第20話 異世界魔王、道化の仲間を教育する
「やれ! こいつを痛めつけろおおおお!」
道化の高野は、周りにいる男どもに対していった。
彼らは我が意を得たりとばかりに笑い、俺の方に近づいてくる。
「あはは。ずいぶん気持ちよくしゃべっていたね」
「後先考えず話すからこうなんだよ」
「調子こいてるんだよ。マジで生意気すぎ」
「俺、なんかいぶっ殺そうかと思ったかわかんねえもん」
「大人しく先輩の言うこときいたら痛い目に合わずにすんだのにねー」
周りの馬鹿どもは笑いながら会話しているが、そのうちの一人が気づいた。
「ん? こいつもしかしてあれじゃね? 内田の奴隷だったやつじゃね? こいつがパシられてんの見たことあるわ」
内田?
とは誰のことだったか。
ああ、前世の記憶に目覚める前の俺をいじめていた男か。
一昨日、俺が痛めつけてやったやつでもある。
「内田って3組の? あいつの奴隷かよ」
「あいつ、むかし俺の舎弟やってたんだけど」
「あんな雑魚の奴隷だったん? うわー、こいつマジで超雑魚じゃん」
「ぶふっ。雑魚の奴隷のくせにあんなイキってたの? ありえないんだけど」
「そいやあいつどしたん? 昨日も今日も見ないけど」
「なんか学校来てないらしいぞ。なにあったか知らんけど」
なんだ。
学校に来ていないのか。
傷は俺が治療していたから、その影響ではないと思うのだが。
ならば精神的なものだろうな。
人は痛めつけすぎると心が壊れてしまうから、そうなったのだろう。
「内田のことはいいや。どうせあいつこないんだったら、こいつ俺らの奴隷にしようぜ」
「はーい今日から奴隷けってーい」
「就職おめでとー」
「ゲヒャヒャヒャ!」
下品に笑う男たち。
その姿を見て俺は理解した。
こいつらもあの内田と同類なのだと。
ならば、俺が手加減をしてやる必要はないな。
痛みによる教育を施してやろう。
二度と、俺という強者に逆らうことができないように。
「奴隷なら奴隷らしく、俺の言うこときけってんだよ!」
俺に触れようとしたクズの手首をつかむ。
「触れるな、クズめ」
電撃の魔術を発動し、クズの体に電気を流しはじめる。
「あがっがががが――」
俺の電撃の魔術によって痺れるクズ。
「あああああああ!」
クズは腕を外そうとする――ことはできなかった。
人はある一定以上の電気を流されると、筋肉を動かすことができなくなるのだ。
このクズも同じ状態になっているのだ。
懐かしいな。
魔王時代にもこういったことがあった。
俺が過去を懐かしんでいたら、電撃を加えすぎてクズが気絶してしまった。
「おっと。俺としたことが。過去を思い出すあまり集中力が散漫になり、加減を誤ったか」
手を離し、失神したクズを地面に放り捨てる。
「さて、次はどいつだ?」
いま電撃によって処されたクズの様子を見て、高野含むクズたちが驚きと恐怖で固まっていた。
「な、なんだよ今の……?」
「電気? スタンガンか?」
「そんなの持ってねえだろ。なんなんだよ!」
今度は慌てふためき始める。
「俺が何をしたのかもわからんか。程度の低いやつらだ」
高野を除いたクズは5人。
さきほど電撃を流してダウンしている者を除けば4人。
残り4人か。
全員に対して教育を続行しよう。
「ち、調子に乗ってんじゃねえ」
「もう油断なんてしねえ。ぶっ殺してやる」
「4人で囲めば勝てるだろっ!」
「たった1人で、この人数に勝てると思ってんのか!」
「思うよ。お前たちは、その人数でなければ俺に勝てると思えないようだけどな」
「「「「ほざけええええ!」」」」
4人が一斉に襲い掛かってくる。
「はっ。数をそろえたところで意味などないのに」
それでこの魔王がどうにかなるのなら、勇者などいらん。
魔王を倒すために必要なのは数ではなく突出した個だ。
しかしこの地球には、その個がないようだがな。
「影呪縛」
全員の影から黒い手が伸びる。
手は足をつかみ、腰をつかみ、腕をつかみ、肩をつかみ、首をつかんだ。
「これで身動き一つ取れまい」
「なにをする――」
「離せ!」
「なんなんだよこの手は!」
「やめろ、離せ、助けてくれ!」
威勢がよかったのは最初だけ。
捕まった途端にすぐに泣きごとを言い始め、助けを請い始める。
ほんとうに、くだらないクズどもだ。
「熱・電気・水・切り傷。全て味わえ」
火魔法で熱を出して体を焼く。
電魔法で電気を出して体に流す。
水魔法で水を出して顔面を水の中に入れて窒息させる。
風魔法で作った風の刃で体を切り刻む。
それらを微妙に調整しながら行う。
楽ではないが、決して失神しない程度の威力。
生かさず殺さずの教育を行う。
途中、先ほど電魔術で痛めつけた奴が回復したのでそいつにも続行した。
千歳と約束した時間もあるので、教育の時間は短い。
せいぜい5分くらいだ。
ただその5分のなかで、彼らは地獄を味わった。
「そろそろいいだろう。気絶することを許す」
魔術の威力をあげて、全員を気絶させた。
5人はバタバタと倒れていき、校舎裏では気絶したクズが5人もできあがった。
「さて、残りはお前だな」
「ひ、ひぃっ――」
ただ一人残った男。
高野は俺を見て怯えていた。




