表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
30/32

第30話 異世界魔王、闇金を倒す



 グラビティで、闇金の社員全員を床に押し付ける。


 社員たちは悲鳴をあげるか、悲鳴をあげることすらできないまま床で重力に耐えていた。



 いまは3倍の重力をかけている。

 普通の人間では動くことができない重力だ。


 彼らは床の上で必死に腕を支えにして重さに耐えている。

 頭が重くて床につけ、すこしでも楽な姿勢を模索している。


 その姿は、まるで土下座をしているようだった。

 そう考えれば、なかなか胸のすく光景だ。

  

 とはいえ、それで俺が手心をくわえることは一切ないのだが。



「な、なんだこれ」


 何が起こっているのかわからない社長は、床の上で困惑している。


「なん、なんだよ、これ……。お前がやっているのか」


「ああ、そうだ。俺は魔法というものが使えるんだよ」


「ふざ、けたことを……」


「本当だ。お前にも理解させてやろう」


 社長にかける重力を10倍にする。


「ああああぁぁぁ……!」



 10倍の重力。

 某漫画では修行のためによく使われているような環境だが、実際のそれは地獄だ。


 己の重さに肉体が耐えられない。


 骨は折れ、内臓は潰れ、血液はまともに送られなくなる。

 すぐに意識は飛び、気づいたころには死んでいる。


 そういう世界だ。

 


「おっと。死なせてはいけないな」


 こいつにはやってもらわなくてはいけないことがある。

 10倍の重力を解除した。


「はぁっ……。はぁっ……」


 解放された社長は、深呼吸を繰り返す。



「もっと強い重力をかけることもできるぞ。さっきは体全身にそれをやったが、体の一部のみに重さをかけることもできる。こんなふうにな」


 社長の右腕に重力をかける。

 試しに100倍ほどの重力をかけると、腕はひしゃげて潰れた。


「ああああああああ!」


「これくらいでいいか」


 100倍の重力を解除した。


 社長は右腕だった個所をおさえて悶絶している。


「痛い痛い痛い……!」


「大丈夫か? その腕では仕事もしずらいであろう。治してやる」


 治癒魔法を社長の腕にかける。


 すると、潰れていた腕が見る見るうちに治り、元のとおりとなった。



「「「!」」」


 その様子を、社員たちは全員驚いた様子で見つめる。


「これでいいか?」


「う、腕が……? 生えて。なんで? え? 腕?」


 社長は床に寝転がりながら、己の右腕を呆けた顔で見ていた。

 混乱の極みと言ったところか。


「おい社長。お前の重力はすでに解除している。お前にはやるべきことがあるから、さっさと働け」


「やるべきことって」


「俺の金だ。これまで利息として渡した分を、いまここで返してもらおう」


「なっ――! お前! さっきは返さなくてもいいって言ったじゃないか!」


「それはさっきまでの話だ。俺は言ったはずだぞ? 『いまここですべての借金をチャラにするなら』と」



――いまここですべての借金をチャラにし、もう金輪際俺に関わらないと誓うならば、俺が払った金は返却しなくても許してやろう。



 俺は確かにそう言った。


「いまここで、という期間はすでに終わったのだ。俺が寛大さを示している間に動けば、痛みも受けず金も失わなかったのにな。機を見てすぐに動かないからそうなるのだ」


「社長! こいつの言うことをきいてください!」


 3倍の重力を受けながら、島田は言う。

 

「こいつはわけわかんない力を使う化け物です! 逆らわずに言うこときいていた方がいいです!」


「ははは。よくわかっているじゃないか。先に拷問魔法で教育した甲斐があったな」


 教育の成果が出たようで俺は嬉しいぞ。


 この社長にも成果が出てほしいところだが。

 果たしてどうか?



「金を渡し、俺に二度とかかわらないと誓えば帰ってやろう。さあ、これまでの金を差し出せ」



 もちろん、こいつらを重力魔法で動きをとめている間に金庫から金を抜き出すことはできる。

 しかし俺は野卑な盗賊ではなく恐るべき魔王。


 こそこそと盗むことはしない。

 欲しいものは自ら差し出させる。


 それをしてこその魔王だ。



「さあ、どうする? お前がやりたくないなら、また苦痛を味わってみるか? 次に潰されたいのは左腕か? それとも足か? それとも体の全てを潰してほしいか?」


「わ、わかった! わかったからもう勘弁してくれ!」


 社長は恐怖におののきながら後ずさる。


「金は出す! お前にももう関わらない! だからもう俺たちに関わらないでくれ!」


「それでいいのだ」


「あ、ああ。わかった。お前の過去に返した金の額を調べるから、少し待っていてくれ」


「早くしろ」


 俺の言葉に従った社長が自身の机に行き、PCで調べ始める。


 俺は来客用のソファに座り、金が差し出されるまで待とうかと思っていると。



「くそっ、くそっ……。なんで俺が、俺がこんなガキに……」


 社長のつぶやき声が聞こえてきた。


「こんなガキに。ガキがぁぁ!」


 社長は机の中から拳銃を取り出す。



「死ねぇぇぇ! クソガキがぁぁぁ!」



 社長は叫びながら拳銃の引き金を引き、弾を発射させる。



「やれやれ。恐ろしいな、その頭の悪さ」



 しかし、弾丸は魔法で作った障壁に阻まれた。

 俺の顔の前で弾丸は停止し、重力に従い床の上に落ちる。


「その程度の行動、俺に対応できないとでも思ったか?」


「う、嘘だ……。銃が効かないなんて、そんなわけない。ありえない」


「ありえない? 魔王に対してもっとも無意味な言葉だな。俺はそのありえないを何度も起こしてきた。弾丸を止める程度はわけない」


「く、くそがあああ!」


 社長は拳銃から何発も弾を撃つが、その全てが障壁に阻まれる。

 全弾撃ち尽くしたところで、ようやく社長は動きを止めた。


「気は済んだか?」


「こ、この化け物め!」


「よく言われる。クク……、お前もようやく俺のことが分かって来たか」


 ソファから立ち上がり、ゆっくりと社長の元へ歩いていく。


「だが。俺を理解するのが、少し遅かったようだな」


 

 俺に向かって拳銃を撃つ、というのは明確な敵対行為。

 これまでの不良やチンピラのような、拳で殴りかかってくるのとはわけが違う。


 つまり、こいつは俺のことを完全に敵に回したわけだ。



「俺は敵には容赦しない。苦しんで死ね」



 社長のもとにたどり着く。


「ま、待て。待ってくれ。お願いだ。助けてくれ。金なら払う。金庫の中にある金は全部持って行っていいから。だから助けて――」



「魔王に向かって命乞いは通じない」



 拷問魔法を開始した。



「ぎゃあああああ!」



 先ほど、島田が俺の家の前で受けたような拷問魔法とはくらべものにならないほどの激痛が社長の全身をめぐる。


 人を痛めつけ苦しめるためだけに開発された魔法。

 その真髄を、たっぷりと味わってもらおうか。



「やめて助けて痛い苦しいタスケテタスケテ――」

 


 鍛え上げられた異世界の住人ですら、その苦しみには屈服するのだ。

 柔なこの世界の住人ならば、およそ耐えられるものではない。


 その苦しみに精神が耐えきれず、発狂死することだろう。



「じゃあな。くだらない男よ。来世があれば、魔王には逆らわないことだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ