあは、アイアンゴーレムを倒すとまた別の標的へ向かっていった。


「……主様は、私の後ろにいて。」


ルージュが、そう言ったから前を見ると、


「……ヒナさんが来てるっ。」


「……見えてる。」


ルージュが、魔物化したヒナさんの前に立った。


「……あなたを傷つけたくはない。でも、主様の為に止める。」


ヒナさんが、腕を振り上げルージュに攻撃を加える。

ルージュは、ヒナさんの攻撃を受けとめ足が、少しだけ後退するが――


「……やっぱり、強い。でも――」


ルージュが、今度は押し返す、ヘカトンケイルの時のように。

ヒナさんは、あきらめず攻撃の手を止めず迫ってくるが、ルージュは躱さなかった。


ヒナさんの攻撃全てを受け止めながら、少しずつどこかに誘導しているようだ。


「……上手い。」


えんあが、閉門衆の男たちを片付けながら言った。


「……我は力で押すが、ルージュは技で誘導する。使い方が違う。」


「……ルージュは昔から、騎士だったらしいから。」


「……そうだな、そう本兎も言っていた。」


今度は武田先生が、こちらへ向かってきていた。


「……先生とやら、悪い。」


えんあが、先生の前に出た。


「……この者には手加減が出来ない。」


だろうね…この中で一番強いだろうし。

しかもダントツで。


「……あぁ~、この人は思いっきりやっても大丈夫、だと思う。」


「……?分かった。主下がっていろ。」


えんあが、先生の動きを封じ始めた。

やったことは単純で地面を熱で溶かし、先生の足を地面に埋めたのだ。

えんあの動きはとても見事で、流石の先生もこんな幼女がこんな動けるとは思わないだろう。


やっぱり、この地面白いけど普通の地面と同じような造りのようだ。

えんあは、それを見逃さなかったのだろう。


「……っ、えんあ、すごい。」


「……当然だ。主に倒された後、ずっと考えてきた。どうすれば強くなれるか。」


「……ヘカトンケイルだった頃の記憶あるの?」


「当たり前だ、ルージュも記憶が残っていると思う。」


えんあが、先生の胸を貫き無力化する。

正直魔物違い人間を殺すとどうなるのかわからなかったけど、胸を貫かれた先生は黒い靄に戻りそのまま靄は霧散した。


良かった…死体が残ってたりすると僕はもう戦えなくなるところだった。

例え偽物だったとしても見知った顔の死に顔なんて見たいものではない。


今度は未来の【僕】が、こちらへ向かってきた。


「……これは。」


ルージュが、ヒナさんを抑えながら言った。


「……主様が、直接やる必要がある。」


「……僕が?」


「……自分の未来は、自分で向き合うしかない。」


「……っ。」


未来の【僕】が、間合いを詰めてきた。

前に東京ダンジョンで見た時と同じく長い年月を経た僕のはずなのに暗い瞳をしていた。


「……僕は、こんな顔になるのっ!?」


「……今はまだ分からない。これは、可能性の一つ。」


えんあはそういうけど……。


「……いい未来になるか、悪い未来になるかは、決めるのは主次第だ。」


「……そう、だよね。」


未来の【僕】が、僕の目の前に立ちふさがる。


「……戦う気力が、まだある?」


ルージュがそう聞いてくる。

勿論僕の返答は決まっている。

ルージュたちが来てくれたおかげで、低くなっていた闘志に再び火が灯る。

僕はみんなのもとに帰りたい、と。


「……あるよ。」


「……なら、行って。」


「……ありがとう、二人とも。」


踏み込んだ。

武器のない手で、未来の【僕】に向かって。

――妾スタンバってます。

――妾さん…なんか忙しない人?だね…。

――ここなら娘と話せるのかっ!?

――えっ、お父さんっ!?


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