表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代冒険者のすゝめ ~高校受験に落ちた僕、冒険者になってみた!~  作者: あっかんべー
第4部:異世界《アルカディア》

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
104/111

第103話 夢の試練 7――優しい夢世界

気づくと、また場所が変わっていた。

さっきまでいた社屋ではなく今度は――


明るかった。

眩しいくらいに、明るかった。


そして、ここはとても見覚えのある広いリビング…。

窓から、陽光が差し込みテーブル上に並ぶ料理を照らしていた。


温かそうな、家庭的な料理…。

とても懐かしい匂いに胸が苦しくなる。


「アルト、早く座りなさい。」


声が聞こえ振り返ると女性が、キッチンに立っていた。

その女性は、エプロンをして朗らかに笑っていた。


「……お、お母さん?」


「な~に、改まちゃって。早く座って?冷める前に食べないと。」


「……う、うん。」


促されるままに椅子を引いて、座ると、向かいに、誰かが座った。


「お、やっと来たか。」


それは、お父さんだった。

死んだはず、のお父さんが笑っていた。


「……お、お父さん?」


「どうした、そんな顔して?」


「……う、ううん、なんでもないよっ!」


お母さんが、台所から出てきて料理を僕たちの食卓に運んできた。

それを僕たち三人で、食べている。


……温かい。

それに、とても美味しいよ…っ、お母さん。


他愛ない話もした。

お父さんが今日の出来事を話して、お母さんが笑って、僕が笑って。

ただ、それだけ……。


ただそれだけなのに、なんでこんなに心が締め付けられるんだよ…。

分からない…分からないよ…っ。


「おいおい、遅いじゃねぇか。」


玄関の方から、声がして見てみると、マサトが靴を脱ぎながらこちらを見ていた。


「マサト? なんでここに?」


「なんでって、飯食いに来たんだろ。呼んだのはお前だろ?」


マサトが、椅子を引いて座った。

エミリさんも小林さんもリオさんもサクラさんも来た。


「アルト君。」


振り返ると、そこにはヒナさんも来てくれていた。


「……ヒナさん。」


ヒナさんが、笑ってそこにいた。


「来てくれたんですか?」


「当たり前じゃん、来たよっ!」


全員が、テーブルに集まり食卓を囲む。

椅子が足りなくてローテーブルにも食卓が広がっていく。


賑やかで…温かかくて。

誰も傷ついていないし、誰も悲しんでいない。

お父さんもお母さんも、元気に笑いかけてくれていて。

ヒナさんも、生き生きと笑っていて。

みんなが、とても幸せそうにしている。


「……ずっと…ずっと、ここにいたいなぁ…。」


――そう思ったんだ。

  いや、思ってしまったんだ。


「僕はここから、出たくない。」


本当に、そう思えてしまう。

そう、思ってはいけなかったのに僕の弱い心は、この優しい夢には勝てなかった…。


あれ、僕は何をしてたんだっけ?

まぁいいや、忘れちゃうってことはきっと大したことは無いのだろう。

ご飯が冷めちゃうし早く食べてしまおう。


僕は少しだけ感じた不信感を疑うことなく夢に溶けていった…。



どのくらい経ったのか分からない。

リビングが、夕方の光に染まっていた。


みんなは、まだ僕の家にいてくれた。

マサトが、お父さんと話しており、エミリさん、リオさんとサクラさんが、何かを話していた。

小林さんは、お母さんの料理を手伝っていて、ヒナさんは、僕の隣で本を読んでいる。


「……幸せだなぁ。」


ここ最近感じたことが無い幸福感に包まれなあら思っていたことが口からこぼれ出てしまった。


「」


「ずっと、この幸せが続けばいいのに…。」


「そうだよ?」


声がして、振り返ると誰かがいた。

自分と同じ顔をした『僕』だった。


……でも、目の色が違う。

紫色の瞳ではなく、やや茶色い暗い目をしている『僕』だった。


「ここにいれば、ずっとこのままだよ。それに、痛い思いも、悲しい思いも、怖い思いもしなくて済むんだ。ここには全部あるんだよ。」


「……僕はここを出ていかなくていいの?」


「いいよ。出ていったら、また現実に戻る羽目になるよ。D災害の記憶も、"ヒナって子"を殺した記憶も戻ってきてしまう。それに…一人に戻るのは、もう嫌だろう?」


「……っ。」


「ここにいれば、何も戻らない。ずっと…ずっとこのままでいられるんだよ。」


僕は、テーブルを見返す。


お父さんが、笑っていた。

お母さんが、笑っていた。

ヒナさん達が、こちらを見て微笑んでいた。


「……ここに、いたい。」


「いていいんだよ。」


「……ここに…ずっとい、たい。」


「ずっと一緒にいよう。」


「……もう、辛い思いなんてしたくないよ…。」


もう一人の自分が、満足そうに笑った。

ヒナさんが、また隣に来て僕に言葉を掛けてくる。


「どうしたの?」


「……なんでもないです。」


「そっか。」


「……ヒナさん、僕とずっと一緒にいてくれますか?」


「アハハ、いきなりどうしたの?ずっと一緒にいるよっ!どこにも行かないし、イクコトモデキナイ。」


「……よかった。」


「ウチハイッショニイルヨ?ズットネ。」


「……ここにいます。ずっと、ここにいます。」


ヒナさんの言葉を最後に夢の世界が、また温かく輝いていた。



――もう、離さないのだわぁ…。

――……。

――……。

――【留守中なのだわぁ】


面白いと思ったら、レビュー、コメント、フォロー、評価をお願いいたします!

とても、励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ